デジタルな愛とアナログな憎 2
漸く小屋に辿り着くと、いつもの静寂が私を歓迎してくれた。扉を開けて中に入り、これまたいつもの様に暗闇を作る。
ふぅやれやれと床に腰を下ろし、何気なく隣にあった半透明な袋に目をやると、
「ひっ」
明らかにいつもと違うものが入っていた。
五体を投げ出したような姿形。
プリントアウト後、針金で固定されたであろう紙。
写真の付いた藁人形が、こちらを見ていた。
思わず降ろしたばかりの腰を跳ね上げ、じりじりと反対側の壁まで交代する。そのまま袋に背を向けて、詰まった息を吐き出しにかかった。
あれは一体何なのだろう。少なくとも、今迄生きてきた中で知る機会は無かった筈だ。しかし何故か恐怖を感じる。だって、だって。唯でさえ不気味な人形に、何故か男の人の顔写真がくっつけられているんだもの。
いや落ち着こう。要は見なければ、考えなければ良いのだ。私はこの場所に何をしに来た?寝に来たのだ。そりゃあ、此処にまた心を持った物が居るかも知れないとは考えた。もし悩んでいる様なら寄り添う位は出来るだろうかとも。でも今日は駄目だ。私はただ、本来の目的を果たせば良いのだ。
一度そう思ってしまえば途端に安堵から溜息が出る。そうと決まれば善は急げと、私は横たわり目を瞑る。
物というのは、時として魂を得る事がある。例えば、長い間使われていた時や、強い情念が籠もった時。100年以上在り続ければ付喪神となり、現世に影響を及ぼせると聞くが、お目にかかった事は一度も無い。この小屋に集まるのは、基本的に心を持たぬ消耗品か、或いは心を得たが私達の様なあらゆる感覚が鋭敏な動物にしか認識されない物が集まる。
見たところあの人形はそこまでの年季を感じない。人形という事はきっと飾る用なのだろうけど、思いの外不気味だったから入手後すぐに捨てたというところか。ならば思い入れだって大したものじゃない筈だ。
何だ、全然怖くないじゃないか。見慣れないから焦っただけだ。人形じゃなくて変わった写真立てかもしれない。うん、そうだそうだ。
1人で納得し、もう一度人形入りの袋に目を向ける。ほら、大丈――――
「見たなぁ?」
「ぎにゃぁぁぁぁあぁああぁぁあぁぁあん!!!」
夜10時、何とも間抜けな叫び声が響いた。
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