第14話 オーク討伐
オレは掲示板に張られていたオークの討伐を選んだ。それは、学園の東側の森の依頼だったからだ。オレは学園の東側の森を自分なりに『学園の森』と呼んでいる。一気に森まで転移した。
「ハク。オークって豚の魔物だよな?」
「ああ、そうだ。オークはゴブリンと違って単体でも強いが、オークジェネラルやオークキングのレベルになると、学園の生徒が束になっても危険だろうな。」
「なら、絶対にオークを討伐するしかなさそうだな。」
「わしは構わんぞ。オークもオークジェネラルもオークキングも旨いからな。」
「でも、巨体の魔物をどうやって運ぶんだ~?」
「空間収納を使えばいいさ。」
「学園から貸し出される鞄のようなものだろ?」
「それは魔法を付与したものだ。それほど量は入らん!」
「違うのか?」
「騙されたと思ってオレの言う通りやってみろ!」
オレはハクの指示通り、現在自分のいる空間とは別の空間をイメージした。最初はよくわからなかったが、別次元の穴をイメージすると目の前に黒い渦のような空間が出た。
「できたじゃないか!」
「ありがとう。ハク。これで、オークを持ち帰れるな。」
「だがな、恐らく人間で空間魔法を使えるものなどごくわずかだ。できれば鞄のようなものから出すようにカモフラージュした方がいいと思うぞ。」
「わかった。」
オレは森の中を魔力感知で探した。すると、学園の森のかなり南側にオークの魔力を感じた。学園の近くではないが比較的大きな街道のある方向だ。
オレはオークの魔力が感じられた場所まで転移した。すると、突然現れたオレにオークは一瞬怯んだがすぐに大声をあげた。
「ブヒ——! ブヒブヒ!」
すると、森の奥の方から数体のオークが現れた。どこで手に入れたのかわからないが、すべてのオークが剣を持っている。オレに向かって剣を振り下ろしてきた。オレは瞬時に魔眼を使って、オークの動きを見た。オークの動きが止まって見える。オレは剣を抜いて目の前のオークを切り捨てた。すると、オークが森の中に逃げて行った。
「ミライ。もしかすると、この森の奥にオークの住処があるかもしれんぞ。」
「それって危険なのか?」
「そうだな。オークは人を襲って食べるからな。それに、女性は苗床にされることもあるぞ。」
「なら、住処を見つけて全滅させた方が言いてことだな。」
「その方が安全だろうな。」
オレは逃げたオークを追いかけた。30分ほど森の奥に入ったところで、岩山が見えてきた。近くにオークの気配が多数感じられた。
「ミライ。住処は近いぞ!」
「ああ、わかってる。」
森の木の陰から見ると、20頭ほどのオークがいた。やはり、岩山に住処があるようだ。
「どうしよう。思ったより数が多いよ。」
「そうだな。見たところあそこにいるのは普通のオークだが、今のお前では一人で剣で戦うのは無理だな。」
「一旦帰ってギルドに知らせようか?」
「まあ、待て! せっかくの機会だ。魔法の練習でもしてみるか。」
「どんな魔法なんだ? ここは森の中だから、火魔法はダメだと思うよ。」
「逆だ! 水魔法だな。オークの顔も周りに水の玉を出してみろ!」
オレはハクに言われた通り、オークの顔が浸るように水の玉を出した。すると、オーク達は息が出来ずに次々に窒息していった。
「ありがとう。ハク。これなら数が多くても勝てそうだ。」
オレが残りのオークにも同じように魔法を発動すると、騒ぎを聞きつけたのか中から一回り大きなオークが2体と、さらにそれよりも大きなオークが1体出てきた。そして、森の中に向けて出鱈目に風魔法を打ち込んできた。
「ミライ。オークジェネラルとオークキングだ。あいつらには同じ魔法は通用しないぞ。」
それでもと思い、同じ魔法を発動したが、顔の周りにできた水の玉が散り散りに吹き飛んだ。
「やっぱりダメか~。」
「だから言っただろう。」
「ならば剣で倒すだけさ。」
オレは剣を抜いて一気にオークジェネラルに近づき、切りかかった。だが、オークジェネラルは他のオークと違って力も強いが、何よりも速かった。オレの剣は軽くいなされて、逆に剣が飛んでくる。
「ミライ。魔眼を使って、動きを見極めろ。剣には風でなく炎を纏わせろ!」
「なんで炎なんだ?」
「あいつらの身体は油がたっぷりだ。炎を纏わせた剣でなければ、剣が抜けなくなるぞ!」
「そういうことか。わかったよ。」
オレは剣に炎を付与し、魔眼でオークの動きを見極めながらオークジェネラルに切りつけた。今度はしっかりとオークジェネラルを切り倒すことができた。2体いたオークジェネラルが倒されるのを見て、オークキングの表情は怒りですごいことになっている。オークキングの身体から赤い炎のような影があらわれた。
「ハク。あれはなんだ?」
「あれは奴の闘気だ。あの中に入るとやられるぞ!」
「なら、どうしたらいいんだ?」
「お前も同じように闘気を纏うしかあるまい。」
自分では意識したことがないが、オレは小さいころから剣の修行をし、殺気を抑えることを学んできた。だが、今回は逆だ。体の中から湧き上がる感情をすべて外に吐き出した。すると、オレの身体から金色の光が溢れだした。
「ミライ。できたじゃないか。さすが・・・・」
オレは一気にオークキングに近づき、剣を振った。オークキングも中々に強い。魔眼を使ったオレの動きをしっかり受け止めている。もしかしたら、あのオークキングにも魔眼があるのかもしれない。そう思いながらも、オレは何度も何度もオークキングに切りかかった。オークキングの身体のところどころから血が流れている。
すると、岩穴の方から物音が聞こえた。オレは一瞬それに気を取られた。次の瞬間、オークキングがオレに剣を振ってきた。タイミングが少し遅れただけだが、オレは地面に叩きつけられた。そして、オークキングがオレに覆いかぶさるように剣をついてきた。
「まだ死にたくない。まだ死ねない。まだだ!」
時間は一瞬だが、その一瞬の時間がオレにはとても長く感じた。オレの右手に巨大な光の玉が現れ、オレはそれをオークキングの腹に打ち込んだ。すると、オークキングの腹には大きな穴が開き、その場に倒れて絶命した。
「見事だ! ミライ。お前、いつからその力を使えるようになったんだ?」
「その力って?」
「最後の魔法だよ。あれは普通の魔法ではない。あれは神に許されたものだけが使える魔法さ。」
「そうなの? でも、普通の光魔法だよね。」
「普通の光魔法では、相手によっては通用しないこともある。だが、今のお前の魔法はいかなる相手であっても、いかなる物体であっても今のように穴が開くのさ。」
「子どもの頃同じようなことがあって、魔力のないくせに一度だけ炎を出したことがあったよ。」
「恐らく、それも今と同じだったんだろうな。」
オレはオークやオークジェネラル、オークキングの死体を空間収納に仕舞って、音のした岩穴の方に向かった。岩穴の中は、ひどい臭いだ。それに、骨がごろごろと散らかっていた。人の骨のようなものまであった。最奥までくると、そこには人から奪ったと思われる物と小さな鼠のような生き物がいた。どうやら、オークキング達がいなくなったことで、食べ物をあさっていたようだ。オレは、人のものと思われるものも空間収納に仕舞った。
「ハク。良かったよ。苗床にされてる人がいなくて。」
「そうだな。それに、お前の訓練にもなったしな。」
オレとハクはその場から学園寮に転移して帰った。
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