第24話 朝から心臓は酷使しないように!


瞼に光を感じる。


ゆっくりと目を開くと見慣れないベッドカーテンが見えた。


(……。

どこ、だっけ…………。




!!ルークの家のベッドだ!!)


寝ぼけた頭をフル回転させて慌てて左右を確認する。


左側は30センチ位スペースはあるが、ベッドの端だ。

右側は大きく空いておりルークはいない。


体を起こし、部屋を見渡すがどこにもルークの姿は見えなかった。



(私寝過ごしたのかな…。)


そう思いベッドから抜け出す。


サイドテーブルに私が昨日来ていたカーディガンと時計と飲み物があったため、時計を確認する。


6時40分、まだ寝過ごしたという時間帯でもないだろう。



畳まれてあるカーディガンを手に取り着るが、ふと思い返す。


(私昨日カーディガン畳んだっけ?その前に脱いだっけ?)


思い出そうとするが寝落ちしてしまったため全然覚えていない。思い出せない事を考えているよりかは今はルークが気になる。どこにいるんだろう。



寝室から出て廊下を見る。


ここは2階のため、とりあえず昨日の1階のリビングまで行こうと思い廊下を進むと、階段の方から物音が聞こえ歩を早めた。



「あ、ルークいた。おはよ…って、なに…それ。」

「ロティ!おはよう。早いな、起きるの。」


ルークは私を見つけた瞬間満面の笑みを見せたが、私はそれどころではなかった。


階段下玄関ホールにいるルークの目の前には蔦に巻かれた大きな蛇が横たわっていた。

ぐったりしていて動かない。死んでいるのだろうか。首には首輪みたいな模様がある。


それとは別に驚いた事があった。

昨日玄関ホールに綺麗に整列していた甲冑が動いている。

蔦を切るもの、蛇を突くもの、仁王立ちするものと行動は様々だが、ガチャガチャと音を鳴らして動いている。


「ロティ、おいで。こいつはもう死んでいるから大丈夫だ。」


ルークが手招きしてきた為、私は階段を降りてルークの元へ向かった。

ルークの隣に立ち、蛇を見る。



「これ…どういうこと?」


太さは1メートル以上、長さはくねっていてわからないがとんでもない大きさの蛇だ。死んでいても恐怖を感じる。


「またあの女の召喚獣だ。

昨夜襲いに来たみたいだな。ご丁寧に玄関から。

こいつらがいるから襲撃は何も心配はしていなかったが、もうこの場所が割れているのには苛立つな。」

「こいつらって、この甲冑の人達?」


「人ではないな。おい、挨拶くらいしろ。」


そうルークが言うと甲冑の達は一斉に自分の頭の兜を取った。まるで帽子を上げて挨拶するような仕草で。


「ひゃ!?な、な、な、頭が!?」


あるはずの頭がない。というより中身がない。

咄嗟にルークの腕を掴んでしまう。


「この甲冑には精霊が憑いているんだ。

最も気性が荒くて自分が認める主人以外にはいう事を聞かず襲い掛かるようなやつらだが、ロティには危害を加えないよう言ってある。


先帝が俺に渡してきたものは自分達が難しく、扱えないから押し付けられたような者達だが慣れれば中々に使えるぞ。」

「そうなんだ…。よろしくね。甲冑さん達。ほかにもいるの?」


「この蛇に巻いてある蔦もそうだ。

壁に描かれている葉っぱと蔦の一部だが、侵入者をこのホールで止めるように言っている。

曰く付きの蔦達だったが、使い勝手がいい。


後は1番厄介なやつは今日は出番なしだったな。

あれが出ると俺も大変だからな。」


そう言ってルークは玄関の壁の大きな角を見た。

あれもなにかなんだろうか。恐怖で身震いしてしまう。

震えたのを察したのかルークは微笑んで言った。


「どれもロティには手を出さない。寧ろ守るよう言いつけているから安心していい。」

「そう、なんだね。わかった。よろしくお願いします。」


私が紹介された物達に頭を下げると、ルークからくすりと笑いが零れた。


「くすっ、丁寧だな。

腕を掴んでくれているし、このままエスコートしようか。」

「うん、どこにかな?昨日の部屋かな?」


私の返答にルークが目を丸くしている。

その顔に首を傾げた。


(ん?変なこといったかな?ん?んん?)


ふと自分自身に違和感を感じた。


「あれ?腕?」


ルークの腕を掴む私は昨日までこんなこと出来なかっただろう。そう考えるとパッと手を離して赤面してしまった。


「ロティ…?寝ている間にまた夢でも見たか?」


全力で首を縦に振り肯定した。頭の中が混乱する。


両手で顔を覆い、治るのを待とうとしたがルークがぐっと顔を近づけ手首を握って、手を取ろうとしてきた。


「…。何か思い出したのか…?…聞かせて?」

「っひ!朝から糖分過多で倒れる!その甘く言うのやめて!」


「糖分もなにもこれが普通なのだが。まだ甘やかしてすらいない。」


ルークの力が強く、顔から手が離れる。

若干涙目になっている私をルークが照れたような困った顔で見る。


「俺にとってはロティの方が甘くて堪らないんだがな。

食べたくて食べたくてしょうがない。」


ぺろっと唇を舐めるルークはまた獲物を狙っているような目をしている。

このまま頂かれるのも大いに困るし、凄く視線を感じてならない。



「ルーク!ルーク!ルーク!ストップ!

甲冑さん達にすっごい見られて恥ずかしいんだけど!!それに夢は見た!内容言うから座らせて欲しい!!」


私は赤面しながらも必死に伝えると、ルークは甲冑達の方を見る。


まるで乙女のように口に手を当てるような者や甲冑同士手を繋ぎ悶えに耐えるような者。

兜に手を当てて見ないように見ている者、自分の兜を取り、抱きしめている者もいる。


ルークは私の手首から手を離し、手を繋ぎ直した。


「お前達…。見せ物じゃない。蛇はやるから好きにしろ。」


そう言うと甲冑達は嬉しそうに敬礼した。


私はなんとか状況を変える事に成功したみたいだ。 

ホッとしつつもルークに手を引かれ昨日食事をした部屋のリビングへと連れて行かれたのだった。




❇︎寝落ちしたロティのカーディガンはルークが脱がせて畳んだ。昨晩一緒のベッドで横になったが、ルークはほぼ寝れなかった。

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