第41話 夜這いじゃないよ

 潜入する前に、まずは目立たないように変身する。

 念の為、夜に飛べる鳥が良いな。黒色のクロワシミミズクにしよう。


 変身が終わった私を、コタロウとリュウが心配そうに影から顔を出して見ている。

「大丈夫だよ。転移でサッと行って、少し話して、サッと帰ってくるだけ。それに何かあったら、影から出てきて助けてくれるでしょ?」

「当たり前だろ!桜は」

「僕が守るーーー!」

 コタロウの言葉に被せてリュウが答える。コタロウ撃沈。


「コタロウもリュウもよろしくね!」

「おう!」「うん!」

 2匹をわしゃわしゃ撫でながら頼むと、嬉しそうに尻尾が揺れている。可愛い。



 さあ、いよいよ転移しよう。

 2匹が影に潜ったのを確認してから、陽菜ちゃんの顔を思い浮かべて転移。


 明るい室内に出た。マップで場所を確認すると、無事にお城の中。部屋の中は1人だけ。

 マップに写るお城の中は、赤丸があちこちで光ってる。うわぁ、お城の中は危険人物だらけだ。


 部屋の中を見回すと、ソファでお茶を飲みながら寛いでいる陽菜ちゃんが居た。私が現れた事に、全く気付いてないみたい。


 あれ?この部屋私が使ってた部屋と全然違うんですけど。ヘンテコな和室だった私の部屋とは違い、白とピンクを基調とした可愛らしい雰囲気の洋室。カーテンには小花柄が刺繍してある。多少違うんだろうなとは思ってたけど、ここまでとは・・・・・。


 気を取り直して陽菜ちゃんの近くへ転移。

「きゃっ!」

 悲鳴を上げかけた陽菜ちゃんの唇に、ソッと翼を添える。

「しーっ。桜だよ。陽菜ちゃん達の様子を知りたくて、クロワシミミズクに変身して来たんだよ。」

 一旦変身を解いて姿を元に戻すと、驚きながらも納得してくれた。


 とりあえず誰かに見られるといけないので、もう一度クロワシミミズクに変身する。

「本当に桜さんが、鳥に変身した・・・。魔法ですか?」

「そうなの!私にもステータスが出来たんだよ!」

 孤児院の礼拝堂で祈った後に起こった出来事を、陽菜ちゃんに説明する。


 一通り起こった事や、貰った魔法やスキルについて話終わると、陽菜ちゃんの目が輝いていた。

「桜さん!温泉スキル素敵です!!!」

「やっぱり!?今日1回入ってみたんだけど、疲れも取れるしお肌もツルツルになるしで、本当に最高だったの!」

 思わず力説してしまう。


「いーなー。私も入りたいけど、自由に城から出して貰えなくて・・・。桜さんが言ってた通り、遠征から帰ると桜さんは城から居なくなっていて。理由を聞いてみたら、桜さんが街で暮らしたいって言うから、希望を叶えたなんて言われて。何度か桜さんに会いに行きたいって言ったんですけど、全く聞き入れて貰えなくて・・・。」

 私から城を出るって言ったことにされてました。まぁ、予想通りだけどね。


 陽菜ちゃん達の遠征での話を聞いた後、街で聞いた噂について話す。

「お城の中はどう?何かそんな噂聞いたり、違和感を感じたりしてない?」

「そういえば・・・騎士さん達と訓練場で魔法の練習をしていたら、ガラの悪い人達が入って来て、騎士さん達に追い出されてました。装備も着けていたし、もしかしたら彼らが集められてる冒険者だったのかも。」


 お城の中にまで入れてるんだ。陽菜ちゃんが絡まれないか心配。

「陽菜ちゃん!お城の中でも、部屋から出る時は1人にならないように。何かあってからじゃ遅いんだから・・・気を付けてね?」

「はい!絶対1人にはなりません!桜さんありがとう。」


 しばらく陽菜ちゃんと楽しく話した後、大熊亭まで転移で帰る。

 私の話は、明日陽菜ちゃんから、大河君達に話してもらう事になってる。2人にも気を付けてもらわないとね。


 変身を解いてベッドに腰掛けると、コタロウとリュウが影から出てきた。

 2匹をブラッシングしてから、私も顔を洗ったり着替えたりして寝る準備を整える。

 今日は色んな事があって疲れたけど、陽菜ちゃんに会えて少し安心した。


 コタロウとリュウのもふもふに包まれると、自然と意識が沈んでいく。今夜は良い夢が見られそう。おやすみなさい。

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