第56話 過剰戦力パーティー結成

 大熊亭に戻ると、丁度2階から大河君と優斗君が降りて来る所とかちあった。2人共まだ眠そうに目を擦ってる。

「さっき悲鳴が聞こえた気がする・・・。何かあった?」


 私からは非常に答えづらい質問です。こういう時は、本人達に丸投げするに限る!

「後でガインさんかヒューゴさんに聞いてみて?」

 深く追求されるのを防ぐために、不思議そうな2人を置いて厨房へ逃げよう。


 朝食を作ろる為に厨房へ入ると、アンナさんと陽菜ちゃんが朝食を作ってくれていた。チーズ、ベーコン、目玉焼きが乗ったパンケーキと、サラダがワンプレートに盛り付けてあって、見た目も綺麗で凄く美味しそう!

コタロウとリュウの分も、ちゃんと作ってあるのが嬉しい!


 紅茶と一緒にテーブルに並べると、皆が席に着いた。

 いつの間にかボロボロのガインさんとヒューゴさん、にっこり笑ってるクレマンさんも温泉から帰ってきている。


「「「「いただきまーす!」」」」


 パンケーキ美味しーい!目玉焼きにナイフを入れると、トロリと零れる絶妙な焼き加減の半熟具合が堪らない!

 皆も無言で黙々と食べている。美味しいと無言になるよね!


「そういえば、さっき外から悲鳴が聞こえたんだけど、何かあった?」

「「・・・・・・・・・・」」

 勇者大河君がさっきの質問をヒューゴさんとガインさんにすると、2人が青ざめながら震え出した。


 そこにクレマンさんが、さっきあった出来事を全くオブラートに包まず伝えた結果、般若が2人も現れた。

 アンナさんは無言でガインさんを外に引きずって行った・・・。

 ヒューゴさんは陽菜ちゃんとクレマンさんから、懇々とお説教されている。

 それを見ている優斗君と大河君は、見に覚えがあるのか苦笑いしていた。

 あ、ガインさんの悲鳴が聞こえた気がする。気の所為って事にしておこう。




 1時間後・・・ボコボコになったガインさんと、笑顔のアンナさんが帰って来た。

 ヒューゴさんもお説教からは解放されてるけど、陽菜ちゃんに罰としてやらされていた正座のせいで足が痺れたもよう。今は大河君と優斗君から足をツンツンされて悶絶している。

 私はその光景を見ながら、2匹ともふもふタイムを満喫していた。


「そろそろ昨日起きた出来事への説明をして頂けますかな?」

 クレマンさんに言われるまで、すっかり忘れていた。すみません。


 クレマンさんが紅茶を淹れてくれてる間に、皆が席に着く。

 ふわりと紅茶の良い香りが漂う中、皆に順を追って説明を始める。


 ・テオさんが喧嘩の仲裁で、最近増えてる荒くれ冒険者に腕を斬られた事。

 ・温泉の効能で、どんな傷でも治る湯が作れた事。

 ・私だとバレないよう聖職者に変身して、テオさんに薬を飲ませた事。

 ・薬を渡す時に、創造神様から貰ったと言った事。

 ・先にこれらの事があった為、王様への不信感を募らせる小芝居をうった事。理由は単なる嫌がらせ。


「テオの腕を治してくれたのは、桜だったのか。感謝する。俺達はテオの腕を斬ったやつを、裁くことさえ出来なかった。」

 ヒューゴさんが悔しそうに、手を握りしめている。

 テオさんと仲良かったから、余計に悔しい思いをしたんだろうな。


「桜は単なる嫌がらせのつもりだったんだ!アッハハハハハ!!!」

「少なからず、エールランドへ戦争をしかける時期は、大幅に遅れるだろうな。」

「???」


 良く分かっていない私に、アンナさんが説明してくれる。

 シューレ王国から帝国へ行くには、

 ①カティアの森を通り抜ける。

 ②北に迂回し、アマリア聖王国領内を通らせてもらう。

 ③南に迂回し、魔道都市エテルネ領内を通らせてもらう。

 この3つが考えられる。


 しかし①は凶悪な魔物が蔓延るこの森を、大勢の騎士団で通り抜けるのに、相当数の犠牲が出ることになる。下手すると全滅もありうる為、現実的ではない。


 ②と③は、中立の立場を取っている聖王国と魔道都市を、王国側の味方へ引き入れなければならない。

 特に聖王国は大本命。最近めっきり力が衰え、周りの国に徐々に領土を取られ、国力低下が著しい。


 だけど今回の事でアマリア聖王国は、王国の味方になる事が絶望的になったと言える。何故なら聖王国の信仰する神は創造神。その遣いに手を出そうとした王国の味方になる事はありえない。

 だから今後王国は魔道都市を味方に付ける為に動くのが、最有力だろう。との事。


 この世界の事情に疎い私でも、理解することが出来た!

 あれ?何か忘れてるような・・・。



「それで何故桜様は、カティアの森に転移されたのですか?」

 それだ!クレマンさんはいつも、核心をついてくれるからありがたい。


「王国が簡単に手を出せない場所というのもだけど、せっかく異世界に来たんだから、ダンジョン制覇をしてみたいな~と・・・。」

「俺もダンジョン行きたい!!!」

 すかさず大河君が賛成してくれる。


「あははははははっ!!!桜は慎重なのか、大胆なのか分からないな!だけどあたしも久しぶりに身体を動かしたくなって来た!」

「アンナが行くなら俺も行く。」

 アンナさんが何故か大笑いし、参戦してくれた。解せぬ。

 そしてブレないガインさんが付いてきた。

「2人と共闘出来るのは何年ぶりだ!楽しくなってきた!!」

 意外にもヒューゴさんがノリノリで参戦!


「それでは私も、老体に鞭を打つ事にしましょうか。」

 クレマンさんは絶対に老体では無いと思います。


「私も頑張ります!」

「陽菜は戦闘参加じゃなく、後方支援だからな!?」

 陽菜ちゃんと優斗君も参戦!すごく豪華なパーティーが出来そう!私の出番あるかな。

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