第32話 初めて絡まれる
今朝も朝からハンバーグの仕込み開始!今日は照り焼きハンバーグにしよう。照り焼きソースは甘辛く味付けし準備完了。
天然酵母さんはこまめに空気を新鮮な空気に入れ替えてるし、エキスが少し濁り始めてきてる。うんうん、順調に育ってる!
天然酵母が完成したら、ふっくらパンを焼いて、ハンバーグと野菜を挟んでハンバーガー作りたい!ジャンクな味に飢えてきてる今日この頃。
仕込みが一段落した頃、アンナさんが困った顔で声をかけてきた。
「桜、ガイン、ちょっと良いかい?」
「どうしたんですか?」
「ちょっと外見てくれないか?」
そう言うとアンナさんが扉を指さした。一体外に何があるんだろう。
私とガインさんは顔を見合わせ首を傾げる。扉の外をそっと見てみると・・・。
「えっ!?」「っ!?」
そこには長蛇の列が出来てました。まだ開店前なんですが!?
「アンナさん・・・これって・・・」
「多分ハンバーグ目当ての客かな。すぐ売り切れるから、並んで待ってるんだと思う。」
地球では見慣れた光景だけど、この世界では見た事ないのですが!?
「そういう訳だからさ、少し早めに開けても良いかい?」
「こっちの仕込みは終わってるから大丈夫だ。」
「ハンバーグも大丈夫です!」
「じゃあ早速開店するよ!」
そんな訳でいつもより早めに開店。アンナさんの予想通り、注文はハンバーグ、ハンバーグ、ハンバーグ、ハンバーグ・・・・・。
お昼を少し過ぎた頃には200食が完売。
怒涛の注文ラッシュに、流石のガインさんの顔にも疲れが見える。これはどうにかしないと。後で2人に相談してみよう。
「売り切れってどういう事だよ!こっちはずっと待ってやったんだ!さっさと作れ!!」
ガインさんと一息ついていると、お店の外から怒鳴り声が聞こえて来た。アンナさんが絡まれてる!?
「ガインさん!アンナさんが!!」
慌ててガインさんの方を振り向くと、既に姿はなかった。
私も慌ててお店の外へ向かうと、怒鳴っていたらしき男はガインさんに取り押さえられていた。ガインさん素早い上に強い!
「いてててて!痛てーー!どけよ!大体毎回並んでもすぐに売り切れて食えねーし、準備不足のそっちがわりーんだろーが!!いててて!離せ!!!」
毎回並んでくれてたんだ・・・。それなのに食べられないんじゃ、そりゃ不満も溜まるし、切ないよね。多分彼だけじゃない。他にもきっとそういう人は沢山いるはず。でも、もうお肉がないんだよね・・・・・そうだ!
「ねえねえ、貴方は冒険者さん?」
「あん?誰だおめーは!いててて。急に力込めるなよ!痛てーって!!」
私の質問に答えなかった男に、ガインさんが更に力を込めたらしい。
「で?お前は冒険者か?」
「そうだよ!C級冒険者のイアンってんだ!ギルドでも騎士団でも通報しやがれ!」
自暴自棄になってるのか、男は名前まで教えてくれた。
「私は桜。いつもハンバーグ足らなくてごめんなさい。でもね、作りたくてもお肉がどうしても足らないの。そこでイアンさんに提案!C級冒険者って事は、結構強いんだよね?お肉取って来てくれないかな?」
「・・・・・はあ?」
「出来ればあまり臭みのない、柔らかいお肉が良いんだけど・・・無理かな?持って来てくれたらハンバーグが作れるし、お肉も買い取るよ。あっ!血抜きと解体もしてあると助かるな。」
私の提案にイアンさんだけじゃなく、ガインさんや周りで見ていた人達もポカーンとしている。
「あっははははは!確かに肉があれば作れるわな!でもまさかこの状況で普通言えないって!あはははは!さすが桜だよ!」
何故かアンナさんには爆笑されてるけど。
「・・・・・それくらい朝飯前だが・・・・そんな事で良いのか?」
イアンさんが困惑気味に、ガインさんを見上げる。
「良い肉持って来い。それでチャラだ。」
そう言いながらイアンさんを解放すると、ガインさんは宿へ戻って行った。
「暴れて悪かった!腹が減ってついイラついちまって。夜までには持って来る!」
イアンさんが頭を下げながら、謝ってくれた。
「持って来てくれたお肉で、夜はハンバーグ作るから期待してて!」
「おう!ありがとう!!行ってくる!」
言うや否やイアンさんが走って行った。急ぎすぎて怪我しないでねー!
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