第一章①
「で、まずは主人公の
と、アディが小さく声をかければ、彼の下に構えていたメアリが
場所は
今日の学園行事は始業式のみで、ほぼ
今からここを通るであろう、主人公を除いて。
……あと、曲がり角で陣取る
「確か、主人公はオープニングのアニメでここを通っていたはず。毎回スキップしてたから覚えてないけど」
「ちゃんと見ましょうよ。製作者が泣きますよ」
「だって毎回同じなんだもの。ってそうじゃなくて、ほら来たわよ!」
見つからないよう
見ればカレリア学園の制服に身を包んだ一人の少女が、茶色いトランクケースを引っ張りながらゆっくりと歩いてきた。地図を片手にキョロキョロと周囲を窺う様は、まさに右も左も分からない転校生。貴族の通うこの学園の全てが
「あれがそうですか」
「そうよ。彼女が主人公のアリシア」
「そうですか、あの子が……いやなんというか……」
アディが
それを聞きながら、メアリは言わんとしていることは分かると頷いて返した。
流石は主人公と言えるほど、とにかくアリシアは可愛い。
いわゆる美少女というやつだ。もっとも、ゲーム上では『
とにかくアリシアは可愛らしく、なるほどこれは確かに学園の男子生徒達が
「えらく可愛い子ですね。おまけに金髪に
「やだ、あんたラストで明かされる事実をオープニングアニメでぶちまけるんじゃないわよ」
「
「そんなこと私に言わないで。あ、こっちに来るわ。よし、いっちょ
悪役のお出ましよ! と意気込んでメアリが曲がり角から
その可愛らしく女の子らしい
ここでビシッと決めてやるのだ。これから
「あの、あなたは……この学校の生徒さんですよね?」
「私? 私はメアリ、アルバート家のメアリよ」
「アルバート家の……やだ、私ったら
「まぁ
「あ、すみません! 私アリシアです。今日からカレリア学園に通うことになりました、よろしくお願いします!」
「あら、この私が
「そ、そうですよね。すみません、私なんかが気安く声をかけてしまって……あの、せめて教えてほしいんですが……」
「あら、なにかしら?」
「はい、その……学生寮の受け付けが分からなくて……」
どこに行けば
「学生寮の受け付けっていうと……アリシアちゃん、こっちとは真逆だよ」
「え!? そうなんですか?」
「まさかあなた方向
「そんな、知らなかった……建物がいっぱいあってどこに行けば良いのか分からなくて……」
「学生寮関係なら第二校舎だったはずだけど。お
「目の前にある建物を
「わ、分かりました、急ぎます! ありがとうございました!」
彼女が走るたびに金糸の髪がなびき、ガチャガチャとトランクケースが鳴る。その姿はまさに『ドジな美少女』ではないか。
確かに
そんなアリシアが去って行った先を
「……私、悪役っぽかったかしら」
と。だがそれに対して返ってきたのは、
「いや、単なる親切な人ですね」
という無情なものだった。
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