第98話 死屍累々
朝日の眩しさに目が覚めると、両サイドをもふもふに挟まれた心地良さから、思わず二度寝しかける。今朝も清々しい朝だね。
コタロウとリュウの散歩の為1階へ降りると、食堂でアンナとガインが朝食を食べている。
「おはよう桜。今から散歩?朝食は後にする?」
「おはよう!うん、散歩の後が良いな。」
「了解!気を付けて行ってきな。」
「「「行って来まーす!」」」
今日は私も体を動かしたかったので、コタロウとリュウと一緒に森へ行く。
コタロウの背に乗り、自由に走り回り、魔物を見つけては倒して収納。
久しぶりの戦闘だけど、毎日素振りを欠かしていなかったからか、思ったよりもスムーズに動けた。
拠点作りに目処が立ったらまたダンジョン攻略に行きたいので、鈍らないようにしっかりと稽古はしておこう。
散歩の後は温泉へ。シャンプーとボディーソープの湯で髪と体の汚れを落とし、いざ温泉へ!
ザッパァァァァーーーン
本当はやってはいけない行為だけど、今は誰も居ないので思わず飛び込んでしまった。1度やってみたかったんだよね。
「面白そう!俺も!」
「行っくよーーー!!!」
私が飛び込んだのが楽しそうだと思った2匹が、走り込みからの大ジャンプ。
ザッパァァァァァァァーーーーーン!!!
私が飛び込んだ時より盛大に温泉のしぶきが飛び散った。
「「 これ楽しい!!! 」」
温泉の湯が半分まで減ったけど、またすぐにいっぱいに溜まるので問題なし!
「他に誰も居ない時だけだよ!」
「「 はーーーい! 」」
あれ?そういえば今朝はディーネ達の姿が見えない。いつもならこの時間に温泉入ってたのに、何かあったのかな。
ふと疑問に思いつつも、コタロウ・リュウと温泉を堪能し、茹で上がる前に大熊亭へ戻ったのだった。
朝食後、重い腰を上げ昨日宴会をした宿舎へと転移する。もちろんアンナとガインも捕獲済み。
「おぅ・・・・・。」
「まあ、当然こうなってるわな。」
「クレマンまで・・・。」
私たちの目の前に広がるのは、死屍累々たる有様だった。部屋の中は噎せ返るほど酒の匂いが充満し、ここに居るだけで酔いそうになる。
「鼻が曲がりそう・・・。」
「臭いよぅ・・・。」
「ごめん!外で遊んどく?」
「「そうするー・・・」」
余程辛かったのか、コタロウとリュウは猛スピードで外へと走り出して行った。可哀想な事をしちゃったな。
気を取り直して、改めて会場内を見渡す。窓を開けたいけど、足の踏み場がない。
とりあえず窓付近の屍の隙間に転移し、窓を開けていく。窓から入る新鮮な空気が美味しい。
次は状態異常回復の湯を飲ませたいんだけど・・・。この人数を1人1人飲ませて回るのは、かなりの重労働。それなら・・・
アンナとガインには、下を向いてる人を仰向けにしてもらう。
収納から状態異常回復の湯を丸っと湯のまま取り出し、水魔法で空中へ留め、小分けにする。これをダイレクトにぶっ掛けていく。
「ぶわっ!」
「ゴホッゴホッ!何だー!?」
「私とした事が、この様な失態をお見せするとは・・・。」
飲んだ人からどんどん復活して行く。その中には当然クレマンとヒューゴの姿もあった。クレマンが酔いつぶれるなんて珍しい。日本酒が気に入ったみたいで、いつもよりお酒の進みも早かったからかな?
「皆さん、昨夜は遅くまで楽しんでいた様で何よりです。本日もお仕事がありますので、まずは温泉に入ってお酒の匂いを落として来て下さいね!」
「「「「「 はい!!! 」」」」」
にっこり笑顔で言ったつもりなのに、何故か怯えた顔で温泉へ走っていくドワーフ達と冒険者達。解せぬ。
「皆が温泉に入ってる間に、アンナとガインは朝食の準備をお願い。」
「はいよ!」
「おう!」
真新しい宿舎の厨房に目を輝かせているガイン。珍しい光景を見ちゃったよ。
「クレマンは温泉に入った後、陽菜達を起こして連れて来て。皆まとめて朝食にしてしまおう。」
「かしこまりました。」
優雅に一礼して、素早く部屋を出ていくクレマン。
「ヒューゴは会場内の掃除をお願いね?」
「えっ?温泉は!?」
「掃除をお・ね・が・い・ね?」
「・・・・・はい。」
トボトボと掃除に向かうその後ろ姿に激を飛ばす。
「皆が集まるまでに終わらせてね。ちなみにドワーフのお風呂は早いから、そのつもりでよろしく!」
「嘘だろ!?」
ヒューゴが慌てて走り出した。間に合わなかったら手伝うつもりだけど、これなら大丈夫そうかな?
何とか掃除も一段落し、空気も入れ替わった頃、クレマンが陽菜達を連れて戻って来た。その後ろにドワーフ達の姿もある。
私はアンナと協力して、朝食を配っていく。本日はガイン特性の具だくさんポトフと柔らかいパン。飲み過ぎた人に優しいメニューだ。
「これは美味いな!」
「毎日こんなに美味い飯を食べられるなら、あっという間に仕事が終わりそうだな!」
朝食もドワーフ達に好評のようで良かった良かった!
「うっま!!!」
「もう俺ここに住みたい・・・。」
「私も~!料理やお酒もだけど、あの温泉とかいうお風呂が最高すぎて~。」
冒険者達が自堕落になっていく。これはアンナによるデスマーチの出番かもしれないね。
チラリとアンナを見ると、不敵な笑顔を浮かべて冒険者達を見ていた。どうやら同じ思いのようだ。
アンナと目が合ったので頷いてからサムズアップすると、アンナが輝く笑顔でサムズアップを返してきた。どうやらきちんと意図が伝わったね。ついでにヒューゴも鍛え直してきてもらおう。
「うおっ!何だ!?今ゾワッとした!!」
ヒューゴが何かを感じ取ったのか、腕を擦りながらキョロキョロしている。
ふふふ。逃げられないように、出発までは秘密にしておこう。楽しい1日の始まりだ!
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