第62話 猫耳お姉さん

 商業ギルドへ向かう道中、陽菜ちゃんはずっとご立腹だった。その後ろをトボトボと歩く大河君と優斗君。何と微笑ましい事か。

「桜、ニヤけてるぞ。」

 ヒューゴさんに指摘されるまで気付かなかった。危ない危ない。


 商業ギルドは海の近くにあった。建物はシューレ王国の市役所っぽい作りとは違い、異国情緒溢れた一風変わった外観だった。

 建物の周りには屋台が立ち並び、活気に溢れている。

 良い香りに釣られて、お腹が鳴った。全員の。


「私がレシピ登録してる間、皆は屋台巡りして食べながら待ってて!すぐ終わらせて、合流します!」

「「「はーーーい!!!」」」

 良いお返事!この匂いには抗えないよね。



 ヒューゴさんに3人の事を頼み、私は商業ギルドへの受付へ。

「こんにちわ。本日のご要件は何でしょうか?」

 受付のお姉さんは、猫耳の可愛い獣人さん。

「レシピの登録をお願いします。こちらは見本です。調味料なんですが、こちらのきゅうりに付けて試してみて下さい。」

 3回目ともなるとさすがに慣れたので、レシピと見本+きゅうりを渡す。

「畏まりました。暫くこのままお待ち下さい。」

 見本ときゅうりを持って、猫耳お姉さんは奥に入っていった。


「うみゃーーーーーー!!!」

「うっっっま!!!何だこれ!!!」

「これは売れるぞぉぉぉぉ!!急いで手続きして来い!!!逃すな!!!」

 ギルド内をボーッと眺めながら待っていると、中から叫び声が聞こえてきた。最後の人の圧が凄い。ちょっと逃げてみたい。


「大変お待たせ致しました!素晴らしい調味料でした!すぐに登録させて頂きますね!」

 先程の叫び声は無かったかの様にスルーし、猫耳お姉さんが手続きをし始めた。きっと最初の叫び声は、このお姉さんだね。


「桜さんはレシピ登録に慣れてるご様子でしたが、他にも何かレシピを登録されてるのですか?」

 これはあれですか。情報を引き出そうとされてますか?お耳がピンと立ってるので、分かりやすい。


「この国では無いですが、何度か登録はしてますよ。」

「やっぱり!きっと凄く美味しいレシピなのでしょうね!」

「ええ、美味しいレシピですよ。」

 お互いにっこり笑って、うふふあははと笑い合う。面倒臭い事になったら嫌なので、そう簡単に情報は漏らしませんよ。



「そうだ!口座の残高を調べて貰えますか?少し引き落としたくて。」

 これから色々入用かもしれないし、手元に少し置いておきたい。収納に仕舞えば、嵩張らないしね!


「畏まりました。えーと・・・白金貨6枚、金貨43枚です。いくら下ろされますか?」

 思ってた以上に増えていて驚いた。やっぱり皆美味しいご飯が食べたかったんだね。

 白金貨3枚を下ろし、無くす前に鞄にしまうフリして収納する。


「本日はありがとうございました!また新しいレシピを是非お待ちしております!!」

 帰り際猫耳お姉さんに、しっぽをピンと立てながらお礼を言われた。相当マヨネーズが気に入ったんだね。




 商業ギルドから出たら、MAPで皆を探す。お腹が空いて力が出ないよ。早く美味しいご飯が食べたい!

 皆は屋台の近くに置いてあるテーブル席に座って、ご飯を食べてるところだった。

「終わったよー!お腹空いたよー!」

「桜さんお疲れ様でした!」

「桜さんとコタロウとリュウのご飯、買ってありますよ。」

「わーい!ありがとう!!」


 どんな料理があるのかな。ワクワクしながら見てみる。

 焼貝、魚のカルパッチョ、魚の塩焼き。海が近いから海鮮が豊富だね。


 コタロウとリュウにもこっそりあげつつ、私は魚の塩焼きを頬張る。皮はパリッと、中はふっくらとしていてすごく美味しい!

 焼貝も醤油が垂らしてあって、香ばしい香りが堪らない。いくらでも食べれそう。

 カルパッチョもサッパリしていて、食べやすい。


 いやー沢山食べた!食べすぎた!!満足です!

 男性陣はまだ足りないらしく、追加の料理を買いに行った。私と陽菜ちゃんは食休み。

 お土産に魚を買って帰ろう。煮付けやお刺身も食べたいな。

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