第76話 アマリア聖王国
ハンメル組を街近くの森まで転移で運ぶ。アンナの目が若干輝いていた気がするけど、ここは見ない振りが1番。・・・冒険者ギルドに殴り込みに行く訳じゃないよね?
不穏な気配を振り切り、ヒューゴと一緒にカティアの森の北部、アマリア聖王国の首都ルーデンスに近い場所まで転移する。
今回持ち込む魔物は第5層ボスのミノタウロスと、第10層ボスのゴブリンロード。まだまだ魔物素材を収納してるけど、とりあえず大物から売っていく方向で。
前回同様ヒューゴが、魔物を乗せた台車を引いてくれてる。上からは中身が見えないように、布をかぶせてある。騒ぎになるといけないからね。
それにしてもいつまでも台車じゃ数も運べないし、引くのも大変だよね。帰りに荷馬車でも買っちゃおうかな。
そんな事を考えつつMAPで周りを警戒しながら進むも、魔物とは遭遇する事も無く聖王国に無事到着。
遠目からでも見えていたけど、街の周囲を取り囲む白亜の外壁がとても眩しい。
街へ入るための門前には行列もなく、身分証と台車の中身の確認もすごく簡単なものだった。ハンメルの時とあまりにも違う。
若干乗せてる魔物に驚いていたけど、問題なく通る事が出来た。
門を潜ると目の前に、真っ白な建物が規則的に並んだ街並みが広がっている。よく見ると左右対称のシンメトリー?植えられた木の位置や魔力灯さえ全く同じ。
門から街の奥まで続く大通りの正面には、厳かな佇まいの大聖堂。こちらも左右対称に作られている。玉ねぎみたいな形の屋根が可愛い。
確かアマリア聖王国が祀っている神様は創造神様だったはず。
今回はゆっくり羽休めも兼ねてる為、みんな街に1泊する予定だから時間もある。折角なので、帰る前に大聖堂を見に行ってみよう。
ウキウキ気分で冒険者ギルドへ向かう途中、何となく街に違和感を感じる。何だろう。妙に静かな気がする。
「ヒューゴ、この街静か過ぎない?」
「ああ、人が余り出歩いてないな。活気に欠けるというか。」
ヒューゴに言われて改めて周りを見てみると、確かにラースやハンメルに比べて人が歩いてない。何かあったのかな?
「まあその辺の事情は、冒険者ギルドで聞いてみるか。ほら丁度着いた事だし、さっさと魔物を売ってしまおう。」
台車をギルドの横に置くと、大きく伸びをしながらヒューゴが言った。
ずっと台車を引いていたから、肩が凝ったかな。宿に着いたらマッサージをしてあげよう。
台車の見張りをヒューゴに任せて、ギルドの中へ入る。今までは入るなり不躾な視線を痛いほど浴びていたんだけど、今日は全くといって良いほど視線を感じない。
それもそのはず。ギルド内は職員以外の人が居なかった。併設されてる酒場にも人影は無く、閑古鳥が鳴いている。
これはもしかして創造神様への信仰が減ってる事が原因なのかな。街にまで影響がある程酷い状況とは思わなかった。
ん?・・・という事は、この国に活気が戻ればゼノス様に力が戻るのでは!?何か良い案はないものか。
「あのー、すみません。何かお困りでしょうか?」
私が考え込んでいると、受付から出て来たらしい女性に声を掛けられた。
ついついあれこれと思索に耽ってしまったけど、よく考えたら入って来ていきなりギルドの真ん中でボーッと突っ立っているとか、不審人物極まりないのでは!?
「すみません。少々考え事をしてました。少し大きな魔物の解体と買取査定をお願いしたいのですが・・・。」
「本当ですか!?ありがとうございます!!それなら裏手の解体場まで、直接運んでもらえますか?すぐに解体スタッフへ伝えてきますーーー!!!」
女性の勢いに呆気に取られてる間に、言うや否や女性は走って行ってしまった。余程ここを拠点にする冒険者が少なくなってるんだろうな。
ヒューゴさんの所へ戻り、解体場まで移動すると解体スタッフと思われる人達がズラリと並んでいた。その数ざっと10名程。多すぎませんか?
「いらっしゃい!!!その台車の魔物の買取査定で良いんだよな!?どれくらいあるんだ!?」
「えーっと、2匹です。」
「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」
2匹という数に、明らかに意気消沈してしまった。ごめんよおじちゃん。これ以上乗せると台車壊れちゃうんだ。
「先に宿を取ったりして来るので、また夕方に寄らせてもらいますね。」
項垂れているおじちゃん達に伝えてから、ヒューゴとその場を離れる。余りの項垂れ具合に居た堪れず、私もヒューゴも思わず早足になってしまったのだった。
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