第11話 初めての冒険者ギルド
転移の練習を始めて1か月近く経った。何とか転移の魔法も使えるようになり、オレは姿を変えて街まで転移した。なんかワクワクする。念のために、雑貨屋によって仮面とフード付きの黒いローブを購入した。本来オレの身長は155cmだが、今は180cmある。髪の色も銀髪でなく、目立たないように一般的な茶色にした。これで完璧だ。
オレはすぐに冒険者ギルドに向かった。ギルドに入ると異様な雰囲気だった。夜ということもあって、冒険者達が併設されている酒場で酔っぱらっている。オレは受付まで急いだ。すると、受付には美人な女性がいた。
「ギルドに何か御用ですか?」
オレはなるべくしゃべらないように言葉少なく答える。
「登録しに来た。」
「ならこちらに記載をお願いします。」
正直困った。名前とか何も考えていなかった。そこで、咄嗟に思い浮かんだ名前を記入した。名前は “エックス“ 。得意なのは剣と魔法。出身は王都。
「これでいいか?」
「はい。次は魔力測定です。この水晶に手をかざして魔力を流してください。」
オレは言われるままに、水晶に手をかざして魔力を流した。すべて無意識の作業だ。すると、水晶の玉が眩しい光を放ったと思った瞬間、“パリン” という音を立てながら砕け散った。
「えっ、え————!!」
受付のお姉さんの声で全員がこっちに注目している。すると、オレの横で犬の姿をしているハクから念話が来た。
“ミライ! お前は馬鹿か? お前の魔力量は規格外だといっただろう! もっと慎重に行動しろ!”
“ごめん。何も考えてなかった。”
「この水晶、壊れてたんですね。ごめんなさいね。水晶が壊れてしまったので属性とかわからないわ。教えてもらっていいですか?」
「火だ。」
「火ですね。私、リアっていいます。ところで、エックスさんは何故仮面をかぶってるんですか?」
「あまり、目立ちたくないからな。」
「仮面をしていないと目立つんですか?」
「まあな。登録はもういいのか?」
「は、はい。これで登録は終了です。」
オレは生まれて初めての冒険者カードをもらって、高鳴る胸のときめきを抑えながら、その日は寮に帰ってゆっくりと寝た。
翌日は、午前中に地理と歴史の授業を受けた後、いつものように食堂でご飯を食べていた。
「ミライ。今日の午後の授業は魔法だよ。あんたいつもどうしてるの?」
アリスが心配して聞いてきた。他のメンバーも気になるようだ。
「ああ。魔法担当のマジク先生から、オレは参加しなくていいって言われてるから、寮に帰って剣の練習をしているよ。」
「なんかずるい気がするけど、魔力がないのに参加してもしょうがないもんね。」
アリスは一緒に居られないことで寂しそうだ。そんな様子を同性のナナとキャサリンはしっかり見ている。オレが寮に向かって帰った後、単刀直入にナナが聞いた。
「アリスちゃんはミライ君のことどう思っているの?」
「あいつとは幼馴染なだけよ。ただ、それだけ!」
「なら、私がミライ君に告白してもいいよね?」
「ちょ、ちょっと待って! あいつはマザコンだから多分無理よ!」
すると、キャサリンが反応する。
「へ~! そうなんだ! ミライ君のお母様ってそんなに素敵な方なの?」
「そうね! 一言で言うと、気品のある美人さんかな。」
「でも、貴族じゃないんでしょ?」
「違うと思うけど、よく知らない!」
ここで、キャサリンが何か考え込んでいた。
「以前聞いたことがあるんだけど、2大公爵家の一つ、ベルナルド公爵の先代の娘が冒険者と駆け落ちしたって聞いたことがあるけど、まさか違うよね?」
「違うんじゃない? だって、ダンテおじさんってそんなにいい男じゃないもん。」
「ダンテおじさんて?」
「ミライのお父さんよ。」
「そうなんだ~! ミライ君ってすごい美男子だから、きっとお父様も色男だと思ってたんだけど。」
「髭もじゃの筋肉マッチョよ。全然違うから!」
3人はそんな話をしながら魔法の授業に向かった。今までは魔力操作が中心だったが、今日からは魔法の実践の授業だ。
「さて、みなさん。魔法を使う時はしっかりと杖に魔力を高めて放つのよ。手本を見せるから見ていてね。」
マジク先生が水魔法の手本を見せた。マジク先生が杖を前に出すと、杖から大量の水が渦を巻きながら発射された。その威力に生徒全員が目を丸くして驚いている。
アリスは光魔法、キャサリンは水魔法、ナナは風魔法だ。一方男性は、ハヤトが土魔法でタケルは火魔法の属性がある。それぞれが、マジク先生の指示に従って魔法を放つ。慣れているのか、アリスの光魔法とキャサリンの水魔法の威力は他の生徒と段違いだ。
みんなが魔法の授業を受けているにもかかわらず、オレは一旦寮に帰ってからすぐさま変装して、ハクとともに街に転移した。
「昨日登録したんだが、どうやって仕事を見つければいい?」
「ああ、あなたは昨日の。あそこにある依頼掲示板から、受けたいものを剥がしてここに持ってきてください。ただ、自分のランクの前後までですからね。」
「なら俺はFランクだから、EかFしか受けられないってことか?」
「そうですよ。」
「わかった。」
掲示板に行くと、EとFにはろくな仕事がない。清掃やら引越しやらペット探しのようなものしかない。討伐系はゴブリンとホーンラビットぐらいだ。ホーンラビットの討伐を剥がして受付に持って行った。
「ごめんなさい。ゴブリンやホーンラビットの討伐はランクに関係なく、誰でも受けられるの。言うのを忘れてましたね。」
「別に構わない。」
オレは学園の東側にある森まで急いだ。さすがに森の浅いところにはたくさんの冒険者がいて、ほとんど獲物はいなかった。そこで、魔力感知を使って人気のない場所まで急いだ。結構森の奥まで来たと思う。
「ハク~! せっかくここまで来たのに獲物いないな~?」
「いいことじゃないか。街が平和ってことだろう?」
「そうだけど。このままだとステーキ御馳走できないぞ!」
「それは困る! なら、上空から魔力感知を使ってみろ!」
「上空からって、できるわけないじゃないか?」
「重力魔法と風魔法を組み合わせれば空も飛べるぞ!」
「いきなりできるわけないだろう!」
オレはハクの指導の下、飛翔を練習した。最初はうんともすんとも言わない状態だったが、何とか上空に舞い上がることまではできるようになった。そこで、上空から魔力感知を発動する。地上で使う時よりもかなり広範囲まで感知することができた。
「ハク。かなり離れてるけど、大きな魔力の反応があったよ。行ってみようか。」
「ああ、なら身体強化の魔法を使って走れ! その方が早い!」
「わかった。」
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