第93話 メンバー決定!
私達が急いでいる事を察し、早速交渉の場を設けてくれる事になった。そしてレギンさん自ら、ドワーフ達との交渉の場へと案内してくれた。
案内された部屋は尋常じゃない程広い部屋。その広い部屋が埋め尽くされるほどのドワーフ達が集まっている。
「こんなに大勢の方を集めて下さったんですか!?」
「・・・いえ、つい今し方声掛けに行かせたので、まだこんなに集まる時間は無かったと記憶しているのですが・・・。」
レギンさんも驚く程、早く集まったらしい。ちょうど手が空いてたのかな?
「まあ良いでしょう。まずは説明してから、募集を募ってみますね。」
「はい!よろしくお願いします!」
レギンさんが壇上へ上がると、室内は水を打ったように静まり返った。
「皆忙しい中、集まってもらって感謝する。もう聞いている者も居るだろうが、今日はツヴェルク王国へ職人を探しに客人が訪れている。
彼女はカティアダンジョンを攻略する為、カティアの森に温泉街を築きたいそうだ。」
【 温泉街 】のフレーズが出た瞬間、屋内がザワつく。イメージ出来ないのか、中には首を傾げてるドワーフもいる。
「かなり大規模な拠点作りの依頼だ。期間もそれなりに長くなると思ってもらおう。
色々と質問もあるだろうが、それは彼女と契約したする時に聞いてもらいたい。報酬や条件も彼女と交渉して決めてくれ。」
ザワザワザワザワ・・・・・・
「それではこの依頼を受けたいと思うものはこの場に残ってくれ。それ以外はすぐに部屋を出るように。」
・・・・・・・・・・・・・・
あれ?誰も出て行かない?もしかして聞こえなかった?
レギンさんも同じ事を思ったのか、今度は違う方法で確認する。
「彼女の依頼を受けたい者は挙手を!」
バッ!!!
一斉に全員の手が上がり、レギンさんが眉間を揉みながらため息をついた。
「全員は多過ぎる。とりあえず建築関係5工房、建具等の物作り関係3工房に絞る。それ以外が専門の工房は今回は諦めてくれ。」
「横暴だ!」
「俺達だって依頼を受けたい!」
締め出されかけているドワーフ達が騒ぎ出した。
「お前達・・・そんなに酒を禁止にされたいか?」
怒気を孕んだレギンさんの言葉に震え上がったドワーフ達は、一目散に部屋から出て行った。それでもまだ半分のドワーフが部屋に留まっている。
「ふぅ。後は数を絞るだけですね。さて、どうやって決めれば揉めないか・・・。」
「じゃんけんはどうですか?」
「じゃんけん・・・とは?」
私はレギンさんと部屋に残っているドワーフに向けて、じゃんけんについて身振り手振りで説明する。
説明だけでは分からないだろうと、まずは慣れてもらう為、隣の人とじゃんけん勝負をしてもらう事にした。
最初はたどたどしかったけど、何度かやるうちに大盛り上がり。
「これは面白い!」
「勝ち負けがすぐにつくのが良いな!」
「楽しい!」
まさかのじゃんけん大人気。目を輝かせたドワーフ達が、夢中でじゃんけんをしてる姿は中々に微笑ましい。
「それでは本番のじゃんけん勝負を始めたいと思います。各工房の代表者は前へ。建築関係の工房は右へ、物作り関係の工房は左へ集まってください。」
30人のドワーフが右へ、20人のドワーフが左へ集まった。
「それでは隣の人とじゃんけんをして、勝った人はその場に残って下さい。始め!」
負けたドワーフの絶叫が聞こえてくる。そんなに温泉街を作りたがってくれるなんて!さすが職人の国だね!
最後は輪になってじゃんけんをしてもらい、お願いする工房が決まった。
どうやらツヴェルク王国でもトップに入る大規模な工房も勝ち取ったらしい。帰ったら簡易宿舎を急いで作らないと。
勝ち取った工房の代表者以外は部屋から出てもらい、このまま報酬と条件、それと詳細の説明をする事になった。契約書も作る為、テーブルと椅子も並べてもらう。
「それでは先にこちらから詳細を説明させてもらいますね。」
私は皆がテーブル等を設置してくれてる間に簡単に書いた見取り図を見せた。そして収納からお昼ご飯として、ハンバーガーとポテト、それとコーラ!といきたい所だけど、紅茶のセットを皆の前に配る。
「桜様!?」
クレマンから抗議の声が上がる。
「ごめんねクレマン。でも拠点を作ってる間、隠せるとは思えないの。それに急ぐためには収納も転移も使いたいしね。」
「桜様がそう仰るなら・・・。」
クレマンは渋々ながらも納得してくれた。
それから改めて、収納魔法と転移魔法、それから温泉街を作る為の鍵となる温泉スキルについて、簡単に説明する。もちろんお酒の冷泉については秘密です。
私の説明を静かに聞いていたドワーフ達は、一様に困った顔をしていた。
「桜さんさ、必要だったかもしれないが、あんまり簡単にその能力について言うもんじゃないぞ?」
「んだんだ。悪用されたらどうするつもりなんだ?」
「そんな簡単に人を信用したらいかん!」
一斉に咎められた。いざとなったら転移で逃げるつもりだから、一応警戒は0では無いんだけどな。
でもなんというか、この国のドワーフ達は信じられる気がしたんだよ。MAPで見てても、全く危険人物が居ないしね。
それまで黙って聞いていたレギンさんが、にっこり笑いながら口を開いた。
「それだけ私達のことを信用して下さったという事でしょう。その信頼に答える為にも、今聞いた話は一切他言無用。工房の者にも徹底させるように。もし漏らした場合は・・・分かってますね?」
レギンさんの笑顔が怖い。漏らした場合どうなるか、知りたいような知りたくないような・・・・・やっぱり知りたくない!
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