デジタルな愛とアナログな憎 3

「いやぁ、うちのが驚かせてごめんねぇ。」

「い、いえ……」


 あの後、恐慌状態に陥った私を宥めたのは、他でも無い藁人形と写真だった。それぞれから全く同じ顔の若い女性を模した思念体が出ている。しかし写真からは身だしなみを整えた可愛らしい姿が、藁人形からはボサボサの髪に部屋着の姿が飛び出していた。


「あんまりにも怯えていたから出ないでおこうかなって思ったんだけど、1人で百面相していたから写真が驚かせようってさぁ。」

「藁だって乗ったんだからお相子だって!でもごめんね、私達の事を見えてそうな子初めて会うから、つい嬉しくて」

「だ、大丈夫です」


 実際は少しも大丈夫じゃないが、話が進まないので許す事にしよう。次はしないで頂きたいが。

 話を聞いていると、口調も僅かに違うようだ。藁人形は語尾が無気力に間延びしている。家でダラダラしている時の沙智さんの様だ。対して写真は声が少し高く明るく、余所行きといったしっかりした口調をしている。


「あの。貴女方は一体……?普通の人形とは違いますよね?」

「あ、藁人形初めて?丑の刻参りとか知らない感じ?」

「丑の刻参り?」


「簡単に言うと、呪いの儀式の一種だよぉ。丑の刻っていうのは昔干支に例えて使われていた時間で、今でいう夜中の2時から前後2時間くらいを指すんだぁ」

「その時間に神社に行って、御神木に恨んでいる相手に見立てた藁人形を打ち込むと、1週間くらい後に相手が死ぬと言われているんだよぉ」

「人に見られると何らかの形で自分に跳ね返るらしいけどぉ。」


「で、私はより明確に相手を思い浮かべるのに貼り付けられた写真ちゃんって訳。」


 やはり危ない物だったらしい。あの時感じた恐怖は間違えていなかった。


「でもそれが今此処にあるという事は……」

「そう、未遂で終わったみたい。ねえねえ猫ちゃん、折角だから朝までの暇潰しに聞いてくれる?私達のお話」


  

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