第53話 エールじゃないよ、ラガーだよ

 もうとっくに夕飯時を過ぎている。さっきからずっとお腹が鳴ってて、少し恥ずかしい。お風呂はご飯を食べてからにしよう。


「とりあえず一度大熊亭へ戻って、ご飯を食べましょう!残り物で申し訳ないですが、ハンバーガー作りますよ!」

「「「ハンバーガー!!!」」」

 陽菜ちゃん達が食いついた。やっぱりジャンクな味が恋しくなるよね。そうだ!温泉でアレ作れないかな!


 大熊亭近くの1m四方の地面を、私の腰位の高さまで盛り上げる。その地面にキンキンに冷えたコーラが湧き出る、小さな温泉をイメージしてスキルを発動する。

「出来たーーー!!!」

 念の為鑑定してみる。【コーラが湧き出る冷泉】効能は、美味しくて元気になると出た。温泉スキル最高すぎだよ!!!


「桜さんそれはもしかして!?」

 大河君が1番に食いついた。

「そう!コーラだよー!やっぱりハンバーガーにはコーラだよね!」

「うおおおぉぉぉ!マジか!もう飲めないと思ってたコーラがここに!?」

「マジだよー!分かる、分かるよ大河君!」

 2人で大はしゃぎしてしまったけど、陽菜ちゃんと優斗君も嬉しそう。


「もう何から突っ込めば良いのか分からない・・・。」

 あ、そうだった。ヒューゴさんには何も説明せず巻き込んで、しかも連れて来ちゃったよ。


「あれ?そういえば何でヒューゴがここに居るんだ?」

「アンナ達に危険を知らせに行って、そのまま成り行きで・・・。」

「逃げ遅れたの間違いだろ。」

「うるさい!良いんだよ!!あのまま残った所で、どうせ牢獄行きだ。それにこっちの方が楽しそうだったしな。」

「桜の美味い飯が食いたいだけだろ~。」

 アンナさんとガインさんに、ヒューゴさんがからかわれている。やっぱりヒューゴさんは、どこに居てもヒューゴさんだね。




 そろそろ2匹を呼び戻さなきゃ。

(コタロウ!リュウ!ご飯だから、戻っておいで!塀で囲っちゃったから、迎えに行くね!)

(いや大丈夫!)

(桜ちゃんはそこで待っててー!)

 2匹の声が聞こえたと思うと、塀の上から飛び降りてきた。この高さを飛び越えられるの!?うちの子達すごすぎない!?


 でも他にも乗り越えてくる魔物がいるかもしれないな・・・。そもそも飛んでる魔物は普通に入れるし。

 ま、おいおい修正していけばいっか!


 コタロウとリュウが戻ってきたので、ハンバーガーとコーラを速攻で準備し、少し遅めの晩御飯を食べる。

「「「「いただきます!!!」」」」

 陽菜ちゃん達が久しぶりのハンバーガーとポテト、それにコーラのトリプルコンボで、ノックアウト寸前だ。

 コタロウとリュウも美味しそうに食べてる。


「エールよりシュワっとしてる。少し甘いけど、これはこれで美味いな!」

 アンナさん達にも概ね高評価してもらえた。そうか!コーラより大人はお酒だよね!


 慌てて大熊亭の外へ出て、コーラの時と同じように土を盛り上げる。そこにキンキンに冷えたビールの湧き出る小さな温泉をイメージする。コーラの時とは違い、温泉から直接ジョッキに注げるようタップも付ける。

 細かいイメージだったけど、優秀なスキルが想像通りの冷泉を作ってくれた。

 鑑定結果も問題なくビールだったので、4人分ジョッキに入れて持っていく。ちなみに今夜の私は、コーラ祭りです!


「お待たせしましたー!大人はやっぱりこっちですよね!」

 アンナさん、ガインさん、クレマンさん、ヒューゴさんの目の前に、ビールのジョッキを置いていく。


「エール?でも色が少し違うような?」

「うっま!エールとは違うが、スッキリしていて飲みやすいよコレ!」

 そうエールではなく、ラガービールです!のどごし大事だよね!


「大変美味しゅうございました。」

「・・・・・・・・」

 クレマンさんとガインさんは、飲むペース早くない!?

 しかもガインさんの姿が、大型犬がお耳とシッポ垂れて、しょんぼりしてる姿にしか見えない!

「ガインさんおかわり出来ますよ?」

「!!!」

 おおぉぉぉ!ここまでガインさんの表情が変わる所を、初めて見たかもしれない。


 結局4人共おかわりしたいという事で、どうせならとタップの使い方を説明しておいた。飲み過ぎないか心配だけど、大人だし大丈夫だよね!・・・・・大丈夫かな。

 

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