第6話 夕食
さあ、本日のメインイベント!異世界で食べる日本食のお時間です!
何が出てくるのかな。お肉かな、それともお魚かな。お米はあるのかな。あーもうワクワクが止まらない。
私がソワソワしながら待っていると、クレマンさんが食事を運んできてくれた。
「桜※※、※※※※※※※※。」
雰囲気的に、召し上がれって所かな。
「ありがとうございます。いただきます。」
本日のメニューは煮魚と白米に味噌汁、それと何故か目玉焼き。
あれ?何で目玉焼き?それに何だか結構庶民的なメニュー。いやいや、やっぱりお米に味噌汁があるんだよ!もうそれだけで最高だよ!早速食べてみよう!
まずはお味噌汁から。
ゴクッ
「・・・・・・・・・・。」
あれ?いやいや、まさか。まだ結論付けるには早い。煮魚も食べてみよう。
パクッ
「か~~~ら~~~~い~~~~~!!!」
え?えっえっ?嘘だよね。お米をパクリ。
「・・・・・・・固い。」
目玉焼きをパクッ。
「普通に美味しい。」
涙が出る。先輩勇者様が日本食を教えたんじゃなかったの!?何でこんな事になってるの!?
とってもとっても楽しみにしてたのに!
味噌汁は出汁を取ってない。
煮魚は醤油を入れすぎてて塩辛いし、臭みも取れてない。
お米は水が少なかったのか、芯が残ってて固い。
卵を割って焼くだけの目玉焼きが1番美味しいなんてあんまりだよ。
私が泣きながら黙々と食べ続ける姿に、ギョッとするクレマンさんとヒューゴさん。
食事は命を頂くということ。だから最後まで責任もって食べる事を信条としている私としては、いくら美味しくなくても残すという選択肢だけはない。
粛々と食べ続け、苦戦しながらも何とか完食出来ました。
「ご馳走様でした。」
手を合わせて食後の挨拶で締めくくる。
ふぅ。クレマンさんが入れてくれた食後の紅茶で癒される。
さて、これは大問題だよ。
まずこの日本食は、私への嫌がらせなのか、それとも本気なのか。
本気なのが1番困る。これから何を食べれば良いんだろう。
さすがにこの食事がずっと続くのは苦痛すぎる。自分で作っちゃ駄目かなぁ。
私が思い悩んでいると、バタバタと廊下を走る荒々しい足音が近づいてくる。
コンコンコンコンコンコン
若干強めなノック音に警戒しながら、ヒューゴさんが扉を開けると、そこには全力で走ったのか、息が切れて苦しそうなルイスさんと優斗君がいた。
「さ・・くら・・・さん、ハァハァ、夕食・・・ゼェゼェ・・・」
「優斗君言いたい事は分かったから、まずは息を整えて、紅茶を飲んで、落ち着いてから話そう。」
優斗君とルイスさんを椅子まで連れていくと、サッとクレマンさんが紅茶を出してくれた。有能執事!やっぱりセバスチャンって呼びたい。・・・駄目だよね。
2人は紅茶を飲んで一息つくと、やっと落ち着いたみたい。
それにしても優斗君の反応からして、あの日本食は本気だったんだ。
「落ち着いた所で、優斗君の話を聞こうか。何となく想像出来てるんだけどね。」
「桜さんも食べられたと思いますが、晩餐会に頼んでいた日本食が出てきたんです。何故か目玉焼きが付いた煮魚定食でした。」
あ、メニューが全く同じなんだ。晩餐会にはちょっと合わないと思うんだけど。
「お米は固くて、味噌汁は何か物足らなくて、煮魚は・・・・・」
「うんうん。分かるよ。期待していた分、辛かったよね。厨房を借りられたら私が作れるんだけど、さすがに厄介者扱いの私には貸してもらえ「是非貸してもらいましょう!」ないから。」
優斗君は食い気味に答えると、それまで黙って成り行きを見守っていたルイスさんに交渉を始めた。
そして即、厨房利用許可を取り付けた。
何この敏腕少年。優秀すぎ。
どうやら晩餐会で、3人共ろくに食べられなかったみたい。
簡単なものならすぐに作れると思うけど、今からでも厨房借りられるかな。
あ、借りられるかじゃなく、絶対借りると・・・。優斗君の圧が強い。
というわけでやって来ました、王宮の厨房です。
料理人さん達の目が怖い怖い。そんなに睨まないでください。美味しい日本食が食べたいだけなんです。
材料、調味料はどれ使っても良いように、優斗君→ルイスさん→料理長経由で交渉してくれました。
料理長とルイスさんは相当揉めてたみたいだけど、作っているところを料理長が監視・・・もとい、見ていることの条件付きで許可をもぎ取りました!ルイスさんに感謝!
「さて優斗君、何食べたい?」
「美味しいお米と、美味しい味噌汁が飲みたいです。」
「ふふっ、分かった。ご飯炊けるまで少し時間かかるけど待てる?」
「もちろんです!」
「じゃあ出来たら知らせるから、陽菜ちゃん達にも伝えてもらえる?」
「あっ!す、すぐ伝えてきます!」
日本食が衝撃的すぎて、すっかり忘れてたな。優斗君は慌てて走って戻って行った。王宮内は走っていいのかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます