第44話 突撃
大熊亭へ戻り、ガインさんと夜の仕込みをしていると、以前ハンバーグの作り方を見学に来たマルコさんがやってきた。
「やぁ、桜!実は俺、ギルド直営店で副店長をやっているんだ!この前は伝えていなくて悪かったね!
今日は高難度のレシピについて教えて欲しくて、居ても経ってもいられなくてやって来たよ!」
んんん?技術指導するのは後日って話だったはずだよね?
私が困惑していると、バーンッッッ!!!っという爆音と共に、扉がすごい勢いで開け放たれた。扉の先には、鬼の形相をしたマリーさんが立っている。
「マ~ル~コ~!!!相手の都合も聞かず、勝手に突撃する癖どうにかしろっていつも言ってるでしょーが!!!」
「だってあのハンバーグレシピの開発者、桜の新作レシピだよ!?明日なんて待ってられないよ!」
「あんたの都合に振り回される身にもなれ
!!!桜さんに迷惑かけるな!!!」
何だか仲良しさん?2人の距離が近い気がする。ニマニマしそうになる顔を抑えるのに必死です。
「マリーさん大丈夫ですよ。仕込みはもう終わりますし、今日やること自体は簡単なんで。あとは毎日手をかけてもらう事が大切なので、私の酵母を見せながら説明させて貰いますね。」
「桜さん、本当に申し訳ありません!ありがとうございます!」
「ほ~ら大丈夫だった!マリーは心配し過ぎなんだよ!」
何とかマリーさんが落ち着いたところに、マルコさんが油を注ぐ。
マリーさんが噴火しそうになった瞬間、マルコさんの頭にガインさんの拳骨が落ちた。マリーさん鎮火。マルコさんは頭を抑えて蹲ってる。
「悪いな桜。こいつら幼なじみでな。自由奔放なマルコの世話を、マリーは焼きたいらしい。」
「お兄ちゃん!!!」
赤くなって必死な様子のマリーさん。ふふふ。可愛らしい。
「じゃあ早速作り方を説明しますので、厨房へどうぞ。」
そう言って厨房へ移動すると、さっきまで痛そうに蹲ってたマルコさんが復活。目をキラキラさせて付いてくる。とっても料理が好きなんだろうね。
厨房へ移動し、私が作った天然酵母を見せながら説明する。丁度数日前に仕込んだばかりの酵母もあるから、完成酵母と比較ができて分かりやすい。
説明が終わった所で、瓶とりんごと砂糖を渡す。瓶を煮沸消毒する所から一緒にやる。と言っても作業は簡単なので、あっという間に終わりました。
「何と言うか、思っていたより簡単ですね。」
拍子抜けした様な顔をしているマルコさん。
「そうなんですよ。仕込みは簡単なんです。完成するまでこまめに空気の入れ替えをしたり、寒い時期は暖かい所に置いたりと、手間ひまをかけて育てる事が大切なんです。」
失敗すると元気がなかったり、酸っぱい匂いがしたり、酷いとカビが生えるからね。
「なるほど、育てる・・・。面白い!元気な
私の言葉の何かが、琴線に触れたらしい。マルコさんが燃えている。
その後まだまだ話し足りなさそうなマルコさんを引き摺りながら、マリーさんは帰って行ったのだった。
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