第51話 脱出2

 転移で大熊亭へ戻った後変身を解き、すぐにマップで建物の周りを確認する。今のところ敵意のある人は居ない。

「ふぅ~~~。」

 ホッとして思わず息を吐くと、周りから説明を求められる視線を感じた。

 はい、分かっております。説明させて頂きます。


「色々聞きたい事があるとは思うのですが、まずは紹介させて下さい。」

 陽菜ちゃん・大河君・優斗君と、アンナさん・ガインさんをそれぞれに紹介する。


 そして陽菜ちゃん達には、こうなった経緯を説明しながら、陽菜ちゃんの髪を魔法で乾かす。もちろん騎士団が来てないか、マップで確認することも怠っておりません。



「それで桜様、先程の能力は一体・・・。ステータスを得られたのですか?」

「あ、はい。実は・・・・・・。」

 孤児院の礼拝堂で創造神様の神像に祈り、神々に会った事。その時にステータスと能力を貰った事。そして・・・・


「遅くなりましたが、ご紹介しますね!私の大切な家族の、コタロウとリュウです!」

 その瞬間、影から2匹が飛び出してきた。


「コタロウだ。よろしく。」

「こんにちわー。あれ?こんばんわかな?ま、いっか!僕はリュウだよー。よろしくねー!」

 2匹の姿を見て陽菜ちゃん達が手をワキワキしている。うんうん。分かるよ。モフりたいよね!


「なっ!?あれは聖獣フェンリルか!?」

「ですが毛色が少々違うかと・・・。」

 アンナさんとクレマンさんが驚きと、若干警戒している。

「・・・・・・可愛いな。」

 !?ガインさん意外すぎる。でもうちの子達は可愛いから魅了されても仕方ないよね!


「この子達は、私が元の世界で一緒に暮らしてた家族なの。創造神様が魂をこの世界に連れて来てくれて、神様達が身体と能力を授けて下さった、特殊個体の聖獣フェンリルです。危険はないのでアンナさん、クレマンさん、そんなに警戒しないで大丈夫ですよ!」


「すまなかった。あまりに強そうな気配だったのでつい。」

 アンナさんが頭をかきながら謝ってくれた。

「かしこまりました。コタロウ様、リュウ様、これからどうぞよろしくお願い致します。」

 そして優雅に一礼する。クレマンさんは誰にでも物腰が柔らかいけど、本当に暗殺部隊長さんなんだよね?見えない。



 その時マップに、猛スピードで大熊亭へ近付いてくる人が見えた。敵意はないけど、誰だろう。


 ガチャッガチャッ

「あれ!?開かない!?」


 ドンドンドンドンドン

「アンナ!ガイン!いるか!おいっ!!」


 ガインさんが鍵を開けると、ヒューゴさんが立っていた。

 ヒューゴさんは中を見回し、私やクレマンさんや陽菜ちゃん達の姿を確認し、安心したのかその場にしゃがみ込んだ。


「クレマンが動いてくれるとは思わなかったが、そうか・・・無事で良かった。いや!まだ安心するのは早かった!今すぐここを離れなければ!もうすぐ第一騎士団と第二騎士団が総出でここへ来る!桜、アンナ、ガイン。お前らを連行する為だけにだ!」

 寄りにもよって2つの騎士団総出って。何を考えてるんだか王様は。


 ヒューゴさんのセリフを聞いたアンナさんとガインさんは、何やら不敵に笑い合い武器を背負い出した。

 コタロウとリュウも、不穏な空気を纏っている。

 クレマンさんは微笑んでるけど、その手に隠し持ってるのは暗器ですよね!?

 はいはいはいはい。そこ!焦らない!何で皆やる気なの!?


「待って!!戦いませんよ!逃げの一手です!」

「だけどこの状況じゃ、誰かが活路を開かないと逃げられないだろ。」

「開かないで!?」


 おっと!そんな事言ってる間に、団体さんご到着ですよ!

 私はテオさんに薬を渡した時の、聖職者の姿に変身する。

「とりあえず一芝居打ってくるので、皆はここで待機。危ないので、絶対に大熊亭から出ないで下さいね。」

 皆に釘を指し、いざ寸劇の地へ。

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