第30話 言語を理解する

 気が付いたら元の礼拝堂に戻っていた。あまりにもそのままだったので、まるで白昼夢でも見ていたのかと思うくらい。


「夢・・・だったとかないよね?」

「お姉ちゃん夢がどうかしたの?」

「うん今ね、創造神様に会ったんだけどね、夢でも見てたかと思うぐらい実感が湧かなくて。」

「創造神様に!?すごーーーい!!」


 あれ?なんか違和感を感じる。

「桜さん言葉が!?」

 それだ!普通に喋れる!!やっぱり夢じゃなかったんだ!良かった~~~!


 小躍りしながら喜んでいる私を、驚いた顔で見ながらユリアナさんが聞いてきた。

「桜さんは先程、創造神様にお会いしたと言われてましたが、もしかして創造神様から何かスキルを頂いたのですか?」

「そうみたい。言語理解っていうスキルなんだけど、ユリアナさん知ってる?」


 他の能力はまだ検証してないし、能力についてはあまり他言しない方が良い気がする。

 けど急に喋れるようになった事で、遅かれ早かれ言語理解についてはバレるだろうし、言語理解については隠さないでも良いかな?


「聞いた事がないスキルです。かなり珍しいスキルかもしれないですよ。しかも創造神様から直接なんて・・・。」

 ユリアナさんが考え込んでしまった。あれ?珍しいスキルなの!?


 ここはボロが出る前に戦略的撤退一択!!!

「ユリアナさんそろそろお暇しますね。今日は楽しかったです!また遊びに来ますね。」

「あっ!考え事をしてしまい、申し訳ありません。こちらこそ美味しいクッキーをありがとうございました!また是非遊びにいらして下さいね!」


 ユリアナさんと子供達に手を振りながら、笑顔で慌てず、可能な限り急いで撤退する。

 何とか誤魔化せたかな?戻ってきた瞬間は現実味がなくて、迂闊な事言ってしまった気がする。気をつけなくちゃ。




 急いで大熊亭へ帰り、アンナさん達に挨拶をしに行く。言葉も話せる事になった経緯も説明しておこう。

「アンナさん、ガインさん、ただいま帰りました~!」

「!!??桜!?言葉が!?一体どうしたんだい!?」

「桜が流暢に喋ってる・・・。」

 アンナさんもガインさんも驚いている。


「孤児院の礼拝堂でお祈りをしたら、言語理解のスキルを授かったんです。そしたら急に喋れるようになって。」

 掻い摘んだ説明だけど、嘘はない。


「言語理解!?・・・桜あんたそのスキルについては、信用出来る人以外にあまり言わない方が良い。」

 アンナさんが急に真剣な表情になって、忠告してきた。そんなに珍しいスキルなのかな。少し不安になってきた。素直に聞いておこう。

 私はアンナさんに頷き、了承の意を示す。


「あっ!さっき孤児院の皆には話しちゃった。それにレオさんやギムルさんが、今夜歌を聞きに来るはずなの。どうしよう。」

 孤児院の皆も、ギムルさんやレオさん、ミレイユさんは私にとって信用出来る人なんだけど、話して大丈夫かな。


「その面子なら大丈夫だろう。客に詮索されないよう、しばらくは厨房の仕事だけにした方が良い。」

 ガインさんもいつもより少し緊張してる気がする。

「2人の忠告はしっかり守ります!心配してくれてありがとう。」


 私が思ってたより深刻なのかも。2人の空気がピリピリしてる。怒ってる感じではない。警戒してるのかな。何を?いや、今聞くのはやめておこう。もう今日は情報過多でお腹いっぱいです。

 夜まで休むことを伝えて、部屋へ戻ろう。



「コタロウ、リュウ、いる?」

「「ここにいるよ!」」

 本当だった!夢じゃなくて良かった!姿が多少違うくらい、全く関係ない。けどデカイな。

「抱っこ出来ない・・・。」

 私がしょんぼりすると、急にコタロウとリュウが縮んで、子犬くらいの大きさになった。


「大きさを変えられるの!?すごい!これで抱っこ出来る!」

 思わず2匹を抱きしめながら、ベッドの上でゴロゴロしてしまう。

 はぁ~幸せ~。夜までもう少し時間があるし、この幸せを今しばらく堪能しよう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る