詩集 オーパーツ
瑠璃光院 秀和
fragment1 愛の迷路
奪われようとして妖しく輝く港の目覚め
からだから湧き立つ蜜が塩辛い雨となって あいつのからだも濡らしたのに
あたしの磁力では あいつの貧しい漁船さえも遮ることが出来なかった
じゅてーむ なまめかしく夜宮が仮面の祭りを映し出していた日
引き潮が あたしとの別れを告げて あいつをさらっていった
くちびるが触れただけで 心が逝ってしまうくらい愛していたから
冷えたからだのために 風の匂いがする男に抱かれて 泣きながら
あいつのことを忘れた
もなむーる 干拓地で逢引きした昼下がり
耳を赤らめながら 沼のほとりまで あいつに引きずられて 水苔が
あたしの足先を溶かした
じゅてーむ けだものだって 眠れば夏の子供たちと同じ夢を見るというのに
銀幕の花嫁みたいに あいつと暮らすことなど 思うだけで
悲しすぎる 砂でできた一夜のお伽話だった
もなむーる しなやかに妻までも刺した指で煙草を咥えて あいつは監獄での傷ををかばう
もうすぐ死刑台を昇るというのに
嵐の海を越えても やはり果てしない血まみれの迷路が続いていた
じゅてーむ 雪が激しく降る港の夜
あたしの肌にもつれて 深く食い込むあいつの愛も
この雪と一緒に 一片の欠けらも残さず溶けてしまえばいいのに
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