第16話 打ち上げ

 昨日は久しぶりに踊ったり、沢山歩き回ったりして疲れたのか、夕食食べてお風呂に入った後すぐに寝てしまった。

 おかげですっかり疲れも取れ、体調もバッチリ!筋肉痛は酷いけどね。


 夕食の天ぷら美味しったな~。

 お風呂場ではリリーさんに挨拶とお礼を伝えたら、何故か泣かれてしまった。リリーさんは感激やさんなんだね!


 今日も午前中に料理教室を開いたら、その後は街に行ってみようかな。

 朝のルーティンを終え今日の予定を考えていたら、料理長がパンケーキを持って来てくれた。料理長は私の担当で固定なのかな?


 牛乳とベーキングパウダーが無かったから、カントリー風のパンケーキになったけど、とっても美味しそう!

 蜂蜜と何かのフルーツのジャムが3種類添えてある。贅沢すぎる!


「イタダキマス。」

 今日もきっちり手を合わせてから食べる。

 おーいしーーーい!この朝食なら皆も喜んでるはず!

 今日も料理長にサムズアップすると、良い笑顔でサムズアップを返してくれた。


 パンケーキは甘くせず目玉焼きやベーコンを添えると、しっかりした食事にもなる事を料理長に伝えておく。甘い物が苦手な人でも食べられるし、メニューの幅も出るから腕がなっちゃうね!




 朝食の後は、料理長と一緒に厨房へ。

 今日は料理教室最終日!煮魚と玉子焼き3種の作り方をレクチャーしてから、私も厨房の片隅を使わせてもらう。


 プロの料理人である彼らが、単なる一般人のおばさんに料理を学ぼうなんて、普通なら思わない。もしかしたら国王の差金かもしれない。


 それなのに誰も文句一つ言わずに学んでくれた。美味しそうに食べてくれた。

 その事がどれだけ私を勇気づけ、どれだけ嬉しかったか、きっと彼らは気付いてない。

 だから昨日見つけた小豆ともち米で、彼らにお礼の料理を作ろう。お祝いといえばお赤飯が定番だよね!


 料理長達が煮魚や玉子焼きを作り終えた頃、ちょうど私の料理も完成したので、隣の食堂に移動して試食しながら打ち上げです。


「ニホン リョウリ ミンナ ツクル。トテモ ウレシイ!アリガトウ。ゴハン オレイ 。タベテ!」

 精一杯の言葉で伝えてみると、皆の瞳が潤っている。


「桜様。お礼を言うのは、私たちの方です。桜様が教えてくださった料理のおかげで、料理の新境地を開けました。本当にありがとうございました!これからも美味しいご飯を作っていきますので、桜様もまた何か気づかれた事があれば、何なりと仰ってください。」


 料理長の言葉にサムズアップすると、料理長も返してくれた。今のこの関係性がとても楽しいけど、多分私には時間があまりないと思うんだよね。

 分かってはいたけど、ちょっぴり寂しいな。


 少ししんみりしちゃったけど、いざ打ち上げスタート。

 これから忙しくなる時間帯だからあまり時間はないけど、料理教室最終日という事で、少しだけ楽しく騒ぎながら食べる。もちろんお酒は飲みません!


 本日の打ち上げメニューは

 ・赤魚っぽい魚の煮魚

 ・甘めの玉子焼き

 ・ネギ入り玉子焼き

 ・チーズ入り玉子焼き

 ・お赤飯

 ・お吸い物

 ・おはぎ3種(餡子、黒ゴマ、きなこ)


 和食だね!打ち上げっぽいメニューではないけど、皆で作ったんだからこれがいい!


 まずは玉子焼き3種を食べる。

「オイシーイ!焼き加減が絶妙!!」

 思わず日本語が混じるレベルで美味しい。

 玉子焼き大好きだから、美味しく作ってもらえて本当に嬉しい。


 次は煮魚をパクリ。初日に食べた煮魚が嘘のように美味しい!

「以前私たちが作った煮魚とは全然違い、とても美味しいです。」

 料理長やっぱりあの煮魚、美味しくなかったのね・・・。


 私が作ったお赤飯とお吸い物、デザートのおはぎも好評でした。もち米のモチモチとした食感に、あんこが絡むと堪らないよね!


 あれ?そういえば今日はヒューゴさんの姿を見てないな。

 もしやと思い振り向くと、食堂の片隅でしっかり見張られてました。


 私は今日も華麗にスルーし、きな粉のおはぎを食べる。

 あーーーん、パクッ。んーーー!美味しい!


「あのー桜様、ヒューゴが泣いておりますので、一緒に参加させてもよろしいですか?」

 料理長が堪えきれずに言う。

 そっか・・・後ろだから見えなかったけど、ヒューゴさん泣いてたのね。

「モチロン イイヨ!」

 私はニコリと笑う。

 ウソジャナイヨー。ホントダヨー。もう少し焦らしたかったとか思ってないよー。少ししか。


 その後満面の笑みでおはぎを食べるヒューゴさんを、皆で生暖かい目で見守りながら、打ち上げはもう少し続いたのだった。

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