第94話 酒!酒!酒!
いよいよ条件と報酬の交渉開始!私のポケットマネーで足りるかな。それだけが心配。
「それでは報酬と条件について話し合いたいのですが、希望はありますか?」
「「「「「「「「酒!!!」」」」」」」」
・・・・・えっ?酒?どういう事?今は条件と報酬の希望を聞いてたよね?という事は条件が毎日お酒が飲みたいって事???
私が混乱しながら考え込んでいると、見兼ねたレギンさんが助け舟を出してくれた。
「お前達、妙に集まりが早いと思ったら、味見した奴から話を先に聞いていたな?」
「そうなんでさー!何でも今まで飲んだ事ない程の美酒だとか!」
「聞いただけで涎が出そうだ!」
話しながら想像しているのか、目がうっとりしている。口から涎出てますよ。
「だから報酬も条件も美味い酒!」
「毎日仕事が終わったら飲みたい!」
「酒ーーーーー!!!」
報酬がお酒!?そんなので良いの!?それならいくらでもあげちゃうよ!
あっ!いや、駄目だ!好きなだけあげたら仕事にならなくなる。
「クレマン。毎日どれくらいのお酒を差し入れたら、仕事に差し障りがないかな?」
「・・・そうですね。恐らく1日1樽で十分かと。」
うん!それくらいなら可能だね。
「それでは毎日1樽、晩御飯の時に差し入れますので、皆さんで分けて飲んで下さい。
それと報酬がお酒だけというのはさすがに心苦しいので、報酬は1人金貨30枚。
それ以外に出来栄えが良かったり、有用なアイディアを出してくれたり、人より多くの仕事をしてくれたりと、拠点作りに貢献してくれた人には、その都度ボーナスとして酒瓶1本追加したいと思います!」
「「「「「「うおぉぉぉぉ!!」」」」」」
ドワーフ達の雄叫びで、部屋が揺れてる様な気がする。
「桜さん、それはあまりにも報酬が良すぎるのでは?」
驚いた顔のレギンさんが、そっと小声で尋ねてくる。報酬が高くて心配されるとは思わなかったよ。レギンさんも相当、人がいいね。
「拠点は高い壁で覆っているとは言っても、カティアの森内部です。危険がないとは言いきれませんので、危険手当込です。それに彼らの仕事には、それだけ払う価値があると思いますから。」
ボーナスで能力が高い人の仕事を評価出来るし、これなら不公平にはならないはず。
「この条件で納得された方は、契約をお願いします!」
私の言葉に合わせて、クレマンがササッと契約書を配って回る。さすがクレマン!仕事が早い!
誰からも異論が上がる事は無く、無事に契約は完了!これで夢の温泉街が出来る!楽しみすぎて顔が緩みそう。
「それで、いつから取り掛かる?」
「皆さんの準備が出来次第お願いしたいです。荷物は全て私が収納にしまって運びますので、一箇所に集めてもらえると助かります。何日後ぐらいに迎えに来たら良いですか?」
「準備はもうそろそろ終わってるはずだ。すぐにでも行けるぞ!」
えぇぇぇぇぇぇぇ!?準備早過ぎない!?お酒?お酒なの!?そんなに早く飲みたいの!?お酒に対する情熱が半端ない。
レギンさんもいつでも大丈夫と太鼓判を押してくれた為、荷物を収納後、全員を連れて転移する事になった。
「ふむ・・・この人数が寝泊まりする宿舎を、急ぎ作らねばならないかと思います。警備の者以外のドワーフ全員で取り掛かれば、恐らく今日中に作れるでしょう。
そこで桜さん提案があります。本日のみ全員を雇って頂く事は可能でしょうか?報酬は大量の酒になると思うのですが・・・。」
「是非お願いします!!!」
願ってもない提案に思わず食い気味で返事をしてしまった。その瞬間部屋の外から大歓声が上がった。外で聞き耳を立てていたドワーフ達だ。
レギンさんのこめかみに青筋が見える。つかつかと扉に向かうと、勢いよく開け放った。
「てめーら・・・こんな所で油打ってる暇があるなら、さっさと準備して来い!!!」
大音量の怒声に、ドワーフ達は蜘蛛の子を散らすように走り去って行く。
「はぁ。」
ため息をつきながらドワーフ達の後ろ姿を見送るレギンさん。その顔からは疲れが見て取れる。
「レギンさん。お疲れの様なので、これ良かったらどうぞ。」
私は収納から疲労回復の湯が入った瓶を取り出し、レギンさんへ手渡す。
レギンさんは受け取りながらも、怪訝そうな顔をしている。
「桜さん、こちらはお酒でしょうか?」
「違いますよ!疲れが取れるポーションの様な物です。」
私も目の前で同じ物を飲んでみせる。
「ぷっはぁ!疲れは取れるし、美味しいし、これ本当に最高!」
私の様子を見て、レギンさんは恐る恐る口をつけた。
「!!!」
ゴクッゴクッゴクッゴクッ
「ぷはー!これは!?疲れが無くなっていく?いやむしろ力が湧いてくる!!」
さっきまで疲れきって萎れていたレギンさんの顔が、みるみるうちに艶やかでエネルギーが満ち溢れた顔になった。
あれ?レギンさんの顔ってこんな顔だったっけ?
「すぐに準備させて来ますので、もう少しだけこちらでお待ち下さい。」
にっこりと笑いながら会釈をした後、レギンさんは猛スピードで走って行った。
遠くの方で怒声と悲鳴が聞こえる気がするけど・・・きっとこれは気にしてはいけない。
クレマンと拠点に着いてからの事を相談しながら、皆の準備が整うのをもう暫く待つ事になるのだった。
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