第14話 異世界の街ラース 1

「ヒューゴサン、マチイキタイ。」

 私の唐突な言葉に、ヒューゴさんが言葉に詰まる。

「桜様、理由をお聞きしてもよろしいですか?」

「ワタシ ショクザイ ミタイ。」

「なるほど。桜様が新しい料理を作られるのに、城の食材では不足という事ですね。分かりました。ご案内致します。」

 実際は違うけど、良いように勘違いしてもらえて良かった。探索探索。


 街までは馬車に乗って行く。馬車初体験だよ。

 御者はヒューゴさんがするらしい。騎士さんは何でも出来るんだな~。

 馬車の乗り心地も、思ったより悪くない。これはきっと先輩勇者様の御業だね!


 想像以上に快適だった為、窓から外を見る余裕もある。

 しばらくすると、中世のヨーロッパ風の街並みが見えてきた。この街の名前はラースという名前らしい。

 海外旅行もした事がないから、テンション上がる~~~!!


 ラースにある騎士団の詰所に馬車を停めると、ヒューゴさんが馬車の扉を開けてくれる。

 私に手を差し出してくるんだけど、まさかエスコートってやつですか!?ひぃぃぃ。恥しいけど、手を取らないと失礼なんだろうな。

 ヒューゴさんの手を借り馬車を降りると、街は大勢の人で賑わっていた。


「桜様、どこに行きたいですか?」

「オナカスイタ。ゴハン、タベル。」

 色々見て回る前に、まずは腹ごしらえだよね!

「ではお店と屋台、どちらがよろしいですか?」

「ヤタイ!」

 屋台食い倒れツアーに決定!!!


 ヒューゴさんにエスコートされながら、屋台が立ち並ぶ場所へ到着。

 奥の方には市場もあるからか、とても賑わっている。


 早速屋台を見て回ろう。

 串焼き肉、シュラスコみたいなお肉をパンに挟んだ物、豆や野菜・肉を一緒に煮た物、ミートパイっぽい物、カップに入ったフルーツ、お饅頭etc.....ってお饅頭!?ここにも先輩の偉業が!食べたい物ばっかりだよ!


 ここで私は重要な事に気が付いた。

「お金が無い・・・・・。」

 そう、無一文。日本のお金は使えないし、さてどうするかな。・・・・・そうだ!


「ヒューゴサン、ワタシ ミセダス。ドウスル イイ?」

「桜様が出店されたいという事ですか?それはいつ「イマ」で・・・。」

 ついつい食い気味に答えてしまった。でも早くしないと、時間が無くなっちゃう。


「理由をお聞きしても?」

「オカネ ホシイ。カセグ。」

「それなら私が出しますので、大丈夫ですよ。」


 そう言うと思ったんだよね。でもそれじゃ駄目なんだよ。

 これから1人で生きて行く為には、自分の力で稼がなければいけない。でも説明してる時間が勿体ないな。


「オカネ ダス イラナイ。ワタシ ミセ ダス。オネガイ。」

 ゴリ押しの力技で行こう!

「ですが・・・」

「オネガイ。ジカン ナイ。ハヤク ハヤク

!!」

「・・・・・・・・はぁ。分かりました。」

 勝った!ヒューゴさんが折れた!


 出店申し込みはヒューゴさんに任せて、私は不用品の箱を貰ってきた。

 ヒューゴさんに【チップをお願いします】と書いてもらった紙を箱に貼ったら完成。

 場所は空いてる所ならどこでも良いらしいので、お店の邪魔にならない少し奥まった所に決めた。



 さてさて、やりますか!

「ラ~ラ~~ラ~~~。」

 うん!声も出てるし、喉の調子も良さそう。


 では最初はインパクトのある曲から。

 私が大好きだったアーティストさんの歌。力強く、それでいて伸びやかな旋律。歌詞は日本語だから意味が分からないだろうけど、メロディだけでも大丈夫だと思えるから不思議。


 突然私が大音量で歌い出すと、何だ何だと驚いた人達の視線を感じる。

 気にせす歌い続けていると、人が集まってきた。

 中には手拍子までしてくれてる人がいる。嬉しい。


 2曲目は踊りながら歌う。聴いてる人たちも踊りだした。楽しくなってきたー!


 最後は少しポップな曲を、これも踊りながら歌う。一時期かなりハマったドラマのエンディング曲。


 私が歌い終わり「アリガトー!」と言ってお辞儀をすると、割れんばかりの拍手が起こった。

 必死であまり周りを見る余裕がなかったけど、かなりの人が集まっている。

 チップもかなり集まっている。やったね!


 息も絶え絶えな私に労いの声をかけてくれる人、飲み物を差し入れてくれる人、フルーツを差し入れてくれる人・・・ありがたや。


 私が差し入れのフルーツを食べていると、ヒューゴさんがやって来た。

「桜様は歌も上手なんですね。驚きました。」

 気付かなかったけど、どこからか聞いてくれていたらしい。

「アリガトウ。ウタ ダイスキ。」


 決して上手いわけじゃないんけど、歌う事も踊る事も大好き。一人カラオケもよく行ってたな~。

それにこの世界にはないリズムやメロディだから、新鮮に感じて貰えたんだと思う。


 楽しかったし、喜んでもらえたし、軍資金も集まった!最高だね!今度こそ屋台制覇だ!!

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