第57話 初戦闘

 ダンジョン攻略をしたいと話した翌日、まずはこの森にどんな魔物がいるか調べつつ、ダンジョンの場所を確認しに行く事になった。


 出発する前に、皆の武器を確認。アンナさんの斧が大きすぎる。ギムルさんのお店で売ってた斧より倍以上大きい。


「アンナが大熊と戦った時、攻撃を受けてる大熊が踊ってるように見えた衝撃から、宿屋の名前を付ける時に、【 踊る大熊亭 】にガインが決めたらしい。」

 とヒューゴさんがこっそり教えてくれた。それは大熊が手も出せずに、一方的にやられてたって事ですよね!?アンナさん恐ろしい。


【武器】

 アンナさん・・・巨大な戦斧

 ガインさん・・・大盾・大身槍

 ヒューゴさん・・・大剣

 クレマンさん・・・細剣

 大河君・・・長剣

 優斗君・・・杖

 陽菜ちゃん・・・杖

 私・・・ギムルさんの剣

 コタロウ・リュウ・・・爪と牙


 まずは様子見の為、先頭からアンナさんとガインさん、大河君と私、コタロウとリュウ、陽菜ちゃんと優斗君、最後尾がクレマンさんとヒューゴさんの2列の布陣で進む事になった。


 私にとっては生まれて初めての戦闘。それも相手は魔物という事で、非常に緊張していた。

 うん。緊張してたんだよ、さっきまでは。目の前で繰り広げられる圧倒的な蹂躙劇に、緊張は吹き飛んだ。


 最初に遭遇したのはトレントの群れだった。MAPで確認しないと木とトレントの区別がつかない私とは違い、アンナさんはトレントが動くより前に、巨大な戦斧の残像さえも見えない速さで、トレントのみを切り刻んでいった。

 夥しい数の木ざ・・・トレントは、私の収納魔法にしまってある。これから拠点を作っていくのに、かなり役立ちそう!


 次に遭遇したのはコカトリスという、巨大な鳥の魔物。尻尾は蛇の頭が付いていて、噛まれると石化するらしい。

 このコカトリスと相対したのはガインさん。見つけた瞬間飛び込んでいき、目にも止まらぬ速さの突きで眉間を貫き瞬殺した。

 盾を使って防ぎながら戦う為の盾持ちでは!?

 駄目だ。この2人は参考にならない。ちなみにコカトリスは、今夜の晩ご飯になる予定。



 アンナさんとガインさんが無双しながら暫く進んでいると、2本の角が額から生えた人型の魔物の群れが前方に見えた。鑑定結果、魔物名はオーガ。

 向こうはまだこちらに気付いていない。


「そろそろスッキリしたし、皆も戦ってみようか!戦うのは初めてじゃないんだろ?」

 今までの戦闘は、アンナさんの鬱憤晴らしだったらしい。姐さん流石です。

 アンナさんの言葉に頷く陽菜ちゃん、大河君、優斗君。そして首振る私。


「えっ!?桜戦った事ないのにこの森に来たわけ!?」

「逃げる為には仕方なかったんです!多分。あと多少は戦えると思います!多分。」

 ああぁぁぁ。皆の避難の目が痛い!


「・・・・・とりあえずコタロウとリュウには桜を守ってもらって、陽菜達のフォローはあたし達がするから、思い思いやってみようか。よし!行くぞ!」


 アンナさんの掛け声で皆が走り出した。

 最初に着いたのは大河君。飛び込んでいき、袈裟懸けに斬りかかるが浅い。逆上したオーガが大河君に殴り掛かるが、陽菜ちゃんの防御魔法で弾かれ、優斗君が風魔法で足を切り落とす。バランスを崩して倒れたオーガに大河君が止めを刺す。

 ダンジョンで戦闘経験のある3人は、ちゃんと連携して戦えてる。


 アンナさん達は、陽菜ちゃん達が囲まれないように、オーガを上手く誘導しながら倒していってる。

 ヒューゴさんやクレマンさんも余裕がある。流石だね。



 そろそろ私も初めての戦闘に挑戦しよう!色々な戦闘パターンは考えてはいたけど、今回はギムルさんの剣を使おう!


 MAPでオーガの位置を再確認し、群れの後方へ転移。後ろからオーガの足を切り落とす。剣の斬れ味が鋭すぎる。全く抵抗なく、スッと斬れた。骨・・・あるよね?

 バランスが崩れたところで首を刎ね飛ばす。

 また違うオーガの後ろへ転移し、今度は最初から首を狙う。骨の抵抗がない。

 ギムルさん何て剣作ってくれたんだ。ありがとう!


 その後も、転移・斬る、転移・斬るを繰り返し、途中からコタロウとリュウも参戦。

 私の影に潜り、転移と同時に飛び出しては別のオーガを倒して影に潜る。という私と同じ戦法を取った結果、3倍速で殲滅作業が進んで行った。


 そして気付いた時には、全てのオーガが地に伏していた。

 皆が怪我してないか周りを見回すが、誰も怪我してなさそう。返り血で血塗れだけど。


 ホッと一息ついていると、アンナさんが走って来た。

「桜ーーー!あんた戦えるじゃないか!驚いたよ!!ちょっと暗殺者っぽかったけど。コタロウ、リュウとの連携も良いね!」

 背中をバシバシ叩かれながら褒められた。嬉しいけど痛い。


「桜の剣は、もしかしてギムルの?」

「そうそう!あの時約束してた通り、ギムルさんが想像通りの剣を作ってくれたの!こんなに斬れ味が鋭いとは思わなかったけどね。」

 ヒューゴさんはあの時のやり取り見てたし、誰が作ったかすぐ分かるよね。


「オーガの肉は食えない。角と魔石だけ取ったら燃やすぞ。」

 そう言いながら既にガインさんはオーガを捌いていた。やり方が分からなかったので、私はガインさんが捌いてる所を暫く観察する。中々にえぐい。


 皆で手分けして解体した結果、角106個、魔石が53個も手に入った。

 とりあえず私が収納し、後で換金してから皆で分ける事に。


 オーガを燃やし、魔法で出した水で手を洗った後、再び森探索を開始。ダンジョンまではあと少し。気を引き締めて行こう!


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