第15話 エックスの正体?

 翌日から、放課後は合同演習に向けて、ハヤトとナナとタケルと一緒に闘技場で訓練をすることにした。オレ達が闘技場に行くと、他のチームの連中も同じことを考えているようで、何組もいた。



「ミライ君。すごい数がいるね。」


「そうだね。でも、オレは剣の訓練だけだから問題ないけど。」


「なら、ミライ君! 私達にも剣を教えてよ!」


「そうだぜ! 恥ずかしいが、ミライは男爵家の俺より剣が強いからな。」


 

 オレは、ハヤトとナナとタケルに剣を教えていた。すると、そこにザイルのチームがやってきた。



「あれ! タケルは男爵家じゃなかったのか? なぜ、下民に剣を習っているんだ?」


「タケルはムッとした表情をしたが、オレは無視して教え続けていた。」



 すると、取り巻きの連中が俺に怒鳴ってきた。



「おい! 貴様! 少しばかり剣が強いからっていい気になるなよ! 下民のくせに!」



 そこでザイルがさらに皮肉を込めて言った。



「やめておけ! 王族の真似をしても、魔法すら使えない小物に用はないさ。それより、俺達も訓練を始めるぞ!」



 闘技場内には大勢の生徒がいる。とても魔法の練習などできる状態ではない。にもかかわらず、ザイルがオレに向かって火魔法を放ってきた。



「ファイアーボール」

 


 さすがに威力は抑えているようだが、十分危険な魔法だ。直撃すれば火傷は逃れない。オレは、咄嗟にザイルの方に向き直って、飛んでくる火球を剣で切った。


 その様子を見ていたハヤトもナナもタケルも、そしてその場にいたザイルの仲間達も驚きの声をあげた。



「魔法を剣で切った~!!」


「ありえない!!」



 オレはザイルを睨んで一言言った。



「今度同じことをしたら、お前の片腕を切り落とすからそのつもりでいろ!」



 オレの迫力にザイルは顔を真っ青にして取り巻きを連れて、逃げるようにその場を後にした。



「ミライ君って本当にすごいね! 僕、尊敬するよ。」


「俺も貴族だが、ミライ、お前は絶対騎士になれ! 最強の騎士になれるぞ!」


「そうなったら、私、ミライ君のお嫁さんにもらってもらおうかな。」



 そんな話をしていると、人影からアリスがチームメンバーと一緒にやってきた。



「ナナ。聞こえたわよ。ミライのお嫁さんになりたいんだって~! やめといたほうがいいわよ! ミライって優柔不断だし、女の気持ちなんてわからないんだから!」


「ミライ。あなたの剣、すごいわね。あなた、学園を卒業したら騎士になった方がよくてよ。私がお父様に推薦しましょうか?」



 キャサリンがオレに言ってきた。その言葉を聞いて、隣にいる従者達がオレを睨んだ。



「彼らを紹介しますね。私達のチームメートのタクトとアカネですわ。それぞれ子爵家よ。先祖代々、王家の近衛騎士の家柄よ。」



 オレ達はそれぞれ自己紹介して、握手をした。何故か、2人ともオレと握手をするときだけは力一杯だった。手が痛い。



「そうそう。ここ最近、王都で活躍している冒険者がいるの知ってる?」



 キャサリンがオレ達に聞いてきた。すると、ナナがいち早く反応する。



「この前、休みの日に実家に帰ったら、家の人達も噂してたよ。確か、エックスとかいう冒険者でしょ?」



 オレは目が泳いで挙動不審になる。誰も気づかないが、アリスだけは何か感づいたようだ。

 

 アリスが深く話を聞いている。



「そのエックスっていう人は男なの? 女なの?」


「男性みたいよ。」


「年齢は何歳ぐらい?」


「20歳は超えてそうだって言ってたわ。」



 アリスがオレを見ながらキャサリンに聞いた。



「まさか、銀髪じゃないわよね?」


「茶髪みたいよ。それにしても、何をムキになっているの? アリス!」



 アリスがオレを睨んでいる。



「アリスは、もしかしてオレのことを疑ってるのか? オレのはずないだろう。年齢も髪の色も身長も違うんだよ。それに、学園から抜け出ることなんか、休日以外にできないじゃないか?」


「アリス。いくらミライが強くてもありえないわよ。だって、エックスは光魔法の『ヒール』を使ったんだって。ミライは魔法を使えないからね。」



 小さいころからオレと一緒にいるアリスはオレが魔法を使えないことはよく知っている。この言葉が決め手となって、オレを疑うのをやめたようだ。



「それもそうね。ミライがそんな有名人になるわけないもんね。」

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