第68話 支援魔法
階段前の集団を視認出来るぐらい近付くと、魔物の正体が分かった。
一見子供かと思うぐらいの大きさだけど、直ぐに魔物と分かるのはその特徴的な体の色。人とは違うその色は緑。それに尖った耳。
武器や魔法を扱う事から、知能は比較的高め。個の強さではなく、数の暴力で攻めてくる厄介な魔物ゴブリン。
そしてそのゴブリンを率いている群れのボスはホブゴブリン。
ボスの率いる群れのゴブリンは、通常のゴブリンとは違い統率が取れ、より厄介になるらしい。
「そこまで強くはないとは言っても、くれぐれも油断はしてくれるなよ。いくぞ!!」
アンナさんの掛け声で一斉に動き出す。
私はゴブリンの背後に転移し、一振りでゴブリンを真っ二つにし、周りの状況をすぐ確認する。
アンナさん、ガインさん、クレマンさん、ヒューゴさんは既に倒し終わっていた。アンナさんに至っては、ボスを瞬殺ですね。お見事です。
大河君も1度では致命傷に至らなくても、2度3度と斬りつけ、危なげなく倒していた。
優斗君は土魔法で地面から巨大な土の棘を生やし、ゴブリンを貫き倒していた。
他の魔物が近寄ってきていない事を確認し、息つく間もなく、今度はゴブリンの魔石を集めていく。
魔石は魔道具を使うのにたくさん必要になる。しっかり集めておこう。
作業が終わると、血の匂いで他の魔物が来る前に次の階層へと降りる階段まで移動する。ここまで来てやっと一息つける。
「はぁ~~~。緊張しました~~~。」
「俺もーーー。」
優斗君と大河君が水を飲みながら、コタロウとリュウをモフっている。癒されたいのかな。
「1匹倒したぐらいで何言ってるんだ。まだまだこれからだぞ?」
「まあまあ。彼らはまだ若い。戦闘に慣れるまでは、そんなものですよ。」
ヒューゴさんの言葉を、クレマンさんがフォローしてくれた。
何せこの世界の人とは違い、戦いが身近には無い日常生活を送っていたんだから、仕方が無いと思う。
「そうそう。むしろヒューゴが入団したての新人騎士の時より、大河達は強いよ!ほら、新人が最初に行う訓練で、お前」
「あ゙ぁぁぁぁぁぁーーーー!!!アンナ!その話は今はしなくて良いだろ!?」
「確か遠征でエスプリの森へ行った時」
「待てガインっ!!!」
「私の部隊との合同訓練でも」
「クレマン!?頼む!!止めてくれ!!!」
ヒューゴさんにも新人の頃があったんだな。ずっとこんな風にからかわれ・・・愛されてきたんだろうな。うんうん。
「桜・・・その顔止めてくれ。」
ついニマニマと見てしまっていたらしい。失敬。
アンナさん達の気遣いで少し休憩を取った後、いよいよ2層へと足を踏み入れる。
2層は見渡す限り木に覆われていた。これは森・・・かな。
MAPが無かったら、木の影からの奇襲に対応するのが難しかったかも。
MAPで周囲の状況を確認すると、何匹か知らない気配があった。
ここから少し歩いた所にも、ホブゴブリンより大きい魔物が一体いる。
今後の事を考えると、未遭遇の魔物とは戦っておきたい。
アンナさんに状況を説明すると、少し考え込んでいた。
「森で大きいサイズの魔物か・・・。確かに今後の事を考えると、桜には出来る限りの魔物を把握して欲しいな。とりあえず目視できる所まで進んでみて、それから戦うかどうかは決めよう。」
目視できるであろう場所まで歩いたが、全く魔物の姿を確認出来ない。木が生い茂っていて見えないかとも思ったけど、木で見えなくなる大きさでは無いはず。
「やっぱり。」
「こいつは多分デビルバイパーだな。木の上から襲ってくるから気を付けろ。」
名前からすると蛇の魔物?MAPで場所だけ分かっても、木の上から襲って来る事知らなかったら食べられてたかも。恐っ。
「大河、優斗、陽菜、クレマンはここで待機。クレマン、3人を任せたよ。」
「承知致しました。」
4人をその場に残し、私達はデビルバイパーを倒しに向かう。周りに魔物の気配は無いから、皆暫くは安全なはず。
向かいながらアンナさんから指示が飛ぶ。
「あたしとガイン、ヒューゴで攻める。桜は無理せず、隙を見て攻撃しな!奴は口から酸を飛ばす。口を大きく開いたら逃げろ!」
「了解ボス!遠距離から攻撃します!」
そうこうしてる内に、大分距離が縮まった。デビルバイパーも気付いたようで、こちらに向かって来ている。
「近付いて来てます!」
「はいよ。ガイン!ヒューゴ!行くぞ!!」
「「おう!」」
アンナさん達が駆け出した。
私も魔法で攻撃しよう。爬虫類って呼吸するっけ?ダメ元でやってみよう。
まずは風魔法で、蛇の顔を覆えるぐらいの大きさの真空の玉を作る。
「みんなー!魔法を使うから、一旦避けてー!」
アンナさん達に注意を促してから、これを蛇の顔に向かって投げる。
デビルバイパーが顔を振って避けようとしたが、引き寄せられるように頭を包み込む。
その瞬間、デビルバイパーが物凄い勢いで暴れだした。自分の頭を地面に擦り付けたり、しっぽで叩いたりしているが、真空の玉は離れない。
最後の力を振り絞りこちらに向かってきた所を、アンナさんにサクッと首を斬られて絶命した。
「・・・今のは?」
「魔法・・・だよな?」
ガインさんとヒューゴさんの質問にお答えしましょう!
「空気の無い玉を魔法で作り、デビルバイパーの顔を覆いました!遠距離魔法での支援です!」
「あれは支援とは言わないから!」
「えっ!?」
「「「・・・・・・・・・」」」
アンナさんの突っ込みに驚くと、3人が黙り込んだ。止めまでに時間が掛かるから、私の中では支援魔法なんだけどな。
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