第3話 ケーキ試食会

 今後の話や説明とか聞きたい事はたくさんあるけど、一旦休憩したい。陽菜ちゃん達も疲れた顔をしているし、焦ったって今の状況が変わるわけじゃなし。よし!休憩休憩!


 優斗君が交渉上手なので、彼に休憩したい事を伝えてもらうと、執事さんとメイドさん達がお茶やクッキーなどのお菓子を持ってきてくれた。

 皆がお茶で一息ついている横で、私は持っていたケーキを箱からだし、借りたフォークをホールのままのケーキへ向ける。


 本日のケーキは苺のショートケーキ。

 王道のショートケーキだからこそ、その店の技量が分かると言われる一品。ここのショートケーキはフワフワっとした生地に、甘さ控えめの滑らかなクリームと存在感を主張した苺をふんだんに挟んだ絶品ケーキ!上に飾られた苺はキラキラと宝石みたいに輝いている。

 開店から1時間で完売する程の大人気のショートケーキを、ホールのまま食べるこの贅沢!くぅ~~~!幸せ!!


 何だか刺すような視線を四方八方から向けられてる気がするけど、とりあえずスルー。疲れた体にはやっぱり甘い物だよね!染み渡る~。スポンジが口の中でシュワっと溶けるみたいに消えた。本当に美味しい。モグモグモグモグ・・・


「・・・ん。・・・くらさん。」


 上に乗ってる大粒の輝く苺!これがまた程よい酸味で、口の中が甘くなりがちな所をサッパリもさせてくれるから、いくらでも食べれちゃう!モグモグ・・・


「・・・桜さん!桜さん!!!」


 はっ!夢中で食べてて、名前を呼ばれてた事に全く気付かなかった。疲れていたんだから仕方ないよね。


「陽菜ちゃんどうかした?」


 私を現実に引き戻した美少女陽菜ちゃんに返事をする。

 陽菜ちゃんの視線に促され、周りを見回して初めて気がついた。大河君や優斗君、それに騎士さん達やお茶を持ってきてくれた執事さんやメイドさん達まで私を凝視してる。ちょっと端なかったかしら。


「ゴホンッ!」

 咳払いで誤魔化してみる。駄目かな。


「※※※※※!※※※※※※※※※※※!!」

 うん、だからそんな必死に何か言われても、私は言葉分からないんだって。


「桜さんのケーキ、とっても美味しそうですね。」

 陽菜ちゃんがケーキをじっっっと見つめながら言う。見つめられすぎて、ケーキに穴が開きそうだよ。


「絶品だよ!陽菜ちゃん達も食べてみる?」

「やったぁ~!食べたいです!」

「僕達も良いんですか!?」

「食べる!!!」


 3人とも食い気味に返事が帰ってきた。余程食べたかったんだね。最初から分けてあげる余裕もなく、気付くことさえも出来なくてごめんよ。


 メイドさんにお皿とケーキナイフを持ってきてもらい、手をつけていない所を切り分け3人に渡すと凄く嬉しそう。ふふっ、しっかり堪能しながら召し上がれ!


「「「いただきまーす!」」」


 大河君は豪快に、優斗君と陽菜ちゃんは大事そうに食べた瞬間。

「「美味しーーーい!!!」」

「うまーーーい!!!」

 3人から思わず叫び声が出る。

 うんうん!美味しすぎて思わず叫んじゃうレベルだよね!


 私も続きを食べよう。モグモグモグモグ・・・・・・・・

 うん、分かったから。スルーしないから。だからそんなに見ないで下さい。


 周りの視線に耐えきれず、残りの手をつけてない所を切って差し出すと、騎士さん・執事さん・メイドさんの総勢16人によるケーキ争奪戦勃発。

 今にも流血沙汰になりそうな気配を察知し、交渉担当に就任した優斗君が皆にジャンケンをレクチャー。


 その結果、何とか血を見ることも無く、ジャンケン勝負の勝者3人が驚きと幸せの入り交じった顔でケーキを堪能している。


 あ、負けた13人の目が死んでる。同じケーキは私には作れないけど、似たケーキが作れたら、今度は皆に食べさせてあげたいな。

 私も食べたいし、キッチンを使えるか、この後の話し合いで交渉してもらおう。優斗君ファイト!



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