第17話 ヒューゴの評価

 厨房の皆との楽しい打ち上げも終わり、ヒューゴさんと街へ来た。

 一昨日は市場と屋台にしか行けなかったので、まだ見てない街の中を案内してもらう。

 本物の武器屋とか見てみたい!


 ヒューゴさんがまず連れて行ってくれたのは、元冒険者の店主とお弟子さんが切り盛りする、大きな2階建ての武器屋だ。

 どうやらヒューゴさん行きつけの武器屋さんらしい。


 扉を開けると、店の中は冒険者らしい人達で賑わっていた。

 1階はお弟子さん達が作った武器、2階がここの店主であるギムルさんが作った武器が置いてあるそう。


「邪魔をする。」

「お、ヒューゴの旦那。今日は武器の手入れで?」

おおー、何か常連さんって感じの会話だね。

「いや、今日は彼女に街を案内している。」

「旦那・・・女性を案内するのに、武器屋はないっすよ。」


 店員さんの言葉に、店内に居た他のお客さんからも、ヒューゴさんが可哀想な人を見る目で見られてる。

 私のせいであらぬ誤解をさせちゃったよ。


「ワタシ ブキヤ イク イッタ。ヒューゴサン アンナイ。」

 拙い!拙すぎるよ私!言語習得急務だよ!

「ああ、なるほど。姉さんが武器屋に来たかったんすね。旦那の事だからてっきり・・・

 ・・。」

「お前はどういう目で俺を見てるんだよ。」

 お、ヒューゴさんの素が出た!ここは本当に馴染みのお店なんだな。


 ヒューゴさんと店員さんが楽しげに話していると、小学生くらいの身長に、髭モジャモジャで筋骨隆々の男性が店の奥から出て来た。ドワーフだ!ドワーフ!!


「おう!何だか騒がしいな。」

「親方!ヒューゴの旦那が女連れて来たんでつい。」

「ヒューゴお前、武器屋はねーだろ。」

「いやだから・・・・。」

 そして再び説明。ヒューゴさんはどこに行ってもヒューゴさんだった。からかわれ属性とも言う。

 ん?親方さんに見られてる?気のせいかな?


「ガハハハハ。そいつは悪かったな!俺は鍛冶師のギムルだ。で、姉さんは冒険者かい?」

 ギムルさんの質問に、ヒューゴさんが言い淀む。


「ワタシ サクラ。シューレ キタ スコシマエ。シゴト ナイ。ヒューゴサン アンナイ。シンセツ。」

 カタコト説明難しい!!

「そうかい。もし武器が必要になったらいつでも買いに来な。俺が打ってやるからよ。」


 ギムルさんの言葉に店内がザワつく。

「おいおい。あのおばさん何者だよ。」

「どっかのお貴族様か?」

「いやいや!ギムルさんは貴族に金積まれたって、断固として打たなかったらしいぞ。」

「じゃああんな見た目で強いとか?」

 あんな見た目で悪かったな。言った人に視線を向けニコリ。

 あ、慌てて出て行った。微笑んだだけなのに。


「一昨日良い歌聴かせてもらったからな。その礼だから遠慮すんなよ?」

ギャーーーーー。聴かれてたーーーーー!

さっき見られてたのは、顔の確認か!!

 でもせっかくのご縁なので、機会があったらお願いしてみよう。


「ギムルサン、アリガトウ。」

「こっちこそありがとな!また歌聴かせてくれよ!」

 そんな風に言って貰えると嬉しくなる。歌とダンス、練習しておこう。



 ギムルさん達にお礼を言って店を出ると、ヒューゴさんは向かい側にあるお店に連れて行ってくれた。

 真っ白な壁に瑠璃色の扉がすごく綺麗なこのお店は雑貨屋さん。

手頃なアクセサリーから回復薬、何と日用品まで、ありとあらゆる物が売っているらしい。


「邪魔する。アレクいるか?」

 そう言いながらヒューゴさんが入っていった。ギムルさんより気安い感じがする。


「あら、ヒューゴじゃない。珍しい。それと私の名前はミレイユだって何度言えば分かるのかしら?」

「お前の名前は、生まれた時からアレックス・マ「ミレイユだっつってんだろ!」」

綺麗なお姉様から野太い声が!?


「ミレイユサン、コンニチワ。ワタシ サクラ。ヨロシク。」

 お姉様には逆らいません。私は空気は読める方だと思います。多分。


「桜様違いますよ。こいつは俺の幼馴染で、アレック「ミレイユです。異国の方かしら?桜さんよろしくね。」」

 ミレイユさんが、ヒューゴさんの口を手で塞ぎながら、ニッコリと笑顔で挨拶してくれる。ヒューゴさんはブレないね。


「それよりあのヒューゴが、武器屋じゃなく私の店に女性を連れてくるなんて!少しは成長したのかしら?」

いえ、先程武器屋には伺いましたよ。


「ここに来る前にギムルの店には行った。」

「ヒューゴ・・・、武器屋はねーよ。」

お姉様!素が出てますよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る