第109話 従業員確保

 昨日は一日中外出していた為、クレマンによって今日は朝から予定がギッチリと詰め込まれている。

 今はクレマンとフェデリコと一緒に、ドワーフ達の進捗を見に来ている所なんだけど・・・。


「嘘でしょ!?何でもうこんなに建物が出来てるの!?」

 厩舎に馬車停め、警備兵の詰所や兵舎に鍛錬場まで出来てる。本当に休んでる!?


「クレマン!ドワーフ達にきちんと休憩取らせてる!?いくらなんでも無理させ過ぎてない!?」

「もちろんで御座います。しっかりと休憩時間は休んでおりましたよ。休憩毎に疲労回復の湯も提供しておりますので、疲れも溜まっていないようです。もちろん就業時間も守らせております。」


 それにしても早過ぎない?休憩をほぼ取ってなかった時と変わらない進捗なのでは!?


「しっかり休憩して体を休めると、作業スピードがこんなに上がるとは思わなかったぞ!」

「遅くなるどころか、むしろ早くなりましたね!疲労回復の湯のおかげで、翌日に疲れを残さないのも素晴らしいです!」


 休憩+疲労回復の湯=作業スピード5倍?

 何その方程式。でも無理はしてないなら良いのかな・・・?


「頑張ってくれてありがとう!皆の報酬にそれぞれお酒を1本ずつ上乗せしておくね!」

「「「「「やったーーーー!!!」」」」」


 ここまでで何本ものお酒ボーナスを、それぞれに確保している。

 ツヴェルク王国に帰ってからが少し心配。送って行く時に、気を付けて見てもらう様レギンさんに頼んでおこう。



 ドワーフ達の次は、カイからの報告を大熊亭の食堂で受ける。

「各地へ人材を探しに行った影から報告がありました。桜様がお探しの能力を持った人材を確保し、現在拠点へ向かっております。」


 働く場所がカティアの森。それと雇用契約時に誓約も行う。この2点も既に了解済みらしい。

 こんなに早く見つけてくれるなんて、影さん達は優秀だね!


 MAPで現在地を確認してみると、カティアの森に入った集団が5組。その付近を魔物がウロウロしている。

 戦えない人も多いのに、拠点までの移動は危険すぎる。


「少し席を外すね。」

「桜様!?」

 説明している時間がない。簡潔に伝え、急いで1番魔物の近くにいる集団の元へ向かう。


 エールランド帝国側からカティアの森へ少し入った所にいる集団の近くに、オウルベアが3体。

 その後ろへと転移し、すぐ前にいるオウルベアの首を斬り落とす。

「まずは1匹!」


 そのまま右側にいるオウルベアの眉間に向け、風魔法で風の弾丸を放つ。頭を撃ち抜かれたオウルベアは、その場に崩れ落ちた。

「2匹目!」


 2匹の仲間が倒された事に気付いたオウルベアが、私に向かって咆哮を上げながら走り出した。

 正面を向いているので、格好の的だね。最後の1匹も風の弾丸を眉間に命中させ終了。


「終わった!みんな無事?」

 オウルベアを収納しながら、先頭で短剣を構えていた忍装束を着た人に向かって確認する。言葉は無いものの、何度も頷いているので、とりあえず大丈夫かな。


 全員を大熊亭へ転移させ、次の集団の所へ転移。これを繰り返し、何とか無事に全ての集団を救出した。最初の集団以外は魔物に襲われる前だったので、素早く回収する事が出来て良かった。



「ただいまー!」

「お帰りなさいませ桜様。お怪我はございませんか?」

「大丈夫大丈夫!」


 心配しているクレマンに無事を伝えると、サッと椅子に座らされ、良い香りの漂う紅茶が目の前に置かれた。やっぱりクレマンの紅茶が1番美味しい!


「ここの温泉街を作る責任者の桜です。とりあえず名前と希望の職種を教えてもらえるかな。」


「ヘレナです。料理が得意です。よろしくお願いします。」

 この世界には珍しい、黒髪黒目の女性だ。もしかして先輩勇者の子孫かな?

 長い黒髪を三つ編みにして後ろでお団子にしてる。お団子・・・。そうだ!彼女にはパティシエになってもらおう。


「甘いお菓子は好きですか?」

「・・・食べた事がないです。」

 そうだった。この世界でお菓子は高級品。気軽に食べられないんだった。


 収納からおはぎを取り出し、みんなへ配る。ヘレナさんは初めて見るおはぎに興味津々。じっくり眺めてから一口齧る。


「・・・甘くて美味しい!これがお菓子ですか?」

「そうです。これはお菓子の1つでおはぎという和菓子です。他にも沢山のお菓子があるんです。ヘレナさんにはこれから、お菓子を専門に作って貰えないかなと考えてるのですが、どうでしょうか?」

「是非やらせて下さい!!!」

「良かった!よろしくお願いしますね!」


 キラキラと瞳を輝かせている。甘いお菓子に相当ハマったみたい。これから沢山美味しいお菓子を作ってもらおう。


「テディです。こっちは妹のソフィーです。」

「読み書き計算が得意です!」

 12、3歳くらいかな?2人共蜂蜜色のふわふわした髪に、檸檬色の瞳が可愛らしい。


「テディは私の元で執事見習いを、ソフィーはリリーの補佐をさせたいと思います。」

「良いと思う。2人共よろしくね!」

「「よろしくお願いします!」」

 まだ2人共自立するには早い年齢。何か事情があるのかも知れないけど、今聞く事は止めておこう。2人が話したくなった時に聞いてあげよう。


「ソーヤーといいます。実家で農業を手伝ってました。」

 健康的な小麦色の肌に、深緑色をした短髪のガッシリとした青年。麦わら帽子が似合いそう!


「農業!待ってましたー!これからよろしくね!」

「よ、よろしくお願いします。」

 夢の自給自足生活には欠かせない人材だ!若干私の勢いに引いてる気もするけど問題なし!


「ホセ。動物が好きだ。」

 燃えるような赤い目と、真っ赤な長い髪を後ろで一括りにした彼の自己紹介は、驚くほど短く簡潔でぶっきらぼうに感じる。そんな彼が動物が好きというのは、ギャップが凄いな。


「よ、よろしくね!既に厩舎に2頭の馬が居るの。契約した後、早速お世話をお願いしても大丈夫かな?」

 馬が居ると聞いた瞬間、ホセの表情が和らぎコクッと1回頷いた。本当に動物が好きなんだろうな。


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