第60話 桜

 ここに来てから、コタロウとリュウがとても生き生きしている。2匹が外を自由に走り回ってる間に、私は素振りをする。

 もちろん危ない目にあっていないか、MAPでの確認は怠りません!


「桜さーーーん!!!桜が!!桜が!!!」

「桜さん!!!あの桜は一体!?!?」

「異世界にも桜って咲くんだな。」

 桜を見て驚いたらしい3人が、大慌てでやって来た。桜桜聞いてると、私の事なのか染井吉野の事なのか分からないな。


「陽菜ちゃん、優斗君、大河君おはよう!見事な染井吉野でしょ!神様に頂いた桜の苗を植えたら、あっという間に大きくなったの。」

 二度と見る事はないと思っていた染井吉野に、3人も目を奪われている。


 暫く4人で桜に見惚れていると、アンナさん達もやって来た。

 昨夜の事情を説明すると若干顔を引き攣らせてたけど、私達の嬉しそうな顔を見て笑っていた。




 ガインさんが準備してくれた朝食を食べながら、今日の予定を話し合う。

 ちなみに本日の朝食は、サンドイッチと野菜スープ。サンドイッチは、柔らかパンに好きな具材を挟んで食べる形式。私は苺ジャムサンドと、ハムとレタスをたっぷり挟んだレタスサンド。

 皆が好きな物を好きなだけ挟んで食べられるので、このバイキング形式が大好評。


「今日はダンジョンに潜る時に必要な物を、買いに行きたいです!あと魔物素材を売りたいです!」

「となると、商業都市ハンメルが品揃えは良いな!ここからなら、歩いて5日ってところかな。」

「転移で行けます!」

「・・・この便利さに慣れていいのだろうか。」

 アンナさんとヒューゴさんが遠い目をしている。

 電車や車といった移動手段のないこの世界で、転移は本当に便利な魔法だね!


「せっかくでしたら、冒険者登録された方がよろしいかと。身分証も手に入りますし、魔物素材の査定と買取もしてますので、丁度良いかと。」


 さすがクレマンさん!例え居場所がシューレ王国にバレたとしても、あの国から商業都市まではかなりの移動日数が掛かるだろうし遭遇する事はないはず。

 私は商業ギルドの身分証があるけど、せっかくなので冒険者ギルドでも作る事にした。


 ハンメルへ行くのは、冒険者未登録の陽菜ちゃん、優斗君、大河君、ヒューゴさん、私の5人。コタロウとリュウは街中なので、影に入っててもらう。

 アンナさんとガインさんは、騎士を辞めた時に登録したらしい。

 クレマンさんは職業柄・・・らしい。あまり深く突っ込むのは止めておこう。


 皆がハンメルへ行く準備をしている間に、MAPを少し変えられないか試してみる事に。

 今のMAPは悪意があるか無いかでしか判別できない。なので、もう少し詳細に分かるMAPが作りたい。


 まずはマーカーの形を、人、魔物、その他で分ける。色は通常が青色、悪意・攻撃性有りが赤色、神々は金色。あとは私が知っている人や魔物の名前は、マーカーの上に見える様にイメージして、MAPスキルを発動する。


 うん!上出来!思い描いた通りのMAPが出来上がった。これなら誰か大河君が迷子になったとしても、すぐに見つけられるね!


 ついでに商業ギルドで、レシピの登録をしようかな。シューレ王国だけが、食の発展をする事は許しません。


 そうと決めたら、急いで見本を作っておこう!

 卵、塩、酢を入れて混ぜる。そこに少しずつ油を入れては混ぜ、入れては混ぜを繰り返し、もったりしたらマヨネーズの完成!煮沸消毒した瓶に入れておこう。


 さてお味見お味見!きゅうりをスティック状にして、マヨネーズに付けてパクリ。

 これこれこれ!もっと早くに作っておけば良かったな。カロリー気にして損したかも。


「まーた何か作ったね?それは何だい?」

 さすがアンナさん!目敏い!

「マヨネーズという調味料です!野菜に付けても食べても美味しいし、色んな料理に使えるんですよ!」

「味見て良いか?」

 ガインさんも新しい調味料に興味津々ですね!


 2人がきゅうりにマヨネーズを付けて食べると、目を見開いた。

「「生の野菜が美味い・・・。」」

 確かに生野菜は、種類によっては青臭さを感じて苦手な人も多いよね。きっとマヨネーズも売れることでしょう!


 ガインさんにレシピを伝えると、早速作ってみると意気込んで厨房へ行ってしまった。

 アンナさんも興味があるのか、ガインさんに付いて行く。味見のし過ぎにはご注意を!



 皆の準備が整い集まり出す頃には、私もレシピを書き終える事が出来た。

 換金用の魔物素材とオウルベアを収納から出し、大熊亭の台車に乗せれば準備完了。

 いざ商業都市ハンメルへ!

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