第108話 爆買い
フェデリコをローマンさんのお店に置いて、カリオと2人で市場で買出し中。
拠点で暮らす人数が増えて、食材の量も半端ない量になった。拠点まで定期的に運んでくれる人が居ると楽なんだけど、道のりが安全じゃなさ過ぎて期待薄。自給自足出来る様にしたいけど、まだまだ道のりは遠いな。
「とりあえずここからここまで全部下さい。あ!買い占めは駄目か!えーと、売っても大丈夫な範囲で全部下さい。」
「ぜ、全部!?毎度あり!!」
まずは新鮮な野菜と果物を大量購入。商業ギルドに停めてある帆馬車まで、運んで貰えるように頼むのも忘れない。
「お米や小麦粉とチーズ・・・あと調味料を、店の在庫の3分の1残して全て買います。」
「あ、あ、あ、ありがとうございます!」
液体系の調味料はいざとなったら温泉スキルで作れるけど、お米や小麦粉に味噌や砂糖なんかは買わないとあっという間になくなってしまう。
「美味しいお肉を全て下さい!」
「気前が良いね!あいよ!」
お肉はいくらあっても足りない。ドワーフ達が肉ばっかり食べるから、狩っても狩ってもすぐ無くなるんだよね。後で収納にしまうから、痛む心配もない!
「新鮮なお魚と貝を全部下さい!」
「全部ですか!?ありがとうございます!」
料理長が来てくれたおかげで魚料理のバリエーションも増えたから、しっかり魚も買っておこう!
市場の端までひたすら買い続け、ハッと我に返って市場を振り返る。そこには食材がガラガラになった市場が・・・。
少し買いすぎた気もする。ストレスが溜まっていたのかな。うん、きっとそうだ!
まあ、収納に仕舞えば腐らせる事もないし大丈夫!
「これくらい買えば、暫くは足りるかな?」
「充分かと。」
はははっとカリオが遠くを見ながら笑っている。ずっと付き合わせてたから、疲れちゃったかな?
「カリオも1日お疲れ様。グイッと1本飲んどく?」
「是非頂きます!」
疲労回復の湯の瓶を渡すと、良い音をたてながら即効で飲み干した。よっぽど疲れてたんだね。
買い物も終わり丁度良い時間になったので、帆馬車を停めてある商業ギルドへと向かうと、驚くべき光景が目に入ってきた。
「わお。」
帆馬車の周りは続々と運ばれてくる品物で埋め尽くされている。あれだけ買えば、そりゃこうなるよね。
とりあえず帆馬車に荷物を積み込む手伝いをしつつ、こっそりとしかし迅速に一部の商品を収納していく。特に生鮮食品をメインに。
「桜様、また随分と買われましたね。」
声のした方へ視線を向けると、ニコニコと笑っているフェデリコが立っていた。そして何故かその隣には、大きなリュックを背負ったローマンさんが並んで立っている。
「暫く困らないくらいは買ったかな。フェデリコの首尾はどう?」
まさか商会長自らが品物を運んでくる、なんて事はないよね。お見送りかな?
「バッチリです!ローマン商会が温泉街に、支店を出してくれる事になりました!視察も兼ねてローマンさんが温泉街まで一緒に来て下さいますよ!」
「はい?」
えっ?商品を買う話をしてたんじゃなくて、商会を誘致させたの!?何がどうしてそういう話になったのかな!?
「もちろん拠点に必要な物の物資は購入済みですよ!あちらに積んであります!」
フェデリコが指した先には1台の帆馬車があった。確かに荷台には山程荷物が積んである。
「御者は!?」
「私が努めさせて頂きます。桜様、これからどうぞよろしくお願い致します。」
「ローマンさんが!?えっ!?お店はどうするんですか!?」
「店長に改善点の指示を出してありますので、とりあえずは大丈夫です。また暫くしたら様子を見には行こうと思っております。」
予想外の事に私が困惑していると、フェデリコがウィンクしながら小声で囁いてきた。
「桜様に任されたので、張り切ってしまいました。」
丸投げした事に対する意趣返しか!
確かに驚いたけど、今後のことを考えれば、信用出来る商会を誘致出来たのは有難い。
「さすがフェデリコ!ありがとう!帰ってからも色々とよろしく頼むね!」
「はい、お任せ下さい。」
にっこり笑ってフェデリコを労うと、フェデリコも同じ様ににっこりと笑って応えてきた。ふふふっ、本当に任せるからね。
帰りに人気のない場所で帆馬車2台まとめて転移で拠点へ帰ると、ローマンさんが腰を抜かしそうなほど驚いていた。フェデリコが誓約で話せない事をすっかり忘れてたよ。
「お帰りなさいませ桜様。」
「ただいまクレマン。」
何故帰って来たのがすぐに分かるのか。クレマンの能力は謎がいっぱいだ。
前に1度だけ聞いてみた事があるけど、「執事として当然で御座います。」なんて言われた。執事って大変な仕事なんだな。
「彼はローマン商会の商会長ローマンさん。拠点の案内と説明を頼めるかな。私はもうひと仕事して来るから。」
「かしこまりました。」
「そうそう!今日から暫くの間、フェデリコのドリンクバーと温泉使用禁止だからよろしくね!」
「えぇぇっ!?本気だったんですか!?」
「しかと承りました。」
不敵な笑みを浮かべたクレマンがフェデリコを引き摺りながら、宿舎の方へとローマンを案内して行った。
さてさて、私も今日最後のお仕事に取り掛かりますか!
「グレイソンさん迎えに来ました!」
「ありがとよ!でも今から街を出るのは危険じゃねーか?」
「街の外には出ないので、大丈夫ですよ。それじゃあ、行っきますよー!」
グレイソンさんのお店ごと拠点へ転移。
「はい、到着です。」
到着と同時に扉を開け、グレイソンさんを店の外へと連れ出す。
「グレイソンさん。ようこそカティアの森の温泉街( 仮 )へ!」
「・・・誰かこの状況を説明してくれ。」
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