第39話 久々過ぎて上手くできているか心配ではある…。
次の日の朝。
私は目覚めると同時に目の前を見て驚いてしまった。
私の顔を隣でじっと見つめているルークと目がばっちりと合ったのだ。
ルークは飛び切りの笑顔を見せたが、どこか怒っているようにも見えた。
「…ロティ、おはよう。夜中1度目が覚めたと思うのだが、何故また眠らされたのかまず聞きたいな。」
原因はそれかと理解しながらも布団をずりずりと顔半分まで上げて隠しながら弁解する。
「だってルークの顔が隈が出来てたし、なんか疲れているようにも見えたから…。」
「ロティが3日も寝ていたからな。
初日に熱は下がっていたのだが、目が覚めないから心配で寝付きが悪かった。昨日誰かさんに回復魔法をかけられたから今はすっきりしているが。」
ルークの手が布団をすり抜け私の顔を触る。
暖かくて気持ちがいい。先程のどこか怒った様子もすっかり消えて優しい顔をしているルークを見つめ聞き返した。
「3日も寝てたんだ…。通りで沢山見るわけだ…。」
「…またなにか思い出した?」
私の答えを待つルークは早く続きが聞きたいようで気をはやらせていた。
だが私はルークの問いに答えず上半身を起こす。
それを見たルークも同じようにしようとした為、まだ手をベッドに着き体を支えている不安定のルークに狙いを定めた。
「えいっ!」
私は決意していた事を動かれる前に遂行しようと、ルークの頭に向かって抱きついた。
「っ〜?!」
勢いを完全に間違えてしまいルークと共にベッドに再び寝転がってしまう。
ルーキを下敷きにする形になり、多少抱きしめると形が違う事に気づいたが時すでに遅しである。
「完全に勢い間違った…。」
私の胸の下でルークは必死に何かを話している。
このままじゃ窒息しかねない為1度腕を頭から離してルークに覆い被さった。
「急にどうしたんだ!?」
ルークは顔を紅潮させて驚いた様子を見せる。
「えーと、抱きしめたくなって抱こうとしたら勢いを間違っただけなんだけど、ごめんね?3日も寝てたからか体がうまく動かなかったや?」
「え?いや、ん?どういうことだ?なにを思い出したんだ…。」
「ちゃんと話すよ。話すけど…。」
ルークの顔をじっと見つめる。
見つめられるのが恥ずかしいのか表情はたじろいでいる。
溢れんばかりの愛おしさでルークに擦り寄りたくなる。
抑えが効かなくなる前にと、私はいそいそとルークの上から退く。
再び起き上がるルークに今度こそはと、そっと身を寄せ体に腕を回した。
抱き返してくれるのを期待するが何もされないのが寂しい。ちらりとルークを見ると自分自身の顔を手で覆って、見える耳は真っ赤だ。
「ルーク…どうしたの…。」
「…それは俺が聞きたい。どうしてこうなっているのか…。ロティが積極的に朝から抱きついてくるなんて想像してなかったし、頭が追いつかない…。何を思い出したのか早く知りたいのだがっ…。
俺にこのまま襲われても文句言えないからな…。」
「ふふっ。」
ルークがこんなになるとは思わずつい笑ってしまう。笑ったことが癇に障ったのか、赤面の顰めっ面したルークは私を抱きしめ返してくれた。
その事が嬉しくてルークを見て微笑んでしまう。
「まだ全部思い出せないから、全て思い出した後なら文句は言わないと思うよ。今はこれで我慢してね。」
そう伝え、殆ど自分の欲であった軽いキスをルークにした。
ルークの唇から離れ顔を見ると、真っ赤な顔に涙目でわなわなと震えていた。
怒ってしまったのだろうかと思い私は一瞬にして焦る。
「ルーク」
「すまない!!ちょっとだけ1人にしてくれっっ!」
「きゃっ!?」
急に体が宙に浮き、布団ごと部屋の外に風魔法で浮かされ出されるとバタンと扉が閉まってしまう。
「お…怒らせた…?どうしよう…。」
抱きしめるまでは良かったみたいだが、キスは駄目だったのだろうか。
それとも私の行動に呆れたのか。
1人で考えても全く分からず、私はただ呆然と部屋の扉をじっと見つめていた。
10分くらい扉の前で待つが中々ルークは出てくる気配も音もない。寧ろ部屋からは何の音もしない為不安になったが、ルークを信じて待つ事にする。
とりあえず3日寝ていたという割には体は綺麗な状態ではあった。きっとルークが魔法で綺麗にしてくれたのであろう。だが夜中に泣いてしまったこともあるので、衣装部屋から服を持ち出してシャワーを拝借することにした。
◇◇◇
シャワーから上がり2階に行こうか迷ったが、キッチンの方から音がしたためそちらに向かう。
そっと覗くとルークは食事の用意をしていてくれていた。
(まだ怒ってるかな…。)
自然と眉が下がってしまう。
開いていた扉の陰からじっと見ているとこちらを見たルークが私に気づいた。一瞬気不味そうな表情が垣間見えたが、すぐに照れたような顔になる。
「ロティ…、さっきはごめん。食べながら話そうか…。」
「う、うん…。…わかった。」
私は隠れていた壁から離れルークの元に向かったが、ルークが眉間に皺を寄せる。
もしかして勝手に服やらシャワーを拝借した事も怒ったのだろうか。
私の服はナイトドレスではなく、ルークが用意していた白いワンピースを着ていた。
膝丈のフリルが柔らかくひらひらしている服で、首周りには白の糸で刺繍した花が散りばめられている。胸元の紐のリボンも可愛かったのでこの服にしたのだが、駄目だったのだろうか。
ルークの元に歩く足がぴたりと止まって俯いてしまう。涙まで出そうになる。
「ロティ、どうしたんだ?」
「どうしたもなにも…ルークがさっきから嫌そうな顔をしてるから…。そんなに嫌なら私出て行くよ…。元の服だけ返してもらうね。」
踵を翻し衣装部屋に戻ろうとするとルークは慌てて私を後ろから捕まえた。
「嫌なわけないだろう!勘違いしないでくれ!」
「だって、キスだって困っていたし今だって怒ってるじゃない…。」
私はこれ以上喋ると涙が溢れそうだ。
瞬きをしないようにぐっと力が入ると、ルークの溜息と共に私を抱きしめる腕に力が入った。
「違う、100年以上振りのロティからのキスに驚くなと言っても無理があるだろう…。
それに前だってそんなに多くはしていなかったのに……。
俺だってまだ早いと我慢していたし…。
この屋敷にあるものはロティのものでもあると言っておいただろう?
だから何を使うのも、着るのもいいんだ…。
そうじゃなくて…その服を着たロティが可愛かったから表情に出さないようにしたかったのが、かえって怒ったように見えたらしいな…。すまない。
似合ってるし、可愛い。こっち向いて、ロティ。」
涙目だったが、ゆっくりとルークに向き直るとルークは微笑みながらも困った表情で言う。
「俺をこんなに動揺させるのはロティただ1人だ…。
涙目で、上目遣いで可愛い顔して煽らないで…。
…もう1度キスしてもいい…?」
「いつでも私は煽ってないよ…。駄目って言っんっ」
話している途中で唇を塞がれた。
先程とは違う長いキス。
時々短く離れ唇を啄まれたり軽く噛まれ体がぞくりと震える。
惜しむように唇が離れるとまた抱きしめてくれた。
心地良い腕の中で少しいじけたルークの声が上から降り注いだ。
「…凄く我慢してるのだけは覚えておいて。」
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