第14話 覚えていない前世の話?
ルークの隣に座る。
また手を取られたため、繋ぐのかと思いきや指と指を絡ませてきた。所謂恋人繋ぎと言うやつで。
お風呂上がりの体温に更に熱が篭る。
2人の間に手を下ろすとルークは話し始めた。
「さて、じゃあ話すけど。
これは俺の主観だから。それを踏まえて、長くなると思うけどとりあえず聞いて…。質問は俺のわかる範囲なら後から答える。」
「分かった。」
「じゃあ……話す。
俺とロティの出会いは前世じゃなく、その前の生、つまり前前世からの付き合いになる。
前前世では恋人だったが、一緒になる事を許されず共に死んだんだ。次の生は共に生きようと約束して。」
私はここで既に思いっきり突っ込みたいところだったがグッと留まり堪えた。
ルークは私の様子には気付かず、思い出を辿って話を続けた。
「そして前世、俺にとっては現在進行形だけど。
数年違いだが、同じ世に生まれた。
遅く生まれたロティは前世の事を覚えていたから俺の事探してくれたのだが、俺が前世を覚えていなかった。
悔しいが普通は死ぬ時に全てを忘れしまうらしい。
再会したロティは当時、俺が組んでいたパーティメンバーに嫉妬して魔力暴走を起こしまった。
その時に俺は不老不死と言う形で呪いを受けた。
正気に戻った時、呪いをロティは解こうとしたが魔力暴走で魔力を使い果たしてしまっていた。
当時の俺は冒険者の中堅くらいだったから死なない呪いはかえって好都合だった。
呪いは解かなくともいいかもしれないと思った。
だがロティは反対した。
この呪いは思う以上に厄介であると。
魔力が回復するまで待って欲しい、私が近くにいるのが嫌なら離れている。
俺がまだ解術を望まないのなら私が死ぬまでなら待っていると。
俄然ロティに興味が湧いた。
ロティと俺の前世がどんなのか気になった。
魔力が溜まるまでに時間がかかるというのなら、その間に魔女の所に行って戻してもらおうと言ったんだ。
そこから俺とロティは【記憶の魔女】のとこに行って、俺の記憶と引き換えに魔女の生まれ変わりの手伝いをすることになった。
魔女は高齢の女性で新しく体を生まれ変わらせる為には一度、魔女の体を特殊な状態にしないといけないと言われてね。
自分1人その状態にはなることが難しく、やれば魔力暴走を起こしかねないらしい。
だが手伝う側は魔力に制限がかかることを教えてくれた。
もしかしたら来世にも何かしらの形で影響がでるかもしれないとも言っていた。
本来、魔女は1人で生まれ変わりができるのだが私は長く生きすぎた為にその機会が過ぎてしまったと言っていた。
生まれ変わりの手伝いは俺がやると言ったんだが、呪いをかけたのは私だと言ってロティがやることになったんだ。魔女も何故かロティを望んで…。
呪いを解く事と記憶を戻す事どちらを優先したいか、ロティは俺に聞いてきた。
呪いはかかったままで良かったから、記憶を戻してもらいたいと願った。
その時にロティが、私が生まれ変わる来世に呪いを解くからそれまで待っていて欲しいと言われた。
気軽に俺は了承した。記憶も呪いも軽視していたんだ。
不老不死であれば冒険者として地位を築く事ができると思っていた。
ロティの魔力が溜まるまでロティは魔女と暮らし、俺は冒険者として暮らした。それから3年後。
ロティが魔女の生まれ変わりを手伝う前に記憶を与えてもらった。
記憶は戻ってきて本当によかった。
俺はロティを愛していた自分がそれを忘れたのを酷く恨んだよ。
ロティは全ての魔力を使い、ただの普通の人間になった。
だから俺の全てでロティを守ると言った。
その時に組んでいたパーティを脱退して、2人で暮らそうと思った。そしたらあの女が別れ際にロティを刺して殺した…。
俺は回復魔法だけはどうしても使えなくてロティを助けられなかった。
その時に女は捕まえて監獄にやった。死ぬまでそこで管理してもらおうと思って。
ロティを失って悲しかったが、俺はロティを待ちながら2人で暮らせる様準備を整えようと思って魔物の討伐をこなしていった。
大きい依頼の時や、陛下直々の討伐依頼なんかあると褒美もデカくもらえたし、あの女の監獄へ閉じ込めるのに絶対に出られないように警備も常に固くするよう言い付けられた。
今度はロティも探しやすい様、俺の方でも探そうとギルドに何十年も前から情報は与えていた。
転生するのが何年先なのかもわからなかったからな。
傷は付くが死なない体は重宝したよ。
ぐんぐん魔力も強くなるし、気付けば不滅や、最強魔導師とまで言われていた。
勇者パーティに組み込まれ、効率よく王国への貢献も稼ぎも出来た。
だが、古代竜エンシェントドラゴンとの再協定を結ぶのに5年もかかるのは予想外だった。
ロティが冒険者になっているのに情報が止められていた。
古代竜との交渉を、途中で放り投げ出されては困るからと陛下からの命令だったらしいが。
再協定が結び終わって、帰還中に情報を知り転移魔法で急ぎで王都のギルドに行った。
詳しい話はタルソマの町のギルドが知っていると言ったから、タルソマの町のギルドに行ってロティの詳細を聞いて、シュワールの森に行ったんだ。
シュワールの森の上空をウロウロしてたら爆発の様な音が聞こえて。
そこに行ったらロティは倒れてるし、あの子に抱き抱えられてるしで。
前世のロティが嫉妬した気持ちがわかったよ。
魔力暴走は起こさずとも危うくあの子を焼くとこだった。
前世でロティが死んでから100年以上経ったかな…。
今日…再会出来た。凄く会いたかった、ロティ。」
話終わったルークは熱を帯びた綺麗な青い瞳で私を見つめ、少し泣きそうな顔で笑って見せた。
「ど…こ、から。」
「ん?」
途中から口が開いていたのか喉がカラカラだ。
ルークはすかさず紅茶を手渡してくれた。
その紅茶を飲むと喉がじわりと潤う。
「…ふぅ。あの、どこから質問していいやら…。」
「一気に話したからな。何度聞いてもいいし、俺にわかる質問なら答える。」
「んー…わかるかどうかわからないけど…。私の記憶って戻るのかな?」
「夢で前世を見ているって事を考えると徐々に戻るのではないだろうか。なにかしらのきっかけや、また夢で見たり、俺と一緒にいれば思い出したりするのではないだろうか。」
「そうなのかな?そうならまぁ。うん。いいのかな?
あの…ルークと私ってどこまでいってるの?」
ルークがぴたっと停止した。
予想外の質問だったのだろうか、表情が少し焦っているような感じもするし、頬が少し赤くなっている。
私から目線をずらしてぼそりとルークは言う。
「……それは、思い出して。」
言いにくいのか、言いたくないのかわからないが、この明確な答えは自力でしか出ないようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます