第18話 子供達と歌って踊る

 ヒューゴさんに付き合ってると、いつまでもお店の中を見れないので、ミレイユさんに断って商品を見て回ることにした。


 陽菜ちゃん達にお土産買いたいな。それにお世話になったクレマンさんやリリーさん、料理長達にも何かプレゼントをしたい。


 お店の中も可愛いデザインで、やっぱり女性客が多い。

 ラインナップはアクセサリー、ポーション、日用品やちょっとした洋服なども売ってる。


 あ!陽菜ちゃんに似合いそうな、可愛いブローチ発見!

 リリーさんはこのヘアゴムとかどうかな。キラキラしててとっても綺麗!

 小物を見てるとワクワクしちゃうね!


優斗君にはアクアブルーの綺麗な羽根ペン。

大河君は懐中時計。

料理長さん達にはお揃いの手ぬぐい。

クレマンさんには刺繍が素敵なハンカチ。


 ヒューゴさんには何がいいんだろう。甘味しか思いつかない。

 本人にバレないよう、こっそりミレイユさんに相談してみる。

「ヒューゴは毎日酒飲むし、このグラスとかどうかしら?」

 こ、これは!江戸切子グラスでは!?綺麗な赤色のガラスに、繊細なデザインのグラス。きっと先輩案件だ。


「コレ カウ!ミレイユサン、アリガトウ!」

「ふふっ、どういたしまして。また良かったら買いに来てね。」

 そう言うと、ミレイユさんはパチリとウィンク。色気あるな~。羨ましい。

 プレゼントは全部で銀貨15枚でした。お金足りて良かった!




 お店を出たあとは、観光名所らしいミラー大聖堂を訪れる。

 バロック様式とかゴシック建築とかよく知らないけど、そんな感じの荘厳な雰囲気の教会。

 地球では海外旅行に行った事なかったから、何だか得した気分!


 中に入ると多くの参拝者の列が。

列の先には、美しい女神様の像が飾ってある。この世界の神様なのかな?


 ステンドグラスはないみたいだけど、ちょうど屋根の部分に嵌めてあるガラスから入る光が、女神像に当たっていて神々しい。本当にご利益ありそう!


 女神像も見られたし、そろそろ移動しようと大聖堂を出たところで、小さな子供達に囲まれた。何事!?


 私が呆気にとられていると、1人の女性が話しかけてきた。

「突然すみません。私はこの教会に併設している孤児院で、この子達の面倒を見ているシスター・ユリアナと申します。」

「コンニチワ。ワタシ サクラ。」


 ユリアナさんが言うには、一昨日市場に子供達と買い出しに行った帰りに、私の歌を聞いたらしい。

 けれど周りがすごい人で、子供達が危なくない離れた場所から聞いていた為、ダンスは見えず、歌も聞こえにくかったらしい。

 今度はしっかり聴きたいから、次はいつ歌うのかを聞きたかったと。


 ・・・そんなにキラキラした目で見られたら、おばちゃん照れちゃうよ。

 でも次はいつ出来るかなんて、確実な約束が出来ない。

 それなら今から歌っちゃおう!ダンスは簡単なやつじゃないと、筋肉痛で出来そうにないけど、歌ならいつでも大丈夫!



 というわけで、孤児院の庭へ案内してもらいました。

 さすがに大聖堂の近くで歌うのは迷惑だからね!さて何を歌おうかな。


 1曲目は教会にちなんで、アメイジング・グレイス。

 2曲目は一緒に手拍子で楽しめる曲。私の大好きな映画に出てくる歌を。

 3曲目は子供達が一緒に歌って踊れる曲にしよう。国民的アニメを女性グループがカバーしたあの曲。

 歌の構成も決まったし、歌う前のウォーミングアップもバッチリ!


 1曲目の賛美歌は、祈りを込めて。

 高音域も丁寧に、そして伸びやかに歌う。声量が落ちないように歌うのは大変だけど、綺麗に歌えた時の達成感は半端ない。

 子供たちやユリアナさんが、歌に聴き入っている。嬉しいな。


 2曲目は映画で賛美歌をアレンジし、POPに歌っていた曲。手拍子をしながら歌い始める。

 お!子供達が手拍子を一緒にしてくれてる。うんうん!楽しそう!


 3曲目は今までとはガラリと変わり、とってもPOPで元気な曲。ダンスも難しくないから、子供達も楽しそうに真似して踊っている。この歌にして良かった!


 歌い終えた後、ペコリとお辞儀をすると、割れんばかりの拍手がおこる。

 あれ?子供達やユリアナさんだけじゃない?

 教会の周りには、結構な人垣が出来ていた。


「お歌上手だったーーー!!!」

「おばちゃ「お姉さん」ん!すごく楽しかったー!!」

 お兄さんっぽい子がすかさず訂正した。子供に気を遣われてしまったよ。


「桜さん、感動しました!子供達に得難い経験をさせてあげる事も出来ました!本当に本当にありがとうございました!」


 ユリアナさんは感極まって泣き出してしまった。

 私が役得とばかりにヨシヨシすると、ユリアナさんは驚いたのか涙が止まり、とても神々しい笑顔で微笑んだ。

子供達のことを大切に育ててる、本当に素敵なシスターだね!


 私は子供達やユリアナさんに、たくさんのお礼と歌の感想を聞いた後、再開の約束をしてすぐにその場を去った。

 何だか教会の偉そうな人とか、貴族っぽい人とか見えた気がしたので、面倒な事になる前にとっとと逃げよう!

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