第45話 不穏
アンナさん・ガインさんと相談した結果、ハンバーガーや柔らかいパンを売り出すのは、ギルド直営店が販売する日と合わせる事になった。また行列が出来ても困るからね!
それまでは天然酵母が足らなくならないように、毎日せっせと天然酵母作り。
そしてついに販売開始当日。大熊亭、ギルド直営店以外にも、パン屋さんやレストラン数店舗がハンバーガーを売り出す事となった。
事前に告知してあったので、ハンバーグの時程の混乱は無さそう。
大熊亭では今朝から宿泊のお客さんに、ハンバーガーを朝食に注文できるようにしていた。宿泊客は売り切れる前に食べられるという特典があれば、今後も宿泊客が途絶えないかなとの打算もある。
でもやっぱり何より朝から美味しいものを食べて、元気に1日頑張って欲しいよね!
そして食堂を開店する時間になった。オープンと同時に、多くのお客さんが御来店。満席とまではいかなかったけど、席の8割りは一気に埋まってしまった。
私はハンバーガー、ガインさんはフライドポテトという役割分担でせっせと作って、捌いていく。きっと今頃他のお店も大忙しだね。
ランチタイムも落ち着いてきた頃、レオさんが冒険者仲間を連れて、食べに来てくれた。
「よう!まだ新作って食えるかい?」
「レオさん!いらっしゃいませ!まだ食べれますよ。皆さんハンバーガーですか?」
「ああ。5人前よろしく!」
「はーい。すぐ作るので、席に座って待ってて下さいね!」
注文を受けてから急いで厨房へ戻ると、すでにガインさんが作ってくれていた。そのまま席まで運ぶと、何やら深刻そうな話をしている。
「なあレオ。このまま黙って耐え続けるのか?いつまで続くか分かんねーんだぞ!?」
「それによ、この国かなりきな臭くなってるのお前も分かってんだろ?」
「分かってるけどよ、長年拠点にしてたんだ。愛着もあるし、今からまた新たな拠点探すの大変じゃねーか。」
レオさんのパーティーメンバーさんが怒ってる。
「僕・・・もう耐えられないです。何で余所者に依頼も狩場も荒らされて、黙ってなきゃいけないんですか!?」
「あいつら街で騒ぎ起こして連行されても、次の日には大したお咎めなしで釈放されてんですよ!?」
「この前なんか、喧嘩の仲裁に入ったやつが斬りつけられて腕無くしたのに・・・それでもあいつらもう釈放されてて。
国から圧力かかってんのか、ギルマスも動いてくれないし・・・。」
「それは俺からもギルマスに掛け合ってみるから。」
こっちの2人は若いし、レオさんの後輩かな?どうしよう・・・料理を出しにくい。
私がオロオロしていると、見かねたのかガインさんがやって来た。
「お前ら昼間から管巻いてんな。そういうのは夜酒呑みながらやれや。1杯なら奢ってやるから、また夜に来い。せっかくの飯が冷めるだろーが。」
「すまねーなガイン、桜。また夜、酒飲みに寄るよ。」
レオさんが謝罪すると、他の4人も頭を下げる。ガインさんは手を振って、厨房へ戻って行った。本当ガインさんは頼りになるね!
「お待たせしました!ハンバーガーです!ガブッとかぶりついて食べて下さいね!」
5人の前にハンバーガーを置いて厨房へ戻る。
「「「「「美味っ!!!」」」」」
レオさん達は早速ハンバーガーにかぶりついてくれたみたい。
温かいうちに食べてもらえて、良かった良かった!
レオさん達が帰った後、アンナさんと交代で休憩に入る。私とコタロウとリュウのハンバーガーをこっそりGETし、部屋で食べながらさっきのレオさん達の話を思い返す。
この前、屋台街で見かけた冒険者みたいな人達がどんどん増えてて、元々居た冒険者の仕事も取られてるんだろう。
レオさんは不満を聞いたり、宥めたり、間に入ってて大変そうだったな。上級冒険者って中間管理職みたい。レオさんが特別面倒見が良いからかな?
「桜どうした?」
「眉間に皺が出来てるよー。」
コタロウとリュウが心配そうに、スリスリしてくる。一気に不安が吹き飛んで癒された。
「コタロウとリュウが側に居てくれるから大丈夫!」
もう少しだけ先の事に考えを巡らせつつ、2匹とゴロゴロしながら休憩を過ごすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます