第71話 転移部屋

「宝箱だ!!!」

 ミノタウロスと斧を収納していると、大河君がボス部屋の奥で宝箱を見つけた。

 罠を警戒して、蓋は開けずに待っている。偉いよ!


 宝箱の鑑定結果、今回は罠は無し。

「大丈夫!罠は無いです。」

「じゃあ開けるぞー!」

 大河君が開けたくてウズウズしていたので、そのまま開けてもらう。


「うおぉぉぉ!!!金板だ!!!初めて見た!!!」

「大河・・・先にこっちの剣に気付けよ。お前剣士だろ?」

「この指輪は・・・何か補助効果のある指輪ですかな?」


 宝箱の中には金板3枚、剣が1本、指輪が1個入っていた。早速鑑定してみる。

「その指輪は素早さが上がる指輪、剣はミスリルの剣ですね。」

「ミスリル!?」

 お、やっと大河君の目が金板から剣に移ったね。


「丁度いい。その剣は大河が使いな!」

「えっ!?良いの!?」

 大河君がキラキラと輝いた目で、私達の顔を見ている。ロックゴーレムが斬れなかった時の暗い顔が嘘のよう。

 私も皆も笑顔で頷いてみせると、大河君が深々と頭を下げる。

「ありがとう!!!!!」


「金板は活動費として桜様に預かって貰いましょう。指輪はどう致しますか?」

「素早さか・・・。いざという時の事を考えると、優斗か陽菜かな。」

「陽菜にお願いします!回復役の陽菜が素早く動ければ、何かあった時助かる確率が上がるから。」

「ん、分かった。」


 アンナさんは笑顔で頷くと、陽菜ちゃんに指輪を嵌めてあげる。照れる陽菜ちゃん。複雑そうな顔の優斗君。アンナさんに他意は無い。きっと。



「皆!ちょっと来てくれ!」

 ボス部屋の奥にあった扉から、ヒューゴさんが呼んでいた。ガインさんと一緒に扉の外を調べていたらしい。


 扉から出るとそこには次の階層へ降りる階段と、その隣に扉があった。

 扉を開けてみると5畳くらいの部屋の真ん中に、サッカーボール大の水晶玉が台座に鎮座している。

 水晶玉の上には【 移動したい者だけ部屋に入れ。扉を閉めてから、水晶玉に手を触れよ。】と書いてあった。・・・これはもしかして?


「これ触っても良いですか?」

「桜!?」

「こんなの他のダンジョンで聞いたことがない。何が起きるか分からないんだぞ!?」

 アンナさんとヒューゴさんが反対する。


「桜さんこれって、もしかして転移装置?」

「ボス部屋の後にある転移装置という事は!?」

「マジで!?大熊亭でゆっくり休めるんじゃね!?」

 陽菜ちゃん、優斗君、大河君も気付いた。ゲームじゃないから違うかもしれないけど、どうしても試してみたい。


 私達の強い要望に根負けする形で、試してみる事に。

 何かあってはぐれると困るので、全員で部屋に入る。扉が閉まったのを確認し水晶玉に触ると、水晶玉から光が溢れ出す。あまりの眩しさに目を瞑る。


 光が収まる気配を感じそっと目を開けると、さっきまでの部屋と全く変わらなかった。

 しかし扉の外へ出ると、そこはボス部屋の前ではなくダンジョンの外。

 入る時は気付かなかったけど、ダンジョン入口の横に隠し扉があって、その中がさっきの水晶玉がある部屋だった。


「「「「外だーーー!!!!!」」」」

 やっぱり転移部屋だった!今夜も部屋でゆっくり休める~!


「今のは転移かい?」

 暫く放心状態だったアンナさんから質問された。

「はい、さっきの部屋は転移部屋だと思います。」


 元の世界の知識と合わせて、ざっくりと説明するとアンナさん達に驚かれた。

「桜達の世界は凄い世界なんだな!!」

 何か誤解された様な気がしないでもないけど、ゲームとかアニメとか説明難しいし仕方ない。


「これならしっかり宿で休みながら攻略出来るな!」

「明日からはもっとガンガン攻めるよ!!」

「全力で行く!!」


 ヒューゴさん、アンナさん、ガインさんに火が着いてしまった。明日からの攻略が大変になるかも。

 温泉で疲れを取って、美味しいご飯を食べて、今夜は早めに寝よう!

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