第112話 念願叶う

 ケーキ!ケーキ!苺のショートケーキ!あまりにも嬉し過ぎて、即席の歌を口ずさみながら小躍りしてしまう。

 料理長が居ることをすっかりうっかり忘れてた・・・。


「り、料理長も一緒に食べる?」

「はい!是非!!!」


 はい、良いお返事頂きました!これで何とか誤魔化せたね。

 ケーキを8等分に切り分けて、一切れずつお皿に乗せて残りは一旦収納へ。料理長が淹れてくれた紅茶を添えて。いざ、実食!


 パクリ


「おーいーしーいーーーー!!!」

「!!!!!!!」


 ここに辿り着くまで本っ当に長かったー。もう食べられないんじゃって諦めかけてたけど、諦めなくて良かった!温泉スキル最高だね!

 

 感慨に耽っている私の隣で、料理長は泣いていた。

「な、泣いてる!?えっ!?料理長!?」

「この世にこんなに美味しい食べ物があるなんて知りませんでした・・・。桜様に付いて来て本当に良かった・・・。」

 うんうん!ケーキは正義だよね!でもね、食べたい物はまだたくさんあるのだよ!


「何を言ってるのかな料理長。まだまだ美味しい食べ物はあるんだよ!今日作った生クリームやバターは、お菓子だけじゃなく料理にも使えるんだよ!またレシピ書き出しておくね!」

「ありがとうございます!私も頑張って美味しく作れるように、より一層努力します!」

「うん!よろしくね!」

 そしていつものサムズアップ。決まったね!


 あれ?そう言えば料理長は何でここに来たんだっけ?

「そういえば私に何か用事があったの?」

「はっ!そうでした!歓迎会の準備が出来たので呼びに来たのでした!」

「それを先に言って!?」

 ゆっくりケーキを食べて寛いでる場合じゃない!


 急いで料理長と一緒に宿舎へ転移すると、既に皆揃っていて、料理も食べずに待っていた。コタロウとリュウまで良い子に座って待っている。


「遅れてごめんなさい!」

「大丈夫でございます。丁度新しく来た従業員の紹介が終わった所です。」

「助かったよー!ありがとう!」

 さすがクレマン!場を繋いでくれてたね。


 これ以上待たせないように、挨拶はサクッと簡単に終わらせましょう。

「みんな温泉街に来てくれてありがとう!それではカンパーイ!」

「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」





 翌朝新たな屍達が宿舎に転がっていたのは、まあいつもの事だよね。

 朝食をコタロウ・リュウと一緒に楽しく食べた後、2匹が警備に向かうのを見送ってから、状態異常回復の湯をなみなみと入れた大樽を宿舎食堂へ置いておく。後は各自に任せよう。


 そういえば昨夜の飲み会で、フェデリコに1つ注意を受けた事がある。それは従業員へ敬称を付けたり、丁寧語で話すのを止める事だった。理由は従業員が困惑するし、外部の人間には舐められるから。

 日本の社会人だった私には中々厳しいけど、皆を困らせたくはないので頑張ります。



 今日は午前中、ヘレンにデザートを教える約束をしている。宿舎の厨房へ向かうと、何故か料理長もいた。


「お、おはよう?」

「「おはようございます!」」

「えっと、料理長は何故ここに?」

「私にも是非教えて下さい!」

 どうやら昨日ヘレンから今日の事を聞いていたらしい。温泉宿にもデザート欲しいし、丁度良いかも。


「もちろん良いよ!じゃあ今日はパウンドケーキとプリンを作ります!」

 パウンドケーキの為に、ブランデーを温泉スキルで作ってきたんだよね。

 今日は型が1個しかないから、私が作る所を見てもらう。あとでノアに、型を5個ずつくらい追加で頼んでおこう。


 基本のパウンドケーキの作り方は簡単。卵に砂糖を入れながら混ぜ、白くもったりしてきたら振るった小麦粉を入れ切るように混ぜる。

 ブランデーも入れて混ぜたら、溶かしたバターを少しずつ分離しないように入れて混ぜる。

 あとは型に入れ空気抜きをしたら、余熱済みのオーブンで焼くだけ。途中真ん中に切れ目を入れる事だけ忘れないようにしなきゃ。


 パウンドケーキが焼けるのを待ってる間はプリン作り。プリンはレシピがあるし、器に入れて作るので2人に作ってもらう。

 カラメルソースを作る時に少しアドバイスしたぐらいで、2人共手間取る事無く簡単に作ってた。プロ流石だね・・・。


 そしてやって来ましたお味見タイム!プリンは冷やしてからの味見になるから、今はパウンドケーキを味見する。


 パクッ


「美味しーーーーい!!!」

「「 !!!!! 」」


 我ながら上手に焼けたね!焼き立ては切る時少し崩れやすいのは注意しなきゃいけないけど、フワッとしていてとても美味!時間を置くとしっとりとして、これもまた美味!


「おはぎとはまた違って、フワッとしていて美味しいです!」

「昨日のケーキとは違いますが、こちらも美味しいです!ブランデーの香りもほのかに香るのも良いですな!」


 料理長とヘレンも、パウンドケーキが気に入ったみたいで何切れも食べている。このケーキ、カロリー結構高いんだよね・・・。

2人共沢山動くだろうし、きっとカロリーも消費するよね!多分大丈夫!


 午後からは料理長がヘレンに、おはぎの作り方を教えるらしい。詰め込みすぎではと心配になったけど、2人共楽しそうだからまあいっかな。



 2人と別れて今度は畑予定地へ。自給自足を目指す為、拠点の壁の外に広い畑を作ることにした。その畑を壁で囲み拠点と繋げ、出入口の扉をドワーフ達に作ってもらった。これで安全に畑仕事が出来るね!


 扉を開けて中に入ると、早速ソーヤーが畑を耕していた。

「桜様、こんにちは!お待ちしてました!」

「遅くなってごめんね!私も耕すよ!」


 土魔法を使って、固い土壌をフカフカにしていく。それと水やりしやすい様に、近くに栄養豊富な水が湧き出る冷泉を作る。

 畑はかなりの広さになる予定だから、早くソーヤーを手伝える人を雇って貰わなきゃ。


 2人で黙々と耕し続けていると、あっという間に耕し終わった。魔法で耕しても、流石に汗だくだ。後で温泉でサッパリしよう。


「畑には何を植えましょうか?」

「料理長が欲しい野菜をメインに。あとは季節の野菜が欲しいな。それともし可能なら果物も!」

「了解です!果物の木を植えてもよろしいですか?」

「もちろん!楽しみにしてるね!」


 美味しい野菜や果物が出来ると良いな!まだ植えてもないけど、収穫が今から楽しみ!


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