16
雨粒が、屋根で転がる音がする。
海辺の方から漂う潮風と、五月雨で濡れた紫陽花の緑の香りが混ざって、私の心を揺さぶっている。
額紫陽花のような、青い線香花火の熱の向こうから、君の笑い声が、聴こえてくる。
「何か、私達が、初めて出会った時の事、思い出すね」
「そうだね」
そんな彼女に私は、気のない返事をした。
ーああ。君は、今日も、そうやって、平気な顔で、僕に笑いかけるんだね。
「二年ぶり、かな。こうやって、此処で、あなたと線香花火、するの」
「そうだね」
君と、初めて出会ったあの日から、四年。
その間、一度も、君は、あの日と同じ涙を、僕の為には、流してくれなかった。
「…ねえ、此処には、私以外の誰かと、来た事、あるの?」
「そうだね」
どうしたら、君は、僕の為に、泣いてくれるのだろう。
だって、ほら
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