第63話 冒険者ギルド

 ご飯を食べた後、まずは軍資金確保の為に冒険者ギルドへ向かう。

 冒険者ギルドに入ると、何だかザワついていた。何かあったのかな。


 受付へ向かうと、登録時に甘ったるく喋っていた受付嬢が叫んだ。

「あ"あ"ぁぁぁぁーーー!!この人達ですぅーーーーー!!!」

 ギルド内にいる全ての人間から見られてる。


「えっ!?いきなり何なの!?」

「おいおい。何だこの状況は。」

 悪い事は何もしてないんだけど・・・。不安になりMAPを見てみるが、皆敵意がある訳じゃなさそう。


「お前らがオウルベアを持ち込んだ奴らか!少し話が聞きたいから上がって来い!」

 私達が困惑していると、突然2階から大音量の声が響き渡った。

 見上げると長身だけど細身の、眼鏡をかけた壮年期の男性が立っていた。

「おいそこで群れてる奴ら!!散れ!!騒ぐ暇があるなら魔物の1匹でも狩って来い!」


 言うだけ言うと、私達の返事を聞く前に部屋に入って行った。

 さっきまでザワついてた人達も、蜘蛛の子を散らすように居なくなった。

 これは・・・断ったら駄目なやつですね。


 私達も2階へ上がり、先程の男性が入った部屋にノックをしてから入る。

「いきなり悪かった。まあ、座ってくれ。」

 私達に腰をかける様に勧めると、手ずからお茶を入れてくれた。失礼だけど、意外に美味しい。


「俺はハンメルの冒険者ギルド長のオリバーだ。単刀直入に聞く。あのオウルベアはどこで討伐した?あれはカティアの森にしか生息していなかったはずだ。それがもしハンメル付近に出たとすると、多くの犠牲者が出る。」

 なるほど。それでさっきの騒ぎだったんだ。納得納得。


 下手に嘘をつくと大事になりそうだったので、そのままを話す事にした。

「カティアの森で討伐しました。私達はカティアの森のダンジョンに挑戦しようと思っています。」

「なっ!!??あのダンジョンにか!!」

 オリバーさんが目を見開いている。


「はい。今日ハンメルに来たのは、ダンジョンに潜るのに、必要な物を揃えるためです。」

「そうか。それならオウルベアを討伐しているのも頷ける。とりあえずカティアの森の外に、オウルベアが出て来ていない事が分かって安心した。」

 緊張していた空気が一気に緩んだ。オウルベアの生息地まで把握してなかった。申し訳ない事しちゃったな。


「今日登録したばかりの新人が持ち込んだと聞いて驚いていたが、実力はありそうだな。本来はFランクスタートだが、オウルベアや他の魔物の討伐で実力は分かった。冒険者カードをCランクに変更させるから、帰りに受付に寄ってってくれ。」

「いきなりC!?」

 大河君が叫んだが、私も同様に叫びそうだった。


「オウルベアの討伐推奨ランクはBだ。流石にいきなりBには出来ないが、実力ある冒険者を下位ランクにしているのは勿体無いからな。」

 中々に実力主義派のギルド長だった。Fランクからコツコツ上げるのも楽しいけど、これはこれで嬉しいな。



 ギルド長にお礼を言ってから、退室する。カードのランク上げと買取してもらったお金を受け取る為に、受付へ向かう。


 受付に居るのは、さっき叫んだ受付嬢だった。他の受付は空いてるかと見回すが、どこも空いてない・・・。


「さっきは叫んでしまって、ごめんなさぁい。ランクの話は聞いてますぅ。」

 相変わらずの甘ったるく話しながら、Cランクへの変更手続きをする。仕事は一応出来るみたいだけど、この話し方ばかりは慣れないな。


「それとこちらが買取代金です。白金貨1枚と金貨が24枚です。」

「「「「白金貨!?」」」」

 私と陽菜ちゃん、大河君、優斗君の声が揃った。

 オウルベアってそんなに高額だったんだね!?嬉しい誤算!これならしっかり買い物が出来る!


 ウキウキ気分で冒険者ギルドを出る。さてさて、まずはどこに買い物しに行こうかな。

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