12
「もう、終わりにしよう」
「…今、何て言ったの?」
あの日、線香花火の青い光で照らされた、君の涙に気付いた時、不謹慎にも、綺麗だと思ってしまった。
雨で滲んでしまう紅紫陽花より、
艶やかに濡れる、青紫陽花に魅力を感じる様に、
哀しみの中に、君の美しさを見出してしまった。
それは、五月雨のせいだと思いたかった。
あの緑緑しい香りと、海の香りが混ざって、私の心が馬鹿になったせいに違いないと、
そう、信じたかった。
だって、可笑しいだろう?
隣で、君が笑う度に、心の奥が痛くなって、
記憶の中の、雨と涙で濡れた、青い君の姿が鮮明になっていく、なんて事。
あの日、泣いていた事を、君は話さなかったし、私も触れなかった。
それで良かったはずなのに、心の中では、名前も知らない誰かの為に流した、君の涙を、羨ましいと思っていた。
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