第40話 その反応で会いたかった…。


朝食中に私はルークに見た夢の事を伝えた。

ルークも前世の記憶は遡って見ているようだと私と同じ様に勘づいたみたいだ。


目玉焼きにフォークを刺しながらルークは言う。


「前世は徐々に思い出すものだと思っていた。

まだ時間がかかるに思っていたのだが、熱で寝込んだせいか一気に思い出したんだな…。急に色々思い出して混乱しているんじゃないか…?大丈夫か?」


黄身がとろりと滴る。


ルークは器用にそばにあったベーコンと共に一纏めにして口に放った。

私はパンをちぎりながら口に入れて咀嚼し、スープを飲み口の中のパンと共にまるっと胃の中へ入れる。


「混乱…というかルークと一緒かも。

何で覚えてなかったんだろうって、後悔しちゃうね…。仕方ないのはわかるけど、そんな簡単に納得は出来ないね。ごめんね、ルーク…。」

「…いや、いいんだ。確かに仕方のないことなんだから。

それで、俺とどこまでいったかも思い出したって事でいいんだな?」


食べていたサラダが飛び出しそうになったのを無理矢理飲み込む。

喉に引っかかりそうになり水も飲み干した。


食事中にその話題を振るとは思わなかった。ルークの顔は真剣だ、やましい事は聞いていないのだろう。



「今の私から言う前前世と前世のルークと会った所はわからないけど…。最後から辿ってあれ以上いっていないのなら…どこまでいったのかは思い出した事にはなるね…?」


残り少ないサラダをフォークで集め、気恥ずかしくなりながら言った。

ルークはもう食べ終え、紅茶をひと啜りした後また切り出した。


「それを踏まえて聞きたかった。まぁ、ロティから先にしてくれたし、もう1度してしまったが…。」

「うん?」


「全て思い出したらまた聞くつもりだが…。

俺と…また生きてくれるだろうか。


出来れば前のように恋人として…。俺は…今度はきちんと夫婦になれればいいと思ってる…。」


朝から直球すぎる告白をされ顔に熱が篭る。


ルークは生き急いではいないが、ようやく会えた私と生きたいんだ。深い意味もあるんだろうが、また聞き直してくれたときにきちんと答えよう。

話の途中に食べ終え持っていたフォークを置きながら言う。



「朝食の会話じゃないような気もするけど……。

う…うん。少なくとも私もルークと同じ感情だと思うから…。ただ申し訳ないのだけど、全ての記憶が揃うまではまだちょっーと我慢して欲しいところはあるけど…。」

「それは分かっている。ロティの前世の関係を超えるまでのことはしない。きちんと教会に行って神様に誓うのも忘れていない。」


さすがルーク!と言いたいところだが、私の前世を超えるまでの事をしないって事は超えない程度はするって事なのだろうか。

それはどういう意味なのだろうと首を傾げる。


「話は変わるが、記憶の魔女に連絡をしておいた。

今は王都の隅の屋敷で暮らしているんだ。

王都なのにそこだけ森みたいになってる。」

「わー!!スザンヌに会えるの!?会いたい!!」


スザンヌを思うと積もる話が沢山出てくる。


前みたいにまた沢山話したい。

また一緒にお茶したり、ここは王都だから買い物なんかも行けるかもしれない。


この間までは記憶の魔女と聞いてピンと来なかったのに今じゃまるで違う。

スザンヌに会ったら飛びついて抱きしめてしまうくらいに会いたいのだ。

私は瞳を輝かせてわくわくしてしまう。



だがルークは苦虫を噛み潰したような顔付きだ。

ルークの顔を見て私はしょげる。


「スザンヌに会っちゃ駄目…?」


ルークは私から視線をずらし、言いにくそうにしながらも言葉にした。


「…俺の時もそれくらいを期待してしまったから複雑なだけ。いや、俺の事はとりあえずいい。


ロティが寝ている間に連絡したものだから今日明日に会えるかはわからないんだ。

また連絡しないといけないから王宮に行かなくてはならない。

記憶の魔女との唯一の連絡は王宮にある魔導具なんだ。

それ以外は魔女の家にも森にも結界が張ってあって自由に出入り出来るのは魔女本人だけなんだ。


それと言い忘れていたんだが、古代竜の交渉の褒美と称号を与えたいと連絡が来てるんだ。

ロティが寝ている間に手短に王宮へは行ったが、長居するのは気が引けてその時はすぐに帰ってきてしまった…。

褒美も称号も放棄でもいいかと思ったんだが、アレックスの連絡煩くて…。陛下もロティを連れて来いとしつこいし…。

後は…俺が宮廷魔術師団の仮団長でもあって、色々辞めるにあたって各所に連絡しなければいけないんだが、出来れば王宮に一緒にいって欲しいのだが…。」


私は血の気が引く。

寝ていたとは言え、王族を待たせてしまっていたのかと。


アレックスと言われた人が誰なのかはわからないが、ルークの知り合いなのだろう。

それに王宮の魔術師団と来た。


もう頭がキャパオーバーになりそうだ。




ーッジリリリリリリリリリリリリ!!



突然どこからか大きい音が鳴り出した。

私は驚いたがルークは溜息を吐き、席を立ち音の鳴る方へ歩いて行く。


どうやらキッチンの所に置いてあった金色の鳥の形の様な魔導具が鳴っているみたいた。


ルークは魔導具を手に取ると、魔導具は金色に光っていた。ルークはその魔導具に魔力を流した様で金色の鳥はみるみるうちに本物の生きているオウムになった。

そのオウムが突如羽を広げたと思ったらくりくりの目と嘴をかぱっと開ける。



【おはよ〜ルーク〜起きたー?俺は食事も終わったとこだけど〜調子はどうー?】

「アレックス、煩い。朝からかけて来るな。」


【え!?じゃあ夜ならいい!?一晩中話してようか?今夜は寝かせないよ…?】

「…ッチ!!用がないなら切る。」


【すぐ舌打ちするんだからー!エド!エド!!ルークがつれない!!ぇ?ぁ、はい。

ごめんごめんルーク!許してね!

まだ王宮に来れないかなぁー?って聞こうと思ってさ!

俺達はもう謁見も済ませたし、王宮に滞在するのも残り数日にしようかと話していたからさ。

俺達が王宮に滞在中に居るうちだったらルークも陛下と俺達にいっぺんに会えるでしょ?

ロティはまだ目が覚めないかな?】

「…まあ、そうだな。サイラス達には挨拶をせずに先に戻ってしまったから一度会いたい。

ちなみにロティはお前の馬鹿な話を先程から聞いている。勇者としてあまり恥をかかないようにしたほうがいいと思うが?」


【えー!!?ロティ起きてんの!?

猫かぶる暇もなかったや!ロティ聞こえる?勇者のアレックス・エズモンドだよ〜!えー!!

すっごくロティに会いたいんだけど!見てみたい!】

「ッッチ!!俺は明日王宮に行く。お前以外ならその後会うから伝えてくれ。じゃあな。」


【え!?ちょっ!ルー…】



オウムに流す魔力を切ったのだろう。

色鮮やかなオウムは羽を畳むとまた金色の鳥の形の魔導具に戻ってしまった。



ルークはどっと疲れた顔でテーブルまで戻ると私に頭を下げて話し出す。


「すまない…。王宮に明日行くと伝えてしまったから行こうと思う…。

ロティがどうしても嫌ならここに居て待っていても構わないがどうする?」


私は見開いた目と開いた口が塞がらず、ショート寸前の頭を必死に回転させた。

その結果。


「私も行く…?」しか答えが出なかった。

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