第50話 脱出1
考え込んでいた私に気付いた3人に、これからどうするか相談しよう。でもその前にまずは確認しないとね。
「アンナさんとガインさんはこの後どうする予定ですか?」
「この後とは?」
「今夜にでも王様から、何かしらの接触があると思うんですよ。大量の騎士を派遣し、強制連行。もしくは秘密裏に拉致させる・・・とか?なのでその前に私は逃げたいと思っています。アンナさんとガインさんはどうされますか?」
私の言葉にアンナさんが、何時にもなく真剣な表情になる。
「私はこの国が好きだが、あの王は心底嫌いなんだ。だから私もこの国を出ようと思う。付いて行っても良いかい?桜といると楽しそうだ!」
「アンナさん・・・嬉しいです。一緒に逃げましょう!」
この世界をまだまだ知らない私達だけでは、この先心元なかったから、頼りになる姐さんが一緒で正直有難い。
「アンナが行くなら、俺も行く。」
ガインさんの世界は、アンナさんを中心に回ってるんだね・・・。
「桜様。私も御一緒させて頂きたく存じます。」
優雅に一礼しているクレマンさん。え!?一緒に!?
「おいおい。クレマンまで来るのかよ。暗部の連中はどうする気だ?」
「情報収集の為に、各地に放とうかと。」
「なるほどな。元々あいつらは現王ではなく、お前に忠誠を誓ってるわけだし、お前が城を出るならあいつらも出るわけだ。ハハハッ。これはちょっと面白くなってきたな。」
何が面白いのか分かりませんよ!?しかもクレマンさんが来るのは、決定事項なんですね!?
何となく申し訳ない気持ちでいると、クレマンさんがいつもの穏やかな顔で微笑んでくれた。
「桜様が気に病む必要は一切御座いませんよ。元々あの王の元で働く気は無かったのです。ですがアンナとガインが一気に辞め、落ち着くまではと周りに懇願されたので居たまで。そろそろ辞めようと思っていたので、むしろ良い機会でございました。」
良い機会と言って貰えるならと快諾です!
お城でいつも側に居てくれて、優しくしてくれたクレマンさんが居てくれるなら、とても心強いし嬉しい!
「すぐにでも出発しよう!」
「あ、それはちょっと待って欲しいです。」
アンナさんの提案を、思わず即却下してしまった。
「どうせなら、あの王に一泡吹かせたいので、アンナさん達は今後の食料の買い出しをして大熊亭で待っていて貰えますか?クレマンさんは荷物を準備して、大熊亭に来てください。」
「?そんなに荷物を持っては行けないだろうが、準備は必要だな。分かった。桜は?」
「私は大切な友人達を迎えに行ってきます!その後はちょっとした小芝居をする予定なので、笑わないで下さいね!」
3人が不思議そうにしているが、今は詳しく話してる時間は無い。
とりあえず
転移した先には、お風呂に入っている陽菜ちゃんが居た。
「陽菜ちゃんお風呂中にごめん!桜です。」
慌てて顔を背けながら、陽菜ちゃんに声をかける。
「桜さんこんな
「それが緊急事態が発生してね、今夜この国を出る事になったの。だから陽菜ちゃん達を迎えに来たの!心強い味方も一緒だよ!転移で連れて行くから、お風呂から上がったら部屋で待ってて。荷物はそのまま置いていって。何か仕掛けられてると怖いから。」
矢継ぎ早に説明する私に、緊急だと理解した陽菜ちゃんは静かに聞いてから、頷いてくれた。
陽菜ちゃんが部屋に戻っている間に、大河君と優斗君を連れて来よう。
まずは大河君の所へ転移。
部屋で筋トレ中だった大河君の目の前に転移したらしい。
「大河君、落ち着いて!桜です。緊急事態なので、すぐにこの国を出るよ!持ち物は置いて行くけどごめんね。」
「お、おう。分かった!」
説明も何もして無いのに、了承してくれた大河君に感謝をしつつ、優斗君の所へ転移。
優斗君は図書館?で本を読んでいた。突然現れた私と大河君に、思わず悲鳴をあげそうになった口を、大河君に塞がれている。
「優斗君突然ごめんね。桜です。緊急事態発生で、すぐにこの国を出る事なったの。持ち物は全て置いて行くよ!」
口を塞がれた優斗君は、コクコクと頷いて了承の意を示してくれた。
私はすぐにマップで陽菜ちゃんが部屋に戻っている事を確認し、転移する。
まだ髪が濡れたままの状態で、陽菜ちゃんは待っていてくれた。余程急いでくれたんだろうな。大熊亭に着いたら、乾かしてあげよう!
3人揃ったので、いざ大熊亭へ!
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