第87話 美の女神

 アマリアに来て2日目、今朝は早めに起きてコタロウとリュウと一緒に拠点に来ております。

 1日中影に潜ってるのは可哀想で、拠点でお留守番を提案してみたけど、2匹揃って速攻却下された。


 街を自由に歩けないかなと思って、ファンタジー定番の従魔登録とかあるのかそれとなく探ってみたけど、皆揃って「魔物を従える事はありえない」と言われてしまった。

 なので朝の散歩だけは、たっぷりさせてあげたい。


「「行ってきまーす!」」

「気を付けてね!」

 凄い速さで駆け出して行った。拠点の高い壁もひとっ飛び。

 2匹で追いかけっこをしているのか、猛スピードでMAPの印が動いている。思う存分発散してきてね!



 コタロウとリュウが散歩に行ってる間に、私は温泉を堪能しよう。

 そう言えば体を洗う為に使ってるこの木の実の粉。確かに泡立つけど、日本のお風呂事情を知ってる身としては、物足りなく感じる。


 あれ?もしかしてシャンプーやボディーソープも作れるのでは?何だったら化粧水や乳液も出来るんじゃないの!?

 何で今まで気が付かなかったんだろう。その事実の方が衝撃だよ。


 気を取り直して、体を洗う場所近くにボディーソープとシャンプーの湯を作る。もちろん人体に無害で、土壌も汚染されない様にイメージして。

 飲み物とは違い、台を作って高くする必要は無いので簡単に作れた。

 鑑定結果は

【 体の全ての汚れを綺麗にする湯 】

【 髪の全ての汚れを綺麗にする湯 】

 うん、そのままだね。


 今度は脱衣所に化粧水と乳液の湯を作ろうとして、ふと思いつく。効能がまとめれば、日本で言うオールインワンみたいなものが出来るのでは?

 イメージとしては肌に水分を与え、かつ保湿もしてくれる。肌に張りを与えてくれる美容成分や白くしてくれる美白成分なんかも入ってると尚良いね。


 このイメージのまま作ってみる。

 鑑定結果は【 肌が潤う冷泉 】ここまではイメージ通りだった。けれど説明欄には驚きの内容が書いてあった。

 この冷泉は使っては駄目なのでは?バレたら大変な事になるのでは?


 不安になった私が冷泉を消そうとすると、

「桜ちゃ~ん、その冷泉は消しちゃダ~メ」

「桜!何でそんな良い物消そうとするんだい!絶対残しな!」

「桜様お願いです。消さないで下さい!」

 必死な形相の女神達に止められてしまった。


 肌が潤う冷泉の説明欄にはこう書かれていた。

【 効能:肌が潤う。白くなる。若返る。効果は3日間。】

 肌に張りをってイメージしたから、若返りの効能になっちゃったのかな。

 権力持った女性にバレると大変な事になるだろうけど、仲間内で使う分には・・・まあいっか。


 早速新しく作ったボディーソープの湯で体を洗ってみる。良く泡立って気持ちが良い!

 シャンプーの湯も使ってみると、地肌まで綺麗に洗い上がってサッパリ!


 女神達も興味津々だったのか、見よう見まねで使っている。神様達は意外に好奇心が旺盛なんだよね。


 サッパリと洗い上がった後は温泉へ。生き返るね~。

 温泉の心地良さに蕩けそうになっていると、突然MAPに金色のマーカーが現れた。場所は今居るここ、温泉の壁の外側。名前の表記がないから、知らない神様?


 女神達を見るが、誰も壁の方を見ないようにしている。気付いててスルーしてるな。

 私がどうしたものかと悩んでいると、

「ね~え~、気付いてるんでしょ~?そろそろ無視するの、止めてもらえないかしら?」

 とても妖艶な声が、壁の方から聞こえて来た。


 金色に輝くウェーブのかかった髪。出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいるバランスの良い身体。ふっくらとした艶やかな唇。そして流し目のような少し視線を下に落とすような下目遣いが何とも色っぽい美女が、こちらに近付いて来る。


「あれ~?誰かと思ったらエウロだ~。何なにどうしたの~?」

「あんた、まさか・・・」

「あれだけ駄目って言ったのに、勝手に来てしまったの!?」

 何やら皆様心当たりがお有のようで?


「だぁって~、3神だけどんどん綺麗になってずるいじゃない!私は美の女神なのよ!?なのに紹介してっていくら言っても、全く取り合ってくれないから、桜ちゃんがここに居る時に突撃してみたの!」


 うふんと聞こえてきそうな、お色気たっぷりのウィンクをされた。

 女の私でも少しドキドキしちゃう。


「もしかして温泉に入りたいんですか?ニーリル達のお友達なら良いですよ?」

「やったぁ!」

「「「駄目ーーーーー!!!!!」」」

 3女神が絶叫した。あれ?駄目だったの?

 私は迷惑じゃないよ?


「桜ちゃんは人が良すぎだよ~!メッ!」

「あーもうこれ駄目だ。止められないよ。」

「1回でも例外を作ってしまったら、他を断れなくなります。」

「?????」

 ニーリルには怒られるし、ヨルアとディーネは困ってる。


「桜ちゃぁん、ありがとう!とぉっても嬉しいわ!私の事はエウロって呼んでね。これから仲良くしましょう!」

 そういうとエウロは、私の頬にちゅっとした。


「「「ギャーーーーーー!!!!」」」

 そして何故か叫ぶ3女神。

「何勝手に加護してるの~!!!」

「やり方って物があるだろーが!」

「もー!勝手な事しないで下さいよ!!」


 これは多分あれかな?他にも入りたがってる女神が居るって事なのかな?

 今まではニーリル達が防波堤になって止めてたのを、例外が出来た事で断れなくなった?


 うーん・・・結構広めに温泉作ってあるし、そんなに大勢じゃなかったら入れるかな?目の保養にもなるし、まあいっか。

「「「駄目ーーーーーーー!!!!」」」

 この日2度目の絶叫が、カティアの森に響いたのだった。



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