第一章 動乱前夜
第一服 三午生休(壱)
さかひこゑ ちぬなぎぬれる 馬の子は
千世のむつきを かさねうるかな
雲一つない晴れた日であった。
鳥が小さく実のなった梅の枝に留まって啼いている。障子に映し出された影が、少し揺れた。シュンシュンと、
風炉は火鉢に風通しの窓を空けて炭の火が消えぬよう工夫した道具である。この風炉はその左右に鬼の顔をした耳があり、丸い金属の
釜は流行りの
男は茶の湯に興じている割に、落ち着きがない。何処か心此処に在らず、といった雰囲気だ。男の名は
「落ち着つかんとな……」
堺は元々
納屋というのは貸倉庫のことで、堺には納屋を各種の問屋や座に貸し付けることで財をなした町衆が多い。納屋を
堺の会合衆は十人衆を筆頭に、年々その数を増やし、現在三十六名を数えるが、大半が湯川一族か、その
町衆はそれぞれの生業の座のようなものである。能楽師から、刀剣や鎧などを扱う武器商まで堺にはない座がない。その座の中で生き馬の目を抜くような駆け引きが、表向き和やかに繰り広げられていた。堺は商人の街ではあるが、盛衰の激しい街でもあり、
当年二十五歳の
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