第17話



「いい。順番に話そう」


向かい側のソファに腰かけながらロベルナは口を開く。


「まずお前の疑問点だが、その通りだ。俺の停止魔法を使った。遠くまで吹き飛ばしてやっても良かったが、それだと目立つからな。卒業間近に無駄なリスクを負いたくなかった」

「どっちにしても魔法使ってるじゃん……。さっきも服直してくれたし、大丈夫なの?」

「珍しいな、俺の心配か」

「別に心配なわけじゃない。ただ、私のせいであんたが卒業できなかったらちょっと気にするっていうか」

「ほんと素直じゃねぇな。まぁいいけどよ。どうせばれなければ問題ねぇし、お前がうじうじ気にする必要はねぇ」

「ならいいけど」

「……ま、俺も悪かったよ」

「え、なにが」

「こうなる危険があるってわかってたのに、お前を一人にさせちまった」

「はあ、なにそれ。私のこと舐めてる?」

「事実、危ない目に遭っただろ」

「そ、それは油断してただけで……」

「その辺に落ちてたもんを一度拾ったんなら最後まで責任もって世話しろって、学園長に怒られた」

「ひろっ……せわ!? 私は犬猫じゃないんだけど! ……いや、この世界に犬猫が落ちてるかどうかは知らないけど」

「ホシオト、危ない目に遭わせてしまって悪かった。怖かったろ。もう街中に放り投げたりしないから、許してほしい」

「わっ、え、ちょ、やめてよ。別にあんたのせいだなんて思ってないし、ていうか危ないところをルール破って魔法使ってまで助けてくれたのはあんたなわけだし……お、お礼言わなきゃいけないのはこっちだし……」


あのロベルナに、真剣な表情でホシオトの目を見てそんなことを言われるなんて思ってもいなかった。

ホシオトは顔を真っ赤にしてごにょごにょと早口でまくし立てる。

最後の方は小声で尻すぼみになってしまった。


「その、助けてくれて……あ、あ……ありがと」

「……素直なお前は、それはそれでしおらしくて気持ち悪いな」

「!! もう、なんなの人がせっかく感謝してるって言ってるのに! ばか!」

「はは、そうそう。そうやって元気な方が俺も安心する」

「なにそれ、さっきの真面目~に『許してほしい』とか言ってたひとどこ行ったの? 二重人格なの!?」

「うるせぇ。切り替えの早いタイプなんだよ俺は」

「信じられないんだけど。あっわかった、照れくさいんだー!」

「その生意気な口縫い付けてやろうか」

「えっ縫い物出来るの……?」

「食いつくとこそこか? もういい。話を戻すぞ」

「はーい」

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