第111話 生クリームとバター
フェデリコ、クレマンとの話し合いが終わった所で、早速ノアさんに会いに行こう。
「それじゃあ今度こそハンメルに行ってくるね!」
「お供致します。」
「いや、1人でだいじょ」
「お供致します。」
「転移でこっそり行くだけだから」
「お供致します。」
クレマンが全く引かない。ドワーフ達も休んだ方が効率が上がると分かって、自主的に休むようになったから暇なのかな?
「分かったよ。じゃあ一緒に行こう。」
今度こそハンメルにあるノアさんの工房前へ、クレマンと一緒に転移する。
コンコンコン
ノックをしてしばらく待つと、少しやつれたノアさんが出て来た。
「ノアさんお久しぶりです!大分遅くなっちゃってごめんなさい。」
「桜さーーーん!待ってましたよーーー!」
私を見た瞬間、ノアさんが目から涙を噴き出しながら飛び付いてきた。
そんなに泣くほど待たせちゃったのか。前見た時よりやつれてるし、お金足りなかったのかな・・・。
「ノアさん大丈夫?試作品用のお金が足らなかったかな?」
「桜さんから注文された型を作るのが楽し過ぎて、あっという間に作り終わっちゃったんですよー!でも中々受け取りに来られないから、新しい型が作れなくて・・・。もっともっと作りたいーーー!」
ワーカーホリックか!それでやつれるって心配なレベルだよ!?
「それより見て下さい!完璧に仕上げましたよ!」
ノアさんが案内してくれた棚には、私が注文した型や鉄板が並んでいた。ケーキ型は底が外せる様になってるし、どれもこれも理想通り!
「キャーーーーーーーーーー!!!ノアさん最高の出来だよ!!!」
これで食パンや可愛い形のクッキー、たい焼きにたこ焼き、そして念願のケーキが作れる!!!
帰ったら急いで生クリームの冷泉を作って、バターも作らなきゃ!
「また何か特注していかれますか?」
ノアさんがソワソワとしながら聞いてくるけど、もう私もケーキの事で頭がいっぱいで何も考えられない。
「今は思いつかなくて、また今度でも」
ノアさんの目からブワッと勢い良く涙が溢れ出した。
あー、うーんと・・・えーっと・・・駄目だ。頭が働かない!
「そうだノアさん!カティアの森の温泉街で鋳物師として働かない?」
「是非!!!」
とっさに頭に浮かんだのが、フェデリコがグレイソンさんを拠点に誘った時のセリフとか・・・。いや、結果良ければ全て良し!これでまた色々な型を作ってもらえる!
「それでは早速行きますか!いざカティアの森へ!」
「えっ!?まだ準備が」
ノアさんの工房ごとカティアの森へ転移させる。場所はグレイソンさんの工房の隣。職人さん同士、お互い刺激を受け合って良い物作ってくれると嬉しいな。
「い、今のは・・・?」
「ノアさん、カティアの森の温泉街へようこそ!これからもよろしくね!」
「・・・きゅう」
「危なっ!」
キャパオーバーだったのか、ノアさんが白目を向いて倒れた。床にぶつかる寸前で、慌てて支えるクレマン。さすが素早い!
「ノアさんの部屋に勝手に入れないし、とりあえず宿舎の空いた部屋に運ぼうか。夜は歓迎会の予定だから丁度良いよね。」
「かしこまりました。ノアさんの目が覚めたら、事情説明もさせて頂きますね。」
優雅な一礼をすると、クレマンはノアさんを担いで行った。お姫様抱っこみたいな横抱きでは無いんだね・・・。
何はともあれ生クリームの冷泉を作ろう!動物性の乳脂肪分が高い生クリーム!その後バターも作っちゃおう!
まずはお酒の時と同じ様に台を作り、そこに生クリームの冷泉を温泉スキルを使って作る。
目の前に真っ白でトロリとした感触の液体が湧き出る冷泉が出来た。
鑑定結果も想像通りの【 動物性生クリームの冷泉 】
でもここで浮かれるのはまだ早い!バターがなきゃ私好みの美味しいケーキは作れない!
煮沸消毒済みのガラス瓶の3分の1程度まで生クリームを入れ、しっかり蓋をしたら唯ひたすら上下に振る!振る!!振る!!!
「いやったぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」
生クリームを振り続けておよそ10分。遂にバターが完成!
これでやっと!やっと念願のケーキが作れる!!こうしては居られない!早速ケーキを作ろう!
大熊亭の厨房へ転移し、すぐに準備に取り掛かる。
ノアさんが作ってくれたケーキ型に薄くバターを塗って、型紙を貼っておく。卵3個を卵白と卵黄に分け、小麦粉は振るいにかければ下準備完了。オーブンにも火を入れておく。
あとは卵白と卵黄をそれぞれしっかり泡立ててから、合わせて混ぜる。そこに小麦粉を入れサックリ混ぜ、溶かしたバターも入れて手早く混ぜたら型へ。空気を抜いたら、温まったオーブンへ入れ、中までしっかり焼けたらスポンジケーキの完成だぁぁぁぁぁ!
ここまでに振ったり泡立てたりで、かなり腕を酷使したからか、腕がプルプルしている。
だがしかし!まだ生クリームを泡立てなければならない!
何故なら今作っているのはケーキの王道!苺のショートケーキ!!生クリームは必須!
砂糖と冷たい生クリームを入れたボウルを氷水を張ったボウルに入れ、いざ混ぜるというまさにその時、救世主が現れた。
「桜様居られますかー?」
「料理長ーーーーー!!!良い所に!!!」
私の勢いに一瞬ビクッとしたものの、私が新作を作ってる事に気付いた料理長。
「何かお手伝いが必要ですか?」
「助かるー!これ混ぜて!持ち上げた時にピンと角が立つまで!」
「角・・・?」
「タイミングはその都度教えるから、とりあえず混ぜて!」
「は、はい!」
料理長が必死に混ぜてくれてる。やっぱりケーキ作りは機械が無いとかなりの重労働だ。早くハンドミキサーみたいな魔道具を、グレイソンさんに作ってもらわなきゃ!
「料理長そろそろ良いかも!すくい上げてみて!」
料理長が生クリームをすくい上げると、角みたいに生クリームが立ち、すくったクリームはポタリと落ちた。
「バッチリだよ料理長!ありがとう!」
「いえいえ、これくらいお易い御用です。完成までここで見ていてもよろしいですか?」
「もちろん!」
冷めたスポンジを3枚に切り、生クリームと苺をトッピングしたら完成!絞り袋が無いから生クリームでデコレーションは出来なかったけど、苺を可愛く飾っただけでも充分!
「苺のショートケーキの完成だぁぁぁ!」
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