第55話 可能性は∞

 朝起きたらアンナさん、ガインさん、ヒューゴさんが屍のようになっていた。どうやら昨夜飲み過ぎたらしい。もちろんクレマンさんだけは、平然としていた。もう超人にしか見えない。

 3人の前に、レモンと蜂蜜と塩少々を混ぜたお水を置いておく。脱水症状起こさないように、水分はしっかり取りましょう。


 私は陽菜ちゃん、コタロウ、リュウと一緒に温泉へ。陽菜ちゃんがワクワクしてて可愛い。


「桜さん!この温泉が美肌効果のある温泉なんですね!」

「そうだよー。陽菜ちゃんにはまだ必要ないかもしれないけど・・・。」

 10代のスベスベ肌が眩しい。

「そんな事ないですよ!この世界に来てから、スキンケアも出来ないし、髪もパサついてきてて・・・。」


 確かに、私も髪の毛も軋んでる気がする。全然考えてなかった・・・。女子力・・・。

 とりあえず隣に美肌・美髪の効能のある温泉を作る。薄いピンク色の温泉が出来た。鑑定結果も、ちゃんと美肌・美髪の効能!


「陽菜ちゃん美髪の効能も追加したから、こっちの温泉に入ろう!」

「キャーーー!嬉しいーーー!」

「俺も入る!」「僕も入れてー!」


 ザッパーーーン!!!


 コタロウとリュウも飛び込んできた。ちなみに2匹のサイズは、温泉に入る時はワンコサイズになってもらってる。

 2人と2匹でキャッキャウフフと楽しんでいると、まだ青い顔をしているアンナさんが裸で現れた。

 全体的に筋肉が引き締まった身体に、出るとこはしっかりと出ていて・・・くっ。


「アタシも入れて~~~。」

「ギャーーー!アンナさん、今入ったら余計に悪化しますよ!!」

「えぇぇぇぇ・・・・。多分大丈夫。」


 多分大丈夫って、絶対大丈夫じゃないやつだ!!

 そうだ!二日酔いが良くなるような効能付けられないかな。酔い醒まし?それはちょっと違うか。


 何かヒントがないかとアンナさんを鑑定してみると、【状態異常:二日酔い】と表示された。

 二日酔いって状態異常なの!?でもそれなら作れるかも!

 状態異常回復の効能を付けた温泉をイメージしてスキルを発動すると、隣に濃い緑色をした温泉が出来た。


「アンナさんはこっちの緑色の温泉に先に入ってください!」

「分かった~・・・。」

 こんなに覇気のないアンナさんは初めてだよ。


 アンナさんが緑色の温泉に入ると、顔色がみるみる良くなっていった。

「治った!桜治ったよ!!ありがとう!!」

 アンナさんが凄い勢いで抱きついてきた。よっぽど辛かったんだね。

 でも今は私が、その凶器の様な豊満なお胸様によって死にそうです。



 私が死にそうになってる事に気付いた陽菜ちゃんが、アンナさんを止めてくれなかったら、今頃は間違いなく創造神様の元に戻ってたな。

 温泉から上がり、まずはコタロウとリュウの毛を乾かす。美髪の効果か、ツヤッツヤのふわっふわ!極上の手触りにもふもふが止まりません。


 続いて私の髪を乾かしていると、青い顔したガインさんと、土気色の顔をしたヒューゴさんがやって来た。ヒューゴさんが死にそう!?


「桜・・・頼む・・・俺らにもアンナが入った湯に、入らせて貰えないか?」

 もちろん良いですよ!と言いかけて、少しだけ考える。今後も使うのであれば、女湯と男湯は分けた方が事故が起こらないのでは?

 そう考えた私は、大熊亭を挟んだ反対側に、男湯を急いで作る事にした。


 男湯を作る予定地までヒューゴさんを支えながら向かう。

 まずは目隠し用の壁を作り、その後に状態異常回復の温泉を作る。隣に一応疲労回復効果のある温泉も作っておこう。


「出来ましたよ!ってギャアアァァァァァァァァァァーーーー!!!!!!!」

 振り向くと既に、ガインさんもヒューゴさんも脱ぎ始めていた。

 慌ててその場から逃げ出したけど、私の悲鳴に気付いたコタロウ、リュウ、クレマンさんが駆け付けてくれた。


「どうした桜!!」

「桜ちゃん大丈夫ー!?」

「驚いただけだから、大丈夫だよ!」

 コタロウとリュウをもふもふして癒される。本当にびっくりした。


「・・・・・・・・・・・・」

 クレマンさんが不穏な空気を纏いながら、いつもの笑顔で男湯へ入っていった。


「「ギャーーーーーーーーーーー!!」」


 クレマンさんの鉄拳制裁が入ったのかな。止めに入ろうか悩んだけど、男湯はやっぱり入れません!

 止まない悲鳴を聞きつつ、コタロウ・リュウと一緒に大熊亭に戻る事にした。

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