第69話 第2層

「もうどこから突っ込めば良いのか分からない。」

 アンナさんがガクリと肩を落としている。神様達が魔法は想像だって教えてくれたんだから、私は間違ってないはず。


「この件は一旦保留。今はクレマン達と合流して先に進もう。野営の時にでも聞かせてもらおうか桜。」

「はーい。」

 ヒューゴさん。ジト目で見るのは止めて下さい。後で説明するから。


 デビルバイパーの頭と体を収納し、クレマンさん達と合流する。

「やはりデビルバイパーでしたか。その割にかすり傷1つしてないのは、桜様の傷湯のお陰ですかな?」

「あー・・・その話はまた後で。今は先に進もう。」

 クレマンさんは首を傾げていたが、アンナさんはさっさと先に歩き出した。



 MAPの左下が私達の現在地。3層への階段はMAP右上にある。

 最短距離で階段へ向かうと、真ん中付近に陣取ってる20匹以上の群れと鉢合わせる。

 迂回ルートの1つの左上側からのルートには、未確認の魔物が数体いる。

 右下側からのルートにはゴブリンの群れがいる。それも1層とは比べ物にならない数がいる。正直このルートだけは選びたくない。


 中々ルートを選びにくいこの状況を、アンナさん達に説明する。なるべく力を温存する方針で決まり、左上側からのルートに決まった。


「ヒッ!!」

 MAPの左上に到着し、目的の場所にいるであろう魔物の姿を目視した瞬間、思わず悲鳴が出かけた。

 私の後ろで陽菜ちゃんが声を押し殺しながら呟いている。

「無理無理無理無理無理・・・。」


 木々の間に巣を張り巡らせ、8本の脚を使い縦横無尽に動き回っている。紫がかった体色に黒の縞模様の魔物の名前は、ポイズンスパイダー。


「あーーー無理だ!ごめんなさい。本当に生理的に無理です。」

「無理無理無理無理無理無理・・・・。」

 私と陽菜ちゃんはギブアップ状態。


 ポイズンスパイダーは毒を吐き出してくる為、優斗君が風魔法でサクッと全部切り刻んでくれた。


「桜、こいつらも収納・・・」

「ええぇっ!?」

「いや、うん。収納しなくて良いよ。置いていこう。」


 触らなくても何となく収納に入ってる事に抵抗があった私の反応を見て、アンナさんは苦笑しながら持ち帰る事を諦めてくれた。



 階段に向かう前に、どうせなら真ん中に陣取っている集団を今後の為に見ておく事になった。

 MAPで一番端にいる奴を見れる場所まで、静かに移動する。


「オークか!!!」

「肉が美味い。」

 あれ?何だか雲行きが怪しい。アンナさんとガインさんの目が輝いている。


 真ん中に陣取っている魔物はオークだった。という事は群れのボスは・・・ハイオーク。群れの個体数は全部で30。そこまで強くないとはいえ、数がいる。


 温存する為には戦わない方が吉のはず。そうですよねアンナさん!!??

「アンナ!ガイン!」

 クレマンさんが止める間もなく、2人は既に走り出していた。我を忘れるほど美味しいの!?


「仕方ない。俺も援護してくる。」

「私も参りましょう。皆様は無理なさらず、ここでお待ち下さい。」

 ヒューゴさんとクレマンさんも助太刀する為に駆け出した。


 遠目から見ていても、全く危なげない。ちぎっては投げちぎっては投げとは、こういう事を言うんだろうな。


 せっかくなので私達は休憩して待つ事に。もちろんMAPでの警戒は怠らない。

 簡易テーブルと椅子を土魔法で作り、布を被せる。

 そこに収納に仕舞っておいたティーポットとカップ、お皿に乗ったクッキーを並べる。

 コタロウとリュウには、少し乾燥させたお肉をおやつにあげる。


 すぐ飲めるように、ティーポットには紅茶を入れた状態で収納してあった。そして同じ状態の物がまだまだ収納してある。準備に抜かりはない!


「さすが桜さん!準備バッチリですね!」

「このクッキー美味い!」

「収納魔法便利ですね。僕も使えたら良かったのに。」

「「おやつ美味しいー!」」

 喜んでもらえて良かった!先は長いし、しっかり休憩取っておこう!


 暫くクッキー食べたり紅茶を飲んだりして待っていると、MAPからオークの反応が全て消えた。

 あの数のオークをたったの4人で、あっという間に殲滅。恐ろしい程強いね。


 オークを収納する為、お茶を片付けてアンナさん達の所へ向かうと、そこにはオークの山が出来ていた。


「皆待たせて悪かったね!桜、これ全部収納頼めるかい?」

「了解ボス!」

 血まみれのアンナさんにニッコリ笑いながら言われ、思わず即答し収納する。


「桜、これハイオークの肉。収納頼む。」

 ガインさんからは既に捌き終わったハイオークのお肉を託されました。相変わらず捌くの早いなガインさん。

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