第11話 料理教室
厨房に着くと、料理長が慌ててこちらに向かってくる。ガタイの良い、強面の料理長が走ってくる姿は、中々に恐ろしい。
「桜※※!※※※※※※※※!※※※※※※※※※※※※※!!」
料理長が私に向かって頭を下げている。
何で!?頭あげてください!どうしたら良いの!?
私が慌てていると、大河君が料理長に頭を上げるように言ってくれた。
どうやら料理長は、自分が無理やり頼んだせいで、私が秘伝の技術を嫌々教えに来たと思っているらしい。
そもそも秘伝の技術なんかじゃない。ごく一般的な料理だからね?
私がお城を出た後も大河君達に美味しいご飯を食べて欲しいし、何より日本食はもっと美味しいって事を知ってもらいたい!
大河君から料理長に説明してもらい、明日からも何日間か料理を教えに来ることになりました。
さてさて、誤解が解けた所で本日の料理教室スタートです。
まずは基本の白米の炊き方から伝える。
炊く前に水を給水させる事を忘れないように!
料理長達はやっぱり給水させてなかったみたい。炊く時の水の量も少なかったみたいだけど、今度からはもう大丈夫!
次に基本の味噌汁。出汁!これ1番大切!
あ、そう言えば昆布が無かったんだった。今度市場に直接探しに行ってみたいな。
とりあえず旨みが出やすくする為、煮干しを水に付けておく。
30分以上付けてから、じっくり火にかける。沸騰してきたら火を弱めて、アクを取りつつ5分程煮出せばいりこだしの出来上がり。後は味噌の量さえ間違わなければ大丈夫そう。
最後にメインは大河君リクエストのトンカツ!
豚じゃないかもしれないけどトンカツ!
筋切りをして、肉を叩く。肉叩きないから、包丁の背でガンガン叩く。
あ、皆何か引いてる?これは必要な工程です!
小麦粉、卵、パン粉、小麦粉、卵、パン粉と2度漬けしたら、少し馴染ませるために寝かせる。
油の温度が上がったら、きつね色になるまで揚げたらしっかりと油をきる。
付け合せにキャベツの千切りが欲しかったけど、とりあえずレタスっぽいものやグリーンリーフっぽいものでサラダを添えたら完成!
トンカツソースはウスターソースが無いから、味噌ダレにしてみました!味変で塩と醤油も準備。好みがあるからね。
1個試食用に切ってみると、サクサクと良い音。味噌ダレに付けて食べてみる。
「うん!美味しい!」
大河君と料理長がソワソワしてる。2人にも味見をしてもらおう。
「トンカツ美味っ!俺味噌ダレ初めてだけど、ご飯に合いそう!!」
「※※※※※※※!!!※※※※※※※※※※※※!!!」
料理長は何言ってるか分からないけど、相当興奮してるみたいだし、きっと美味しかったんだろう。
他の料理人さんからの、期待に満ちた眼差しが・・・。試食用まだ残ってるし、みんなも召し上がれ!
「「「「「 !!!!!!!! 」」」」」
ここまで感激してもらえると嬉しいな~。
あれ?どこからか視線を感じる。
後ろにそっと視線を向けてみると、ヒューゴさんが食べたそうに、じっとトンカツを見ている。
とりあえず見なかった事にしてみよう。
陽菜ちゃん達も、トンカツ喜んでくれるかな。
明日は何が良いかな~。マヨネーズやケチャップも欲しいけど、調味料にまでは、今はまだ手が出せない。
生活基盤が整ったら作りたいな。
ジーーーーーーッ
朝食のメニューも変えていきたいけど、パン種作ってたら間に合わないし。うーん。
ジーーーーーーーーーーーーーーッ
そうだ!パンケーキならどうかな。簡単なやつなら出来そうじゃない?蜂蜜もあるし。
あーワクワクしてきたーーー!
私がご飯についてあれこれ考えてワクワクしていると、トントンとヒューゴさんに肩を叩かれた。
「・・・桜※※、※※※※※※※※※※※※※※※。」
とても悲しそうに訴えかけてきた。これは通訳してもらわなくても分かる。食べたいんだよね。うん、知ってた!
何だかついついヒューゴさんって、構いたくなっちゃうんだよね。ごめんね!
ヒューゴさんにも味噌ダレを添えた一切れを、お皿に乗せて渡しニコリと笑ってみる。これで誤魔化せたはず!
「※※※※!!!」
幸せそうに食べてる食べてる。良かった!
普段無表情に徹してるヒューゴさんの表情が動くと、達成感が出るな~。
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