fragment2 自治区 

 黄土をしずんでゆく 木靴のような東部をぬいでゆく

 ざらりときしむ頬を 着色された風が射撃体勢をうながす

 わたしたちのうちふかく 見えるもの全ては南部であろうとした

 動作に入ろうとする内モンゴルの人々 

 その影は みどりいろのパオにとけだしている

 若くしなやかな足の軸に からみつく砂嵐の情熱が込みあげて

 彼の体質を葉巻のようにくゆらす

 背の低い手動の風が 泥まみれのテントをわたる

 きみじかな笛の音をぬぐいながら そこには組みしおれた草原がみえる

 鉄条網の向こうに見える 遠目でおずおずと感光した非番のむすめたち

 その腰は 暮らしには使うことのない まっすぐな白い腿部といっしょに

 戦士への愛の数を夜ごと数えている

 激しい閃光とともに 押し殺した悲鳴がもれる

 具象の北辺 オルドスを感受しながら 自治区のとろける時制をさすってゆく

 羊の群れは 銃声に隊列をみだしつつも にぶくすすみでたまま

 行き場を求めて熱い眼を育てている

 黄土を朝方につづきから踏みだしてゆく 張りつめたいのちの松明は

 いまは飽和を迎えて 熟した微笑を縞模様に変えている

 これから幾度 侵略する狼の遠吼えを聞くのか

 それでも微動さえ拒むこの黄色い自治区は 弾圧に耐えつづける

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