第99話 ウィスキーの値段は
「あの酒を売ってください!!」
「桜さん、私にも是非!!」
「「 どうかお願い致します!!!」」
今私の目の前で頭を下げているのは、ガンドール王と宰相のレギンさん。
1日だけ依頼したドワーフ達を送る為に、ツヴェルク王国へ転移すると、レギンさんが待ち構えていた。
酔い潰れてまともに話せなかった王が謝罪したい、と言うのでさすがに断れず、案内された部屋へ行き今に至る。
今回はレギンさんまで一緒になってお酒お酒言っている。ウィスキーは美味しいけど、中毒症状なんて無かったよね!?
「あの、売るのは構わないのですが、私相場とか全然分からなくて。」
「では1樽白金貨1枚でどうか?」
「「えっ!?」」
「足らぬか・・・ならば白金貨2」
「いやいやいや!白金貨1枚でお売りします!」
100万単位で値上げしようとするとか、どんな悪徳商人なの!?ドワーフ王の金銭感覚が麻痺してるよ!?
「おお!そうか!では早速売って欲しい!何樽でも買うぞ!」
「桜さん、どうか私にも1樽お売り下さい!」
「今手持ちが2樽しかないので、1樽ずつでお願いします。また準備が出来たら伺いますので、それまでお待ち頂けますか?」
本当は転移で戻ればすぐにでも準備が出来るけど、そんな事をしたら毎日持って来させられる気がする。リスクは回避しよう。
「1樽か・・・レギンは次回買えば良いのではないか?」
「何を仰られます!王こそ昨日1樽頂いたばかりではないですか!1樽で我慢して頂きたい!」
「その1樽の3割をお前に飲まれたのだが?」
「たったの3割で文句を言われるなど、いつから王はそんな狭量になられたのですか?」
えぇぇぇぇ。お酒の取り合いで喧嘩とか、私が居た堪れなくなるので止めて下さい。これは向こうに判断を任せていたら、争いの火種になりかねないな。
「分かりました。ではこれから定期的に販売に参りますが、1人1樽までと制限を付けさせて頂きます。金額は1樽白金貨1枚。この条件で良ければ、契約を致しましょう。」
「1樽・・・いや、分かった。その条件で契約しよう。」
ガンドール王が答えると、クレマンがすぐさま契約書を私とガンドール王の前に配る。何も言わないでも書類があるとか、本当クレマンは優秀過ぎ!
こうして何とか無事に契約を結ぶ事が出来た私とクレマンは、他のドワーフに見つからない内に急いで拠点へと逃げ帰ったのだった。
昼食を挟んで、午後からはまた現場監督の予定。
拠点周りの魔物は粗方昨日のデスマーチで駆逐済みの為、午前中は1匹も出なかったらしい。今もMAPで見る限り、拠点の10km圏内に魔物の姿はない。
それでも念の為、コタロウとリュウに暫く拠点周りの警備を頼んでおこう。
「コタロウ、リュウ、拠点の警備を暫くお願いしても良いかな?」
「俺に任せろ!」
「いーよー!」
「頼りにしてるね!ありがとう!!!」
わしゃわしゃと撫で回すと、嬉しそうに擦り寄ってくる。癒される~。これで午後からも頑張れるよ~。
宿舎の次にドワーフ達に取り掛かってもらったのは、大勢が泊まれる温泉宿。訪れる冒険者が増える前に、何とか完成させたい所だけど、妥協はしたくない。
「「 桜様ーーー!」」
早速現場に行くと、2人のドワーフが走ってくる。今回の依頼で建築の責任者になったドワーフのドルムと、建具関係の責任者になったホルグだ。
「お疲れ様!進み具合はどんな感じ?」
「概ね順調だ!作った事の無い建物だが、その分やり甲斐がある!」
ドルムはツヴェルク王国でもトップを争うほどの腕前で、彼の工房には多くの弟子がいる。その為か指示を出すのがとても上手い。
「私の方は宿舎の1棟の建具を作ってますが、こちらも順調に進んでいるので、今日中には1棟完成するかと。」
ホルグもツヴェルク王国でトップの腕前を持つ建具職人。腕の良い職人さんがじゃんけんに勝ってくれて助かったよ!
特に問題もなさそうなので、そのまま進めてもらう。私はMAPで魔物を警戒しつつ、クレマンと作業を見て回る事に。
「!?」
拠点に向かって猛スピードで走ってくる人がMAPに映る。赤色ではないので、敵意はなさそう。
(桜、誰か走って来る。)
(敵意はなさそうなんだけど・・・どんな人?)
(えっとねー、真っ黒な服を着てて、頭にも黒い布を巻いた人ー。)
それってクレマンの部下の忍者!?
(その人は多分クレマンの知り合いだと思う。通してあげて。)
(( 分かった!))
あっぶな!クレマンの部下を攻撃するとこだったよ。
「ふぅ~。」
「桜様どうかされましたか?」
安心して思わず息を吐くと、心配したクレマンに顔を覗きこまれた。
「今クレマンの部下が拠点に向かって走って来てるよ。名前知らないとMAPに名前が出ないから、後で教えてもらえるかな?」
「これは申し訳ありません!かしこまりました!」
またこんな事があるかもしれないし、私も今度から気を付けないとね。
あれ?名前聞けなない時は、鑑定使えば良いのか!すっかり忘れてた!
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